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【外食55年史総論】なぜ外食産業の「リーダー像」は10年ごとに変わるのか── マクドナルド上陸から55年のリーダーシップの歴史

  • 執筆者の写真: 三輪大輔
    三輪大輔
  • 2 日前
  • 読了時間: 4分

〜「支配」の時代から「共創」の時代へ〜

ある時代に称賛された成功モデルが、わずか10年後には古びた遺物のように扱われてしまう。日本の外食産業は、過去55年間で、そうした残酷なまでのパラダイムシフトを何度も繰り返してきた。


1970年代、「マクドナルド」が上陸するともに「ロイヤルホスト」「すかいらーく」「デニーズ」といった「ファミレス御三家」が登場し、日本の外食産業は一気に花開いた。主戦場は都心からロードサイドへと広がり、外食は「ハレの日の特別な外出」から「日常の生活の一部」へと変わっていく。しかし、その成功モデルが永続したわけではない。


時代が変わり、消費行動が変わり、経営環境が変わるたびに、求められる経営のあり方も書き換えられてきた。 日本の外食産業は1970年に産業としての歩みを始め、2025年で55年を迎えた。その歴史を振り返ると、経営者に求められる役割は、おおむね10年単位で大きく更新されてきたことが分かる。


なぜ「10年周期」で塗り替えられるのか

理由は単純で、景気と社会環境が約10年周期で大きく切り替わってきたからだ。実際、1987年のブラックマンデー、1997〜98年のアジア通貨危機、2000年代初頭のITバブル崩壊、2008年のリーマン・ショック、そして2020年のコロナ・ショックと、世界的な経済危機はほぼ10年周期で訪れ、その都度、消費者の財布の紐と価値観を劇的に変容させてきた。


外食産業も例外ではない。市場環境が切り替わるたびに、経営者に求められる役割は変わり、時代の要請に応えた者が結果としてその時代の「顔」となってきた。外食産業の歴史とは、企業の栄枯盛衰であるのはもちろん、リーダーシップの型が更新され続けてきた歴史だということもできるだろう。


日本外食産業・変遷の系譜

リーダーシップの変遷を整理すると、日本の外食産業は次の六つの経営者像によって牽引されてきた。


1970年代:Pioneers(パイオニア)

外食がまだ産業として成立していなかった中、米国のチェーンストア理論を導入し、何もないところに企業の骨組みをつくった開拓者たち。

1980年代:Builder(ビルダー)

郊外ロードサイドに巨大な駐車場を備えた店舗を張り巡らせ、日本の津々浦々に定着させた構築者たち。

1990年代:King(キング)

バブルの熱狂とその崩壊後、「規模の論理」で市場を席巻。低価格競争の中、多店舗展開と資本力で圧倒した「統治」の時代。

2000年代:Hero(ヒーロー)

デフレが定着する中、画一的なチェーン店に飽きた消費者の心を、個のセンスと独創的なコンセプト、物語(ストーリー)で射抜いた寵児たち。

2010年代:Boss(ボス)

人手不足やガバナンスが課題となる中、組織化、グループ経営、マルチブランド化を推し進め、属人的な力から「マネジメントの仕組み」へと比重を移したリーダー。

2020年代:Buddy(バディ)

パンデミックを経て、一つの企業の「強さ」よりも、ファンや地域、異業種との「関係性」が競争力になる時代へ。共創とコミュニティを重んじる相棒としての経営。


もちろん、それぞれの時代にそのタイプの経営者しか存在しなかったわけではない。あくまでも、その時代に最も存在感を発揮した経営者像として多かったモデルである。ただ、それを追うだけでも、各時代の空気感や課題が立体的に浮かび上がり、外食産業の流れを奥行きのある形で理解することができる。


リーダーシップの歴史を「現在のモノサシ」で断罪しない

重要なのは、これらの経営スタイルを「古いからダメ」「新しいから正しい」といった二元論で捉えないことだ。例えば、1970年代のPioneersが命がけで構築した「セントラルキッチン」というインフラがなければ、1990年代のKingによる急激な多店舗展開は不可能だった。また、Kingが外食を国民的なインフラにまで押し広げたからこそ、2000年代のHeroたちは「あえてチェーン店にはない個性」を提示するというカウンター戦略をとることができた。


過去の経営を、現在の価値観やコンプライアンスという「後出しのモノサシ」で断罪することほどナンセンスなことはない。それぞれの経営者がバトンをつなぎながら、外食産業という一つの大きな生命体を成長させてきたのである。


2030年の経営者像を求めて

本連載では、これらの時代を順に振り返りながら、外食産業におけるリーダーシップがどのように更新されてきたのかを紐解いていく。 各時代の経営者たちは、何と戦い、何を勝ち取ってきたのか。その闘争と適応の歴史を辿った先に、2030年を牽引する「次の経営者像」が浮かび上がってくるはずだ。





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