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【飲食経営者の肖像】ゼットン鈴木伸典会長

  • 執筆者の写真: 三輪大輔
    三輪大輔
  • 5月15日
  • 読了時間: 3分

更新日:2 日前

サブスク全盛の時代となり、僕もApple Musicで音楽を聴く機会が増えた。最近の流行りから、昔の名盤まで手軽に聴くことができて非常に重宝している。しかし、好きなアーティストの音楽はCDを買ってしまう。CDで育ってきた自分にとっては、購入して開封するその一連の行為までが音楽体験に含まれているといっていい。もう中高生の頃のようにはいかないが、今でも新譜を開封する瞬間にはわくわくするのだ。鈴木さんの話は、それに近い。新しいアルバムの封を切るように、いつも胸が高鳴る。


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名プロデューサーに重なる姿

社長に就任されたばかりの頃から、葛西臨海公園の事業の立ち上げ時、コロナ禍の緊急事態宣言下、僕の著書に掲載するインタビュー、アダストリアとの協業、そして会長就任のタイミングまで、節目ごとに鈴木さんの話を聞かせてもらった。それはまるで、好きなアーティストの新譜を聴くような体験だった。ゼットンというバンドがあるとすれば、鈴木さんはそのプロデューサーである。バンドの色を決め、次の方向性を示し、ときに大胆に音を変えていく。


音楽でたとえるなら、ブライアン・イーノが思い浮かぶ。ミック・ロンソンが去った後のデヴィッド・ボウイを、ベルリン三部作という再生の地平に導き、U2 を『The Joshua Tree』でスターダムへ押し上げ、そしてColdplay を『Viva La Vida or Death And All His Friends』でモンスターバンドへと変貌させた。アーティストの新しい一面を引き出し、再生し、飛躍させる存在──それが名プロデューサーだ。僕にとって、ゼットンの鈴木さんはまさにそのイーノのような存在だった。


現場と経営を行き来しながらビジネスをデザイン

僭越ながら、鈴木さんの凄みは「飲食人」という現場のベースを持ちながら、同時にビジネスをダイナミックに俯瞰できる点にあると思う。現場と経営のどちらかに寄るのではなく、両方の言語を使いこなしながらビジネスをデザインできる。その視点があるからこそ、公園再生事業という普通なら外食企業が踏み込まない領域へ挑戦する発想が生まれたのだろう。


Park-PFIでは、外食で培った勝利の方程式はそのまま通用しない。だが、外食で磨いてきた武器は確実に活きる。鈴木さんの手にかかれば、バラバラのピースが新しい景色を描き始めるといってもいい。この発想の転換こそが、プロデューサーとしてのセンスであり、ゼットンの進化を可能にしてきた。


葛西臨海公園という“名曲”の誕生

ゼットンがバンドなら、葛西臨海公園は楽曲と呼べるかもしれない。それが名曲として成立するのは、名プロデューサーがいるからだ。イーノが『The Joshua Tree』でU2を飛躍させたように、鈴木さんは葛西臨海公園という楽曲を名曲へとつくり上げ、ゼットンを次のステージへ導いていった。 オペレーションを組み立て、カルチャーを定着させ、事業全体をひとつの音楽として束ねていく。その手腕があるからこそ、最近ではゼットンへの引き合いが増えているという。


次の“新譜”を待ちながら

会長職となり、役割は変わる。ただ、鈴木さんの力を必要とするフィールドは、飲食にとどまらず、これからますます広がっていくはずだ。次にどんな挑戦を見せてくれるのか。新譜を待つような気持ちで、その姿を追い続けたいと思う。



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