【グルメ/ラーメン】水道橋「中華そば 勝本」
- 三輪大輔

- 10月14日
- 読了時間: 2分
日本のラーメン価格は長らく“1000円の壁”が存在していた。しかし近年は1000円を超える一杯も増え、潮目の変化を感じる。それでも、世界の物価感覚から見れば依然として日本のラーメンは安い。こうした状況も反映しているからだろう。ラーメン店の倒産や買収は増えており、その背景には原材料費の高騰、値上げに付加価値をどう乗せるかといった課題がある。うまいだけでは成立しない。そんな時代となり、経営の視点が不可欠となっている。
そのような環境の中で、水道橋「中華そば 勝本」は苦い経験を経て、アップデートされた店といえるかもしれない。同店は2022年4月、コロナ禍の影響により運営会社が倒産した。現在は株式会社Food Operation Japanが事業を引き継ぎ、営業を継続している。以前の代表であった松村康史氏は顧問に就きつつ、店主としての役割に打ち込む。経営と現場を切り離す判断により、ブランドを存続させたと理解できる。
今回注文したのは「味玉中華そば」だ。丼から立ち上る煮干しの香りが柔らかく、ひと口すれば深みのある味わいが広がる。煮干し特有のえぐみや強い苦味は抑えられ、旨味だけを丁寧に抽出したスープは雑味がない。

数年前、煮干し出汁がブームとなり専門店が乱立したが、私は煮干し出汁で好むのは「ラーメン凪」のような力強いタイプが中心であり、それ以外はしっくりこないことが多かった。しかし、この一杯は繊細さが際立つ。煮干しを“強さ”ではなく“旨味の方向性”で表現する技術が光り、香りと厚みのバランスを丁寧に調整している印象である。
それができるのは、松村氏の経歴があってこそだろう。同氏は旧・京都全日空ホテルで総料理長を務めるなど、フレンチ一筋三十六年のキャリアを持つ人物である。その技術が、雑味がなく、旨味の際立つスープに生かされているのは間違いない。
同氏というと、むしろ「銀座 八五」の方が広く知られている。同店はビブグルマンに七年連続で掲載されるほどの名店へと成長した店である。「次は、ぜひ足を運んでみたい。


コメント