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ラーメン店はなぜ買われるのか? 外食大手がM&Aを進める背景

  • 執筆者の写真: 三輪大輔
    三輪大輔
  • 2025年12月4日
  • 読了時間: 4分

更新日:2025年12月5日

現在、外食業界ではラーメン店のM&Aが盛んに行われている。株式会社魁力屋は、「三田製麺所」を展開するエムピーキッチンホールディングスを買収し、大手資本による再編の動きが一段と強まっている。さらに、株式会社吉野家ホールディングスも事業の第三の柱としてラーメン事業を位置づけ、今後はM&Aを積極的に進める方針を示している。


吉野家ホールディングスのIR資料
吉野家ホールディングスのIR資料

なぜ今、ラーメンに注目が集まるのか。その背景を考察していく。


苦しい経営が続くラーメン店

まず、ラーメン店を取り巻く現在の環境を見ていく必要がある。株式会社帝国データバンクの調査によると、2025年1〜9月のラーメン店倒産は46件で、前年同期の60件から2割超減少したという。通年でも4年ぶりの減少が見込まれ、倒産件数のペースはやや落ち着きを見せている。


背景には、原材料費や人件費の高騰が続きつつも、価格転嫁の難しさがわずかに和らいできた点が挙げられる。また、ラーメン市場そのものは拡大傾向にあり、2024年度の市場規模は約7900億円に達する見通しとされる。競争環境は厳しいながらも、再興の兆しがないわけではない。


とはいえ、現場では依然として厳しい状況が続く。原材料でいえば、油・小麦・豚肉・野菜の高騰が甚大である。ある店主は「油と小麦の価格が1.5倍になった」と語り、光熱費の上昇も加わって損益分岐点は短期間で大きく跳ね上がっている。


主因は原材料費の高騰と人手不足である。原材料費の面では、油・小麦・豚肉・野菜の高騰が甚大な影響を及ぼしている。ある店主の話では、「油と小麦の仕入れ価格が以前の1.5倍になった」という声もある。さらに光熱費の上昇も加わり、短期間で損益分岐点が大きく上がっている。


さらに、ラーメン店は従来から人手不足に陥りやすい業態である。立ち仕事で負荷が大きく、厨房は暑く過酷な環境になりやすい。働き方改革によって短時間労働の活用が進んだとはいえ、キッチンでは女性や高齢者の戦力化が難しい。この構造的な問題が、他の外食業態以上に人手不足を深刻化させている。こうした厳しい環境を背景に、大手チェーンではDX推進の動きが活発だ。配膳ロボットや自動調理ロボットを導入し、省力化と効率化を進めている。しかし導入コストの壁があり、中小・個店では真似することが難しい。資本力の差がそのまま事業運営の差につながっているのが現状である。


加えて、いわゆる“1000円の壁”が中小店の経営を苦しめている。ラーメンの価格が1000円を超えると消費者は高いと感じやすく、原価が上昇しても価格に転嫁しにくい。薄利多売にならざるを得ず、利益が出にくい構造が形成されている。売却や傘下入りを検討するオーナーが増えるのも、ごく自然な流れといえる。


ラーメン店が買われる切実な理由

外食業界ではコロナ禍以降、経営の多角化が急速に進んでいる。インバウンド需要が回復しているとはいえ、人口減少の影響は大きく、国内外食市場の成長は限定的である。企業が収益を最大化するには、複数の業態を保有するブランドポートフォリオが不可欠になる。


多業態戦略が当たり前になりつつあるなか、なぜラーメン店なのか。その理由は海外人気の高さである。「一風堂」をはじめ、国外で高い評価を得ているチェーンが多数存在する。国内市場が頭打ちとなる中、企業が成長し続けるには海外展開が避けられない。その際、ラーメンは非常に強力な武器となり得る。


こうした背景から、経営が苦しいラーメン店が、比較的資本力のある企業に買収される流れが生まれている。資本の支援を受けることで、経営の安定化だけでなく、DX推進や設備投資、ブランド強化、待遇改善など、多面的なメリットを享受できる。


例えば「大阪王将」では調理ロボットの導入により、生産性向上だけでなく離職率や損益分岐点の改善にもつながった。セントラルキッチンの導入や原材料の一括仕入れも、原価高騰への対策として有効である。さらに冷凍フリーザーを活用したスープ供給により、店舗負担の軽減だけでなく、通販やテイクアウトといった新規販路の拡大も期待できる。実際に一風堂は通販・ECの売上を伸ばしている。


これからのラーメン店は、二郎系や家系のように熱狂的ファン層を持つ店を除けば、原価管理、効果的な人材育成、多販路展開など、経営の高度化が欠かせない。こうした対応ができない店舗は、人手不足・原価高騰・市場縮小の影響を受けて淘汰が進む可能性が高い。


これらの状況を踏まえると、今後もラーメン店のM&Aは継続して活発に行われていくと考えられる。

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