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おにぎり第3世代が始まった。「ワンハンド天丼」ロイヤルおにどんが示す次の外食市場

  • 執筆者の写真: 三輪大輔
    三輪大輔
  • 7 日前
  • 読了時間: 8分

更新日:6 日前

                         三輪大輔|外食ビジネスアナリスト


おにぎり市場が次の段階に入った

おにぎり市場が、次の段階に入りつつある。これまでおにぎりは、コンビニや駅ナカで手軽に買える日常食として広がってきた。忙しい朝、移動中の昼食、小腹を満たす間食。日本人にとって、おにぎりはあまりにも身近な存在である。


しかし近年、そのおにぎりに新しい価値が加わってきた。専門店の増加である。東京・大塚の人気店「ぼんご」に代表されるように、注文を受けてから目の前で握り、具材をたっぷり詰め込むスタイルが注目を集めた。コロナ禍以降、同店を思わせるおにぎり専門店も増え、おにぎりは「安くて手軽な食べ物」から、「わざわざ食べに行く食事」へと価値を高めてきた。この流れを整理すると、おにぎりの進化は大きく3つの世代に分けて考えることができる。


第1世代は、コンビニ・駅ナカのおにぎり

第1世代は、コンビニや駅ナカを中心とした手軽なおにぎりである。誰でも、どこでも、短時間で買える。日常の食事にも、移動中の軽食にもなる。価格も手頃で、商品数も多い。おにぎりを日常食として広く定着させたのが、この第1世代だ。


ここでのおにぎりの価値は、利便性にある。早く買える。すぐ食べられる。保存性もあり、持ち運びもしやすい。おにぎりは、日本人の日常に深く入り込む商品となった。


第2世代は、専門店型のおにぎり

第2世代は、専門店型のおにぎりである。注文を受けてから目の前で握る。ふんわりとした米、たっぷりの具材、できたての温度感。東京・大塚の人気店「ぼんご」に代表されるように、おにぎりを単なる携帯食ではなく、職人性やライブ感を伴う商品へと引き上げた。


コロナ禍以降、同店を思わせるおにぎり専門店も増えた。具材の豊富さ、握る技術、店頭での臨場感によって、おにぎりは「わざわざ買いに行く」商品になった。第2世代が生み出したのは、「握るライブ感」である。


第3世代は、焼く・揚げるまで含めたライブ感

そして今、登場しつつあるのが第3世代である。第3世代の特徴は、「握る」だけでは終わらないことだ。焼く、揚げる、仕上げる。その工程まで含めて見せることで、おにぎりにさらに強い体験価値を加えている。その象徴的な存在が、マリノの「ごちそう焼むすび おにまる」と、ロイヤルホールディングスが展開する「おにどん」である。


「ごちそう焼むすび おにまる」は、イタリアンレストランやフードコート業態を展開してきたマリノが手がけるおにぎり専門店だ。特徴は、単に握るのではなく、焼き上げる工程を前面に出している点にある。香ばしさ、温度感、調理の音や香りが加わることで、おにぎりはより外食的な商品になる。


おにぎり第3世代
マリノが展開する「ごちそう焼むすび おにまる」。焼く工程を加えることで、おにぎりに外食らしい体験価値を生み出している

一方、ロイヤルホールディングスの「おにどん」は、天ぷらを揚げてから天むすとして提供する業態である。こちらもまた、単なるおにぎり専門店ではない。揚げたての天ぷらを使うことで、できたて感と満足感を高めている。


おにぎり第3世代
「おにどん」は、天丼の満足感を片手で食べられる形に再構築した“ワンハンド天丼”ともいえる商品だ

この2つの業態に共通しているのは、おにぎりを「具材の競争」だけで終わらせていないことだ。


米価格高騰で問われる、専門店の付加価値

第2世代のおにぎり専門店は、具材の豊富さや握るライブ感によって支持を集めた。しかし、米価格の高騰もあり、専門店にはさらなる付加価値が求められている。単に具材を増やすだけでは、価格に見合う価値を伝えにくくなっている。


そこで重要になるのが、調理工程そのものの価値化である。第2世代が「握るライブ感」だとすれば、第3世代は「焼く、揚げるまで含めたライブ感」である。効率だけを考えれば、手間は増える。オペレーションも複雑になる。だが、その手間こそが、できたて感や特別感となり、来店理由を生み出している。おにぎり市場は今、具材の競争から、体験価値の競争へと移り始めている。


「おにどん」はワンハンド天丼である

特にロイヤルホールディングスの「おにどん」は、なぜロイヤルがこの業態を手がけるのかという点でも興味深い。


「おにどん」を一言で表すなら、ワンハンド天丼である。プロデュースを手がけたのは、株式会社ブルース&ブラザーズの代表であるブルース佐藤氏だ。佐藤氏も話していた通り、口にほおばったとき、天かす、タレ、いんげん、海苔、米、そして揚げたての天ぷらの香りが、口の中に一気に広がる。単に天ぷらをのせたおにぎりではない。天丼を構成する要素を、片手で食べられる形に再構築した商品といえる。


おにぎり第3世代
「おにどん」の開発背景を語るブルース佐藤氏。ロイヤルホールディングスから与えられたお題は「世界で戦える日本発のファストフード」だった

天丼は本来、丼と箸が必要な食事である。だが、「おにどん」はその満足感を、ワンハンドで食べられる形に変えている。ここに、この業態の面白さがある。おにぎりの手軽さと、天丼の満足感。その両方を兼ね備えた商品として見ると、「おにどん」の位置づけは非常に分かりやすい。


まかないから生まれた、ロイヤルらしいストーリー

オープンに先立つ7月6日、報道関係者向けの発表・試食会が開かれ、開発の背景やメニューが披露された。


その中で印象的だったのは、「おにどん」が単なる新規業態ではなく、ロイヤルらしいストーリーを持っている点である。もともとは、まかないの中から生まれた発見。それを商品として磨き上げ、新たな業態として形にしていく。そこには、現場を知るプロたちが日々の仕事の中で見つけた価値を、丁寧に商品化していく面白さがある。


ブルース佐藤氏がボードを用いながら「おにどん」の開発経緯を説明する場面も印象的だった。まかないから生まれた発見を、どのように商品として磨き上げ、新業態へと発展させていったのか。その過程が非常に分かりやすく、なぜこの業態に取り組むのかという意義も深く腑に落ちた。


どこか『プロジェクトX』にも通じるような、現場の知恵と挑戦の積み重ねから生まれた物語がある。単に流行しているからおにぎり業態を始めるのではない。ロイヤルがやるからこその必然性がある。


ロイヤルコントラクトサービスが展開する意味

「おにどん」を考える上で重要なのは、ロイヤルコントラクトサービスが展開を担う業態であるという点だ。ロイヤルコントラクトサービスは、空港、高速道路サービスエリア、商業施設など、交通の要所や施設内での外食運営に強みを持つ。つまり「おにどん」は、一般的な路面店の新業態というよりも、人の移動や滞在が発生する場所で展開していく意思を持ったブランドとして見るべきではないか。


この視点で見ると、「おにどん」のワンハンド性はより大きな意味を持つ。空港で出発前に手早く食べる。サービスエリアで車の移動中に食べる。新幹線や飛行機の移動前に購入する。あまり広くない飛行機の座席でも、片手で食べられる天丼であれば、移動中の食事として成立しやすい。単なるおにぎりではなく、天ぷらの満足感を備えたワンハンド天丼であること。その特徴は、ロイヤルコントラクトサービスが得意とする立地と非常に相性が良い。


また、「おにどん」は単品だけで完結する商品ではない。試食会では豚汁も提供されたが、これが非常に相性が良かった。ワンハンドで食べられる天丼としての「おにどん」は、単体では軽食として成立する。一方で、豚汁を組み合わせると、一気に食事としての満足度が高まる。


おにぎり第3世代
豚汁を組み合わせることで、ワンハンドの軽食から満足度の高い食事へと利用シーンが広がる

ここには、客単価を上げる仕組みも見える。おにぎり業態は、どうしても単価が低く見られやすい。だが、天ぷらを加えることで商品単価を上げ、さらに豚汁などの汁物を組み合わせることで、軽食から食事へと利用シーンを広げることができる。空港やサービスエリアのような移動立地では、「短時間で食べたい」需要と「しっかり食べたい」需要の両方がある。その両方に対応できる点は、「おにどん」の強みになる。


お題は「世界で戦える日本発のファストフード」

もう一つ印象的だったのは、「おにどん」の開発テーマである。ロイヤルホールディングスの事業戦略を説明した佐々木専務から、株式会社ブルース&ブラザーズの代表であるブルース佐藤氏に与えられたお題は、「世界で戦える日本発のファストフード」だったという。


この言葉を聞くと、「おにどん」の狙いがより明確になる。おにぎりは、日本の日常食でありながら、海外でも認知が広がりつつある。一方、天ぷらは訪日客にも分かりやすい日本食の代表格である。その2つを組み合わせ、片手で食べられるファストフードとして再構築したのが「おにどん」だ。つまり「おにどん」は、国内のおにぎり専門店ブームに乗っただけの業態ではない。最初から、海外でも通用する日本発のファストフードをつくるという視点から開発された業態である。


だからこそ、空港やサービスエリアとの相性も見えてくる。国内でありながら、空港は訪日客との接点を持つ場所である。サービスエリアも、観光や移動の途中で食の体験が生まれる場所だ。そこで「おにどん」がどのような反応を得るのかは、今後の展開を考える上で重要な試金石になる。


天ぷらを店頭で揚げるライブ感があれば、単なる軽食ではなく、記憶に残る食体験にもなる。訪日客が日本で「おにどん」を体験し、その価値が伝われば、将来的な海外展開にもつながっていく可能性がある。「おにどん」は、おにぎり専門店であると同時に、天丼の再発明であり、日本発ファストフードの実験でもある。


おにぎりは体験価値の競争へ

おにぎり市場は、すでに第1世代の利便性、第2世代の専門店化を経て、次の段階に入っている。これから問われるのは、おにぎりにどのような体験価値を加えられるかである。焼く、揚げる、仕上げる。その工程を含めて商品価値に変えられるか。そこに第3世代のおにぎり市場の面白さがある。


おにぎりは、もう「安くて手軽」だけの商品ではない。日常食でありながら、外食の技術やストーリーを乗せられる商品になっている。ロイヤルの「おにどん」とマリノの「おにまる」は、その変化を象徴する存在といえるだろう。


第1世代が利便性を広げ、第2世代が専門店としての価値を高めたとすれば、第3世代は、外食企業の技術と体験を加える段階である。「握る」から「焼く・揚げる」へ。おにぎり市場は今、具材の競争から、体験価値の競争へと移り始めている。


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