ラーメン業界「三極化」の衝撃M&Aが加速する背景と2026年の生存戦略
- 三輪大輔

- 2 日前
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ラーメン業界は、どこに向かおうとしているのか
ラーメン業界はいま、大きな転換点に立たされている。2025年12月4日、筆者は「ラーメン店はなぜ買われるのか。外食大手がM&Aを進める背景」と題した記事を配信した。さらにそれ以前の2025年6月18日には、「ココイチや吉野家まで。今、ラーメン店が積極的にM&Aされている深い訳とは?」という論考を公表している。その後も、ラーメン店のM&Aを巡る動きは複数のニュース媒体で相次いで取り上げられてきた。
一連の報道を追い切れていない読者も多いかもしれない。ただし、はっきりしているのは、現在起きているラーメン店のM&Aは、単なる業界再編ではないという点である。これは、ラーメン店という商いそのものが、個人の努力や工夫だけでは持続しにくいフェーズに入ったことを示す、構造的な変化である。
ラーメン市場は「三極化」しつつある
現在のラーメン市場は、三つの勢力に分かれつつある。
第一極:セントラルキッチンと効率性を武器に、日常食市場を支配する大手チェーンである。オペレーションの再現性と原価管理を徹底し、安定した品質と価格で広範な顧客層を押さえる存在だ。
第二極:属人的な技術と行列をブランドとする個人店、いわゆる名店である。店主の技術や思想が味に直結し、強い熱狂的支持を集める一方で、原材料費の高騰や後継者不足といった課題を抱えている。
そして近年、この二つの間に第三の極が生まれつつある。
第三極とは何か
第三極とは、資本力と既存インフラを持つ企業が、長い時間をかけて育てられたラーメンブランドを取り込み、再現性と拡張性を獲得しようとする動きである。
現在起きているのは、第三極が第二極を買収する動きと、第一極が第三極を取り込む動きである。つまり、第二極である個人店が、構造的に買われ続けているという現実だ。
なぜ、いま第三極の存在感がこれほどまでに高まっているのか。背景には、原材料費と人件費の高騰、そしていわゆる「1000円の壁」に象徴される価格転嫁の難しさがある。ラーメン店は今、努力だけでは解決できない複数の構造問題を同時に抱えている。
第三極の象徴としての松屋
第三極の代表例として挙げられるのが、松屋フーズホールディングスである。
松屋が松富士食品を買収し、「六厘舎」や「舎鈴」といったブランドを傘下に収めた背景は明快だ。それは、自前では短期間で生み出せなかった「圧倒的なブランドの時間」を買うためである。
松屋が持つインフラ、物流、DXといった外骨格に、個人店が長年培ってきた「魂の味」を移植する。このハイブリッド型こそが第三極の本質であり、2026年以降、ロードサイドや都心の好立地で存在感を強めていくと見られる。
魁力屋と三田製麺所に見る、もう一つの動き
反対に第一極の象徴が、魁力屋による三田製麺所の買収である。
これは単なる店舗数拡大ではない。魁力屋が得意とするロードサイド運営のノウハウと、三田製麺所が持つ都心部でのブランド力を統合し、サプライチェーン全体を掌握しにいく動きである。小麦や油の共同仕入れによって、個人店では実現不可能な原価交渉力を持つ。競争環境そのものを変えていく戦略だと言える。
ブランドは、国内市場だけを見ていない
企業が評価しているのは、単なる売上ではない。ブランドが持つ将来価値である。インバウンド需要の回復により、ラーメンは世界的な観光コンテンツとしての存在感を強めている。
筆者自身、先日、有楽町駅前の「AFURI」を訪れた際、来店客の約8割が訪日客であることに驚かされた。日本のラーメン人気は、想像以上にグローバルな広がりを見せている。第三極の動きの背後には、国内回収にとどまらない視点が確実に存在している。
ラーメンM&Aは、業態の未来を映す鏡である
ラーメン店のM&Aは、一部の企業や有名店だけの話ではない。業態そのものがどこへ向かおうとしているのかを映し出す鏡である。
本稿では、ラーメンM&Aが加速する背景と、「第三極」という新たな構造について概観してきた。次回以降は、この動きをより具体的に読み解くため、以下のテーマで連載を行う予定である。
第1回:なぜ松屋はラーメンを選んだのか。牛丼業界との比較から見える必然
第2回:魁力屋に見る、ラーメン業界内部の再編
第3回:小さなラーメン店が「買われる側」になる理由と、その先
ラーメンM&Aは、拡大戦略ではなく、存続の選択肢として業界に組み込まれ始めている。



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