セブンとマックが変えたスムージーの現在地。なぜ“意識高い飲み物”は日常の一杯になったのか
- 三輪大輔

- 7月2日
- 読了時間: 6分
更新日:7月3日
三輪大輔|外食ビジネスアナリスト
見かける機会が増えたスムージー
スムージーを見かける機会が増えた。セブン-イレブンでは、店内の専用マシンで作る「セブンカフェ スムージー」が広がっている。マクドナルドも季節限定商品としてスムージーを展開している。カフェチェーンでも、季節の果物を使ったスムージーは珍しくなくなった。
かつてスムージーといえば、健康や美容に関心の高い人が飲む、いわば“意識高い飲み物”という印象もあった。ところが今は、コンビニで買える。マクドナルドでも買える。カフェでも選べる。いつの間にか、スムージーは日常の一杯になりつつある。日本におけるスムージーの広がりは、大きく三つの段階で見ると分かりやすい。
第1の波:2012年前後のグリーンスムージーブーム
この時期のスムージーは、どちらかといえば「自分で作るもの」だった。野菜や果物を買い、ミキサーにかけ、朝の習慣として飲む。美容やダイエット、デトックスと結びつき、健康感度の高い人が選ぶ飲み物として広がっていった。
2010年代には、アサイーボウルやコールドプレスジュースなど、健康・美容系のドリンクや軽食も相次いで注目された。ただ、その中でもスムージーは日常化しやすかった。アサイーボウルは食べる場所や時間を選び、コールドプレスジュースは価格や製造面で特別感が残る。一方、スムージーは飲み物として持ち歩きやすく、朝食代わりにも軽食にもなる。
ただ、裏を返せば、この段階のスムージーはまだ少し特別な飲み物でもあった。ミキサーを用意し、材料をそろえ、習慣として続ける必要がある。誰もが気軽に買う日常の一杯というより、健康や美容を意識している人が、意識して取り入れる飲み物だった。
第2の波:2015〜2017年の市販化・コンビニ化
この時期ではコンビニや飲料メーカー、カフェチェーンがスムージーを商品化し、「自分で作るもの」から「買って飲むもの」へと変わっていった。ローソンのグリーンスムージーや、カゴメのチルド飲料、カフェチェーンの季節限定商品などによって、スムージーはより身近な健康飲料になった。この変化は大きい。自宅でミキサーを使わなくても、コンビニやスーパーで買える。健康感度の高い人だけでなく、忙しい朝や昼に手軽に飲みたい人にも届きやすくなった。
ただ、この段階ではまだ、健康志向の商品、あるいはカフェの限定ドリンクという印象も残っていた。日常のどこでも買える飲み物というより、「健康を意識して選ぶ一杯」という色合いが強かった。
そして一般化:セブンとマックが変えた現在地
そして現在、スムージーはブームというより、一般化の段階に入っている。その象徴が、セブン-イレブンとマクドナルドである。
セブン-イレブンの「セブンカフェ スムージー」は、冷凍ケースに入った商品を店内の専用マシンにセットし、出来立てのスムージーを楽しめる仕組みだ。かつてスムージーは、果物や野菜を仕込み、ミキサーにかけ、洗浄し、廃棄も管理する必要がある、店側にとって手間のかかる商品だった。
しかし、冷凍素材やピューレ、専用マシンを活用することで、スムージーは多店舗展開に乗せやすい商品へと変わった。健康志向だけではなく、オペレーションに乗ったことが、スムージーの一般化を支えている。
半額キャンペーンに使えるほど根づいたセブンのスムージー
さらに注目したいのが、セブン-イレブンがスムージーを販促の目玉として使っていることだ。6月10日の「スムージーの日」には、セブンカフェ スムージーの半額キャンペーンが行われた。さらに7月11日の「セブン‐イレブンの日」にも、スムージー購入者に半額クーポンを配信するキャンペーンが予定されている。
これは、スムージーが単に店頭に並ぶ商品ではなく、集客やアプリ利用を促す商品として期待されていることを示している。半額にすれば話題になる。クーポンを出せば来店動機になる。そうした販促に使えること自体、スムージーが一定の認知と需要を持つ商品として根づき始めている証拠だろう。
スムージーは、もはや一部の健康感度の高い人だけに向けた商品ではない。コンビニが販促の主役として打ち出せるほど、広い消費者に届く商品になりつつある。
マクドナルドは「健康飲料」ではなく「デザートドリンク」として広げた
マクドナルドの展開も、同じ流れで見ることができる。マクドナルドは、季節限定商品としてスムージーを展開している。ここで面白いのは、スムージーを必ずしも健康飲料として売っているわけではないことだ。むしろ、冷たいデザートドリンク、季節感のあるご褒美ドリンクとして提案している。つまり、スムージーは健康のためだけに飲むものではなくなっている。
かつては、美容やダイエットと結びついていたスムージーが、今ではマクドナルドで季節感のある冷たいドリンクとして販売されている。この変化は大きい。スムージーが健康意識の高い人の飲み物から、幅広い層が気軽に選べるデザートドリンクへと広がっていることを示している。
消費者が求めるのは、手軽さと罪悪感のなさ
消費者にとっての魅力は、手軽さと罪悪感のなさである。甘いものを飲みたい。でも、ジュースやシェイクほど罪悪感は持ちたくない。朝食は抜きたくないが、しっかり食べる時間はない。野菜や果物を摂った気分にもなりたい。こうした気分に、スムージーはよく合っている。
もちろん、商品によっては糖質も高い。果物を多く使えば、必ずしも低カロリーとは限らない。それでも、消費者の受け止めとしては「健康寄りの選択」に見える。ここが強い。スムージーは、健康と嗜好の中間にある。真面目すぎず、甘すぎず、軽すぎず、重すぎない。だからこそ、朝食代わりにも、軽食代わりにも、デザートドリンクとしても成立する。
店側にとっても扱いやすい高付加価値商品
店側にとっても、スムージーは付加価値を作りやすい商品である。生の果物を多く使えば原価や廃棄の負担はあるが、冷凍フルーツや業務用ベースを活用すれば、品質を安定させながらオペレーションを組みやすい。健康的に見える一杯として単価も取りやすく、カフェやコンビニにとっては、非コーヒー需要を取り込むメニューにもなる。
コーヒーを飲みたくない人がいる。甘いドリンクは飲みたいが、フラペチーノほど重くなくていい人もいる。食事ほどではないが、少し満足感がほしい人もいる。スムージーは、その中間に入り込める。これは、店側にとっても大きな意味を持つ。コーヒーだけでは拾えない需要を取り込み、季節感を出しやすく、単価も上げやすい。しかも、機械や冷凍素材を活用すれば、多店舗でも展開しやすい。スムージーは、消費者にとって都合がよく、店側にとっても都合がいい商品になっている。
ブームではなく、普通の飲み物になり始めた
かつてスムージーは、美容や健康に関心の高い人が選ぶ特別な飲み物だった。次に、コンビニやチルド飲料によって「買える健康飲料」になった。そして今、セブン-イレブンの店内マシンやマクドナルドの季節商品によって、日常の生活導線に入り込んでいる。
スムージーは、ブームが再燃しているのではない。ブームを経て、普通の飲み物になり始めているのである。


