【飲食経営者の肖像】エターナルホスピタリティグループ大倉忠司社長
- 三輪大輔

- 2024年12月13日
- 読了時間: 4分
言葉の使われ方は時代とともに変わっていく。「やばい」や「エモい」など、かつてとは異なる意味で使われ、今ではその新しい用法がすっかり定着した言葉も多い。
「人たらし」も、その一つだ。本来は否定的な意味合いを帯びる言葉だったが、今では「周囲から愛され、人を自然と巻き込む力を持つ人」というニュアンスで使われることが増えている。その意味において、月刊飲食店経営 2025年1月号の表紙を飾っていただいた大倉さんは、生粋の「人たらし」だ。

Global YAKITORI Family が示す世界戦略
柔和な表情を浮かべ、どんな質問にも丁寧に答えていく。ホールディングス制となってからも、それぞれの現場を把握しているからこそ、大倉さんの言葉は強い説得力を持つ。そして、その言葉の奥にあるワクワク感に、私自身、非常に心を動かされた。その象徴が「Global YAKITORI Family」というビジョンだ。寿司やラーメンのように、「YAKITORI」を世界共通語にしたい──その強い思いがビジョンには込められている。
同社はこのビジョンの実現に向け、27年7月期に1500店舗の展開を目指し、そのうち約10%を海外店舗が占める計画だ。さらに30年7月期には2000店舗体制とし、その25〜30%を海外展開で構成するという明確な成長ロードマップを描く。
このビジョンに、心が高鳴ったのは私だけではない。外食ビジネスに深く携わる人であればあるほど、このビジョンに胸を掴まれるのではないだろうか。実際、志を共有する仲間が次々と集まってきている。
次々と集結する“焼き鳥アベンジャーズ”
その筆頭が、取締役COOの清宮俊之氏だ。力の源ホールディングスに在籍していた頃からの知り合いであり、当時掲げていた「グローバル・チキン・フードカンパニー」というビジョンに共鳴していた人物である。清宮氏の参画は、世界を見据える外食企業としてのエターナルホスピタリティグループの姿勢をさらに強固にした。
その他にも、福岡市を中心に「焼とりの八兵衛」を展開するhachibei crewの八島且典氏、ミシュラン一つ星を獲得し続ける「焼鳥 市松」を運営する有限会社AOの竹田英人氏など、多彩で実力あるメンバーが続々と大倉さんの下に集う。
ある意味、大倉さんを中心に、業界全体を巻き込みながら「日本発の焼き鳥連合体」が静かに立ち上がりつつある。アベンジャーズのように実力ある仲間たちが次々と集まり、一つの巨大な敵に立ち向かっていくような。あるいは、キングダムで強者が合流し、国を超えて大義のもとに進軍していくようなスケール感がある。その光景を想像するだけで、自然と心が弾む。
もっと身近な感覚でいえば、日本代表戦とでもいうのだろうか。サッカーのW杯やWBCを観ているときの“総力戦”のムードがある。大谷翔平選手のように、自ら突出しながらも周囲を巻き込み、チームとして強くなる。そのモデルに最も近いのが、いまの大倉さんだと思う。もちろん、強力なリーダーシップがあるのは間違いない。そうでなければ、企業をここまでの規模へと成長させることはできない。人を巻き込み、共に動かし、求心力を生み出す。その力が大倉さんの真骨頂だ。
“人を大切にする経営”の先駆けとして
言葉が変わるように、リーダーシップのあり方も時代とともに変わった。かつては強力なトップが方向性を示し、組織がそれに従うモデルが主流だった。しかし不確実性が増した現在、さまざまな意見をすくい上げ、多様な視点を統合する方が、企業としての判断を誤らない。人的資本経営の重要性が語られるように、「人を大切にする経営」がこれからの中心になる。大倉さんは、まさにその先駆けだったと言えるだろう。人を尊重し、巻き込み、チームで成果を出す。その姿勢が、企業を持続的な成長へと導いてきた。
人たらしであることが、さらにその強みを力強いものにているのは間違いない。yakitoriという日本の食文化が世界共通語になる日は、もうすぐそこまで来ている。その未来の入口で、誰よりも自然体で、誰よりも人を惹きつけながら歩いているのが、大倉さんという経営者だ。



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