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【外食企業の現在地】「武相」の歴史を食で繋ぐ。町田に根ざすキープ・ウィルダイニングが描く、街のグランドデザイン

  • 執筆者の写真: 三輪大輔
    三輪大輔
  • 2025年10月7日
  • 読了時間: 6分

更新日:2月12日

                三輪大輔|外食ビジネスアナリスト


東京都の西に広がる多摩エリア。その中で、八王子市に次ぐ人口規模を誇り、中心的な役割を果たしているのが町田市です。



キープ・ウィルダイニングは本拠地を町田に移して以来、町田の活性化を意識した同社のビジョンである「GOOD LIFE BUSOー街をもっと豊かにー」を体現しています。生産者とも一緒になった取り組みから、次世代の多摩エリアの在り方を探っていきます。


町田市から企画・運営を受託。キープ・ウィルダイニングの新店舗が町田市にもたらした豊かさ

 

町田市民の憩いの場所として、人気を集めている薬師池公園。駅からは多少離れた場所にありますが、週末になると多くの家族連れでにぎわっています。2020年4月には公園の新たな玄関口として、西園・ウェルカムゲートエリアがオープン。農産物直売所や町田産の食材を使った食事ができるカフェレストラン、クラフト体験などができる体験工房、そしてバーベキューができる広場などがあり、町田市はもちろん市外の方も足を運んでいます。他社と協同して同公園の指定管理者を務めているのが株式会社キープ・ウィルダイニングです。

 


同社は2004年に創業し2011年に本拠地を町田に移して以来、町田市に根付いた飲食店の提案を大切にしています。現在は、飲食事業を柱にプロデュース事業、卸売事業、そしてスペース事業と、多岐にわたるビジネスを展開されていますが、共通する想いは「この地域をもっと豊かにしたい」という想いです。その象徴となるような店舗が、「44APARTMENT(ダブルフォーアパートメント)薬師池店」です。

 

同社取締役営業本部長の沼田直哉氏は、同店の特徴について次のように話します。

 

「44APARTMENTのコンセプトは、街のセカンドリビングです。大切な誰かを招待したくなるような居心地のいい空間づくりを心がけています。薬師池公園には老若男女を問わず、幅広い年齢層の方が訪れています。ですので、当店の客層もとても幅広いです。そこで私たちは、来店される皆様に満足だけでなく豊かな時間を過ごしていただけるようなサービスや料理・過ごし方の提案をしています。私たちの取組を通してまだ知らない街の魅力に気づいてもらう。そんな仕掛けを施すことも大切です。そうした取組を通して、薬師池公園に私たちのお店がある意義を感じてもらえる店作りをしています」

 


町田の魅力の一つに町田産の食材があります。例えば、同店はテイクアウト商品として「薬師ベジタブルカレー」と「薬師ローストチキンカレー」を販売していて、付け合わせに町田産の季節の野菜を使っています。また、「薬師ミルクソフトクリーム」や「薬師ミックスソフトクリーム」の原料は町田の北島牧場から仕入れた牛乳です。

 

しかし、同店では産地などを大きく打ち出した提案はしていません。町田産であることを大きく打ち出すことよりも、実際に食べることでおいしさに触れ、体感していただく事が何よりその食材の魅力を知ることだと思っています。それがまだ知らないこの地域の魅力を発見するきっかけになればという想いでメニューに取り入れています。


なお、直売所の運営を担っているのも同社です。季節によってさまざまな野菜や町田の名産品・地酒などが販売されています。商品を販売している生産者は、キープ・ウィルダイニングの担当者が自ら足を運んで開拓し、信頼関係を構築しているところばかりです。また、月に1回は「ファーマーズマーケット」というマルシェも開催され、採れたての農作物は生産者自らが販売。地場食材を使った軽食や小物販売など20店舗が出店しています。




今後はさらに地場生産者との繋がりを強め規模拡大を目指しています。このイベントや直売所をきっかけに、町田市の生産者同士のつながりも生まれています。


キープ・ウィルダイニングだからこそできた挑戦の数々

 

町田市の中心にある町田駅は、JR横浜線と小田急線が乗り入れている多摩エリアの一大ターミナル駅です。乗降客も多いため、駅の周辺には百貨店やファッションビルをはじめ、大手飲食店のチェーン店が多く店を構えています。その中でどのように存在価値を高めてきたのか?町田駅周辺にドミナント展開をしているのには理由がありました。


例えば、2010年代のはじめ、町田には女性が楽しめるお店があまりありませんでした。そこで同社は「CAFE KATSUO」を皮切りに「01 CAFE」や「The CAFE」など、コンセプトが異なる魅力的なカフェを続々とオープンさせ、町田市に新たな彩りを加えていきます。


また、町田は交通の便がいいからこそ、遊びに行くときは新宿や横浜まで足を伸ばす人が多くいます。都心にいかなくてもこのエリアで素敵な時間を過ごせる。そんな風に感じてもらえるように、同社でさまざまな業態の飲食店を展開。過ごし方に合ったお店の使い方を提案しています。その一つの集大成とも言えるのが2019年にオープンした「Restaurant STRI」です。同店は西東京最大級の大型ルーフトップレストランで、「街の大人が遊びだす」をコンセプトにランチにはホテルクオリティのビュッフェ・夜にはpizzaやクラフトビールが楽しめるお店として昼夜違った使い方を提案しています。



フロアの中にはSTRIの他に、薪焼ステーキレストラン 「コケット」と、シガー&バー 「ROJY(ロジー)」という二つの店舗があります。ROJYは本格カクテルや希少なウイスキー・シガーをカジュアルに楽しめるバーです。バーテンダーが作る地元の食材や果物を使った季節のシグネチャーカクテルを目当てに、連日、多くの方が訪れています。


コケットは1日4組限定の完全予約制フルコースのステーキレストラン。前菜・魚料理には地元の食材・文化にこだわり、ジャンルにとらわれず「武相料理」として表現しています。素材を活かし、香り・食感・生産者の想いを1皿に乗せて大切な人との特別な食事の時間を提供しています。このように、誰とどんな時間を過ごしたいのかによって店舗を選ぶことができるよう様々な業態、この街に求められている店舗展開をしているのがキープ・ウィルダイニングです。

 

町田を起点にして、多摩エリアのポテンシャルは大きく広がっていく

 

実はかつて、同社は都内に本格的に進出し大きく事業拡大ができるチャンスがありました。しかし、熟考の末、「この地域に育ててもらったからこそ、ほかの地ではなくこの地域をもっと豊かにしたい」とその案件を断ることを決めます。

 

その思いは大きく花開き、今、同社の取組は外食という枠も飛び越えています。その一つが​コワーキングオフィス「BUSO AGORA」です。BUSO AGORAでは人と人とのつながりを大切にしています。その要になるのが、コミュニティマネージャーです。利用者が何に困っていて、どんな人とつながりたいと思っているかなどを、彼女らがヒアリングし、ビジネスがスケールしていくサポートをしています。事業プレゼンなどを行うビジネスイベントも多く開催し、将来ここをきっかけに町田を大きく変えるビジネスが誕生しても不思議ではありません。

 


最近、同社が影響を与えるエリアは町田から、「武相」と定義付けたエリア一帯に広がっています。かつて町田は武蔵の国と相模の国の境にあり、幕末には八王子から横浜へ生糸が運ばれる「絹の道」によって栄えていました。その歴史を踏まえて、食で街を豊かにしながら次世代へ想いを繋ぐ。キープ・ウィルダイニングの取り組みが、町田をさらに魅力ある街にしていくのが間違いありません。



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