スマホオーダーはなぜ賛否を巻き起こすのか
- 三輪大輔

- 10月28日
- 読了時間: 3分
更新日:3 日前
スマホオーダー導入が議論を呼ぶ背景
いわゆるスマホオーダーが賛否を巻き起こしている。なお、普段は「モバイルオーダー」と呼んでいるが、議論をわかりやすくするため、ここでは「スマホオーダー」と表記したい。
スマホオーダー導入をめぐる問題が生じる根本的な理由は、飲食店側のメリットが優先されすぎている点にある。飲食店がスマホオーダーの導入を進める理由は、大きく分けると人手不足の解消か、人件費高騰への対応の二つに行き着く。もちろん、これらは店舗運営にとって極めて重要である。しかし、こうした経営上のメリットが過度に優先されると、顧客体験価値(CX)が置き去りになるのも事実だ。
多くのベンダーは、スマホオーダーによってスタッフをオーダーテイクの煩雑さから解放し、本来の業務に集中できると説明する。その結果、先回りした声掛けができたり、これまでできなかったメニューのお薦めができたりして、結果として、顧客体験価値が上がるという論理だ。そもそも「オーダーテイクが素晴らしかったから、あのお店にもう一度行こう」とはならない。それよりも「スタッフに勧められた料理が印象的だったからまた来たい」と思いや、「気の利いたサービスがよかったら、取引先も連れていこう」という判断が働く。そのため、ベンダー側の説明も、あながち的外れではない。
導入前と導入後で分かれる“スタッフの行動変化”
しかし現実には、スマホオーダーの導入で 逆にサービスレベルが下がるケースは少なくない。その理由の一つが、スタッフの行動変化にある。スマホオーダー導入前の忙しい時代を知るスタッフは、空き時間にプラスアルファのサービスを自然と行う。これまでできなかったサービスができるようになるため、そこに喜びを感じるスタッフも多い。これが機能すれば顧客体験は確かに向上する。
一方、導入後に働き始めたスタッフにとっては、現在のオペレーションが「標準」であるため、追加の気配りを行わない傾向が高い。むしろ、プラスアルファのサービスを余計な業務として捉え、敬遠する姿勢すら見られる。その結果、「前よりサービスが落ちた」という不満が生まれやすくなってしまう。
現在、スマホオーダーは一定の層に受け入れられているのは確かだ。「自分のタイミングで注文したい」「対面での注文が煩わしい」というニーズを満たすサービスであることも事実である。ただし、スマホオーダーが今後さらに普及するためには、不満を抱えている層をどう取り込むかという視点を持つことが欠かせない。この壁を越えられたベンダーこそが、次の市場の覇権を握るだろう。
では、スマホオーダーはこれからどこへ向かうのか。次回は、レコメンドやデータ連携など、サービスの“進化の方向性”について考えてみたい。



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