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【小説・エッセイ】司馬遼太郎「項羽と劉邦」

  • 執筆者の写真: 三輪大輔
    三輪大輔
  • 10月23日
  • 読了時間: 1分

「三国志」(吉川英治)から始まり、中国史を一年に一冊ほどのゆったりしたペースで辿っている。「始皇帝」(塚本靑史)と「呂后」(塚本靑史)と読み進め、次は北方謙三『史記 武帝紀』へ向かう予定だ。


その流れの中で手に取ったのが、司馬遼太郎『項羽と劉邦』である。上・中・下巻でほぼ一年をかけて読んだが、ゆっくり進むことで、時代の空気や人物の変化がより立体的に見えてきた。


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本書の軸は、もちろん劉邦と項羽の対峙である。後に中国を統一し漢王朝を築く劉邦は、その過程のほぼすべてにおいて項羽の武勇を畏れ続けた。項羽は無類の強さを誇り、戦場に立てば無敵に近い。しかし、叔父の死をきっかけに、次第に判断がぶれる。しかし、叔父の死をきっかけに、次第に判断がぶれる。頼りにしていたブレーンを失い、項羽は徐々に暴走していく。強さが裏目に出る瞬間の脆さが描かれている。


一方の劉邦は、決して英雄然とした人物ではない。どちらかといえば、ずる賢く、したたかで、そして臆病だ。しかし、その臆病さこそが、最後には勝ち残る力となっていく。


読み終えて感じるのは、歴史を動かすのは必ずしも最強の人物ではないということだ。人間の弱さ、怯え、運の巡り。それらを含めて受け入れながら前に進む人物が、時代をつかむのだと実感させられる一冊である。

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