【DX総論】DXの本質はデータ活用。飲食DXを理解するための基礎
- 三輪大輔

- 2025年1月7日
- 読了時間: 5分
更新日:2025年12月12日
DXの本質は「データの活用」である
DXという言葉は、すでに広く浸透した。しかし、その本質的な定義は、いまなお十分に共有されていない。DXが単なるIT導入やデジタルツールの活用と混同され、言葉だけが一人歩きしている場面も少なくない。その結果、外食大手と中小個店の間だけでなく、同じ外食産業の中でも取り組みの差が生まれている。この差は、資金力やシステム投資額の違いではない。DXに対する理解の差であり、突き詰めれば「データをどう捉え、どう活用しているか」の差である。
実際、業績を伸ばしている外食企業を見ると、その共通点は明確だ。すかいらーくホールディングスはデジタルを活用しながら現場オペレーションと顧客体験を磨き上げ、快進撃を続けている。また、トリドールホールディングスも、CIO(最高情報責任者)とCTO(最高技術責任者)を配置し、データ活用のその先までを見据えた体制を構築している。これらの企業が示しているのは、DXの本質が「ツールを入れること」ではなく、データを起点に、意思決定やビジネスモデルを変えていくことにあるという事実である。
DXはIT化やデジタル化の言い換えではない
そもそもDXとは、デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の略である。直訳すれば「デジタルによる変革・変容」だが、この「変革」の部分が十分に理解されていない。
近年、タブレット型POSレジやモバイルオーダー、シフト管理、予約台帳、受発注システムなど、飲食店の運営を支えるデジタルサービスは急速に普及した。かつては高額だったPOSレジも、今では比較的リーズナブルな価格で導入できるようになり、導入のハードルは大きく下がっている。その結果、「ガチャレジをタブレット型POSレジに切り替えた」「紙伝票をやめてモバイルオーダーを導入した」といった変化をもって「DX化した」と捉えるケースが増えた。
さらに、スタッフ間の連絡をチャットツールで行い、WEB予約を自動で席配置に反映させるなど、業務プロセスそのものをデジタルに移行している店舗も増えている。しかし、結論から言えば、これらはいずれもDXではない。
DXの前段階にある二つのステップ
DXを正しく理解するためには、その手前にある二つの概念を整理する必要がある。それが「デジタイゼーション」と「デジタライゼーション」である。
デジタイゼーション
アナログデータのデジタル化を指す。紙の伝票をデータ入力に置き換える、ガチャレジをPOSレジに切り替えるといった取り組みがこれに当たる。
デジタライゼーション
業務プロセスそのものをデジタル化することを指す。モバイルオーダーで注文から会計までを一気通貫で処理する、予約管理を自動化するといった取り組みが代表例だ。
これらはDXを実現するための重要なステップではあるが、それ自体がDXではない。あくまでDXに至るための土台に過ぎない。
DXの定義と、そこに含まれる本質
DXについては明確に一つの定義があるわけではないが、2018年に経済産業省が示した定義は、一つの指針となる。要点を整理すると、DXとは、データとデジタル技術を活用し、ビジネスモデルを変革し、競争上の優位性を確立することである。ここで重要なのは、デジタル技術そのものではなく、「データの活用」が中核に据えられている点だ。
デジタイゼーションやデジタライゼーションは、部分最適に過ぎない。DXは、組織全体や事業構造にまで影響を及ぼす全体最適の取り組みである。
飲食店にとっての競争上の優位性とは何か
では、飲食店にとっての競争上の優位性とは何か。それは「顧客体験価値の創出」に他ならない。コロナ禍以降、価格や立地だけで選ばれる時代は終わりつつある。来店前から退店後までを含めた体験全体が評価され、その積み重ねがリピートやブランド形成に結び付く。
以上を踏まえると、DXは次のように定義できる。
デジタルトランスフォーメーション顧客体験価値を高めるための、事業やビジネスモデルの変革
DXの本質は、データをどう使うかにある
DXを実現するために必要なのは、ツールの導入そのものではない。重要なのは、そこから生まれるデータをどう扱うかである。
具体的には、下記の一連の流れがあって、はじめてDXを推進しているといえる。
・デジタルツールを導入する
・来店履歴や購買データを蓄積する
・データを分析し、サービスや業務を見直す
・その変化をビジネスモデルにまで落とし込む
・組織や企業文化がそれを支える状態をつくる
例えばPOSレジであれば、導入して終わりでは意味がない。売れ筋商品、客単価、来店頻度といったデータを分析し、メニュー改善や新商品の開発、場合によっては新業態の検討につなげていく。同時に、そうした取り組みが現場で定着するよう、組織や企業文化を変えていくことも欠かせない。
まとめ
DXは流行語ではない。また、IT化やデジタル化の別名でもない。デジタルツールによって得られたデータを起点に、意思決定や事業のあり方そのものを変えていく取り組み。それがDXの本質だ。
DXへの理解の差は、すでに業績や競争力の差として表れ始めている。いま問われているのは、「DXに取り組んでいるかどうか」ではなく、DXをどう理解し、どうデータを活用しているのかにあるといっても過言ではないだろう。
––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––
本記事に関連して、飲食DXや店舗運営、データ活用についてのご相談がありましたら、下記よりお問い合わせください。 個店からチェーンまで、取材・執筆を通じて見てきた事例をもとに、現状整理や方向性の検討をお手伝いします。
初回相談は無料です。 原則として24時間以内に返信します。
▶︎ お問い合わせはこちら


コメント