第2次ハワイアンブームの正体。なぜ今、「ハワイ」を求める商業施設が爆増しているのか?
- 三輪大輔

- 3 日前
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更新日:2 日前
三輪大輔|外食ビジネスアナリスト
■テレビ各局で相次ぐ「ハワイ特集」の舞台裏
4月1日にYahoo!ニュース エキスパートで公開した「第2次ハワイアンブームの正体。“高嶺の花”となったハワイ旅行と、国内代替消費の拡大」という記事が、大変ありがたいことに多くのテレビメディアで取り上げられました。
4月中旬から5月にかけて、各局のニュース番組で「いま、なぜ日本でハワイアンが熱いのか」というテーマで解説させていただきました。
『グッド!モーニング』(テレビ朝日)
『news every.』(日本テレビ)
『THE TIME,』(TBS)
『サタデーLIVE ニュース ジグザグ』(テレビ朝日)
なぜ今、再び「ハワイアン」なのか。この現象を読み解くには、まずこれまでのブームの歴史を振り返る必要があります。
■ 2010年、トレンドエリアを席巻した「第1次ブーム」
そもそも日本における本格的なハワイアンブームは、今回が初めてではありません。第1次の波が起きたのは、今から15年ほど前の2010年前後のことです。
この時、ブームの象徴となったのが『Eggs 'n Things(エッグスンシングス)』の日本上陸や、ゼットンが展開する『ALOHA TABLE(アロハテーブル)』でした。

当時の舞台は、原宿、お台場、中目黒といった、いわゆる「流行の発信地」です。 厚く積み上げられたパンケーキや、色鮮やかなトロピカルドリンクが若者や高感度層を惹きつけました。この頃のハワイアンは、あくまで「海外カルチャーへの強い憧れ」を消費する、エッジの効いた非日常の体験だったといえます。
■構造が変わった「第2次ブーム」へ
しかし、今起きている「第2次ブーム」は、当時とは似て非なるものです。今回のブームを駆動させているのは、「消費者側の切実な事情」と「受け皿となる商業施設の戦略」という、より構造的な変化にあります。
1. 消費者:高嶺の花となった「本場」の代替消費 まず、消費者にとってのハワイの距離感が劇的に変わりました。円安、物価高、さらには燃油サーチャージの高騰。かつては「手軽なご褒美旅行」だったハワイは、今や容易には手が届かない“高嶺の花”となりました。
実際の数字にも顕著に現れています。2019年には月平均10万人を超えていた日本人渡航者数は、現在5〜6万人台へと推移し、約50%も減少しています。「本場に行けないのなら、せめて国内でその空気感を味わいたい」という、切実な代替消費ニーズが今のブームを支える土台となっています。
2. 商業施設:競争激化を打破する「滞在型」の切り札 このニーズを敏感に察知し、戦略的に取り込んでいるのが各地の商業施設です。
実は、第一次ブームを牽引した『エッグスンシングス』なども、現在は精力的に商業施設内へ出店しています。しかし、ニューオープンやリニューアルという転換期において、施設側が今、最も求めているのは、集客を最大化できる「話題性(新規性)」と、滞在を促す「居心地」の両立です。
商業施設が開業する際、「〇〇店が初出店」という看板は、それだけで強力なメディア映えを生み、広域からの集客を可能にします。既存の人気店で安心感を担保しつつも、一方で「見たことがない新しさ」を求めて新ブランドを誘致する――。この両輪の戦略が、今の商業施設には不可欠なのです。例えば、以下のような例がその象徴でしょう。
・2025年10月開業の「イオンモール仙台上杉」に入った、GOSSOの新業態『ALOHA MELT TERRACE』。
・2026年3月開業の「イオンモール津田沼South」に登場した、コナズ珈琲の新ブランド『KNOWS COFFEE』。
こうした「初出店」や「新ブランド」の冠は、メディア映えし、広域からの集客を可能にします。
■ 「カフェ」が「夕飯の買い物」を誘発する
ハワイアン業態の真の強みは、他の飲食業態を圧倒する「滞在時間の長さ」と「過ごし方の多様性」にあります。
一般的なカフェの場合、一人で来店して仕事や読書に集中し、1〜2時間で退店する「目的来店」が主流です。しかし、ハワイアン業態は異なります。広々としたボックス席やゆったり流れるBGMが、「長居しても大丈夫だ」という心理的な安心感を与え、自然と会話を弾ませるのです。
ここが重要なポイントですが、「会話が弾む」ことは、次の消費のトリガーになります。「さっき話に出たあの服、ちょっと見に行かない?」と、店を出た後に他テナントへ向かう動線が生まれる。あるいは、居心地の良さに身を委ねて夕方まで過ごせば、「もうこんな時間だし、下のスーパーで夕飯を買って帰ろう」という流れが自然に作られます。
つまり、ハワイアン業態は単に空腹を満たす場所ではありません。顧客の滞在時間を引き延ばし、施設への親近感(エンゲージメント)を醸成しながら、施設全体の回遊性と購買頻度を劇的に押し上げる「ハブ装置」として機能しているのです。「その店があるから、その施設へ行く」。この強い目的意識を伴う滞在型テナントの有無が、今、商業施設の命運を握っています。
■ 飲食テナントが「商業施設の価値」を決める時代へ
特定のエリアに限られた流行だったハワイアンは、いまや「商業施設」を通じて私たちの日常に溶け込み、確固たるライフスタイルへと進化を遂げました。
特に今後の動きとして注視すべきは、コナズ珈琲が満を持して投入した新ブランド「KNOWS COFFEE」の動向です。 そもそも「コナズ珈琲」として培ってきた、圧倒的なハワイアンの世界観と運営ノウハウという強固な土台があります。その上で、2026年3月の「イオンモール津田沼South」への出店を皮切りに、今後はイオンモール内での多店舗展開が加速すると予測されます。

2026年3月現在、イオンモール株式会社が国内で運営するショッピングモールは162店舗にのぼります。この巨大なインフラの中で「KNOWS COFFEE」の全国展開が一気に進めば、ハワイアンブームの熱量は一部の地域を越え、名実ともに「全国区」のライフスタイルとして定着していくでしょう。
もちろんロードサイド人気も盤石ですが、今や「一日中、施設内で過ごす」というライフスタイルはごく当たり前の日常となりました。この変化があるからこそ、商業施設は単なる買い物の場から、次なるトレンドの「発信地」へと変貌したのです。
かつて飲食は、買い物のついでに寄る「フードコート」が主役でした。しかし、これからは違います。「その店があるから、その施設へ足を運ぶ」という強い目的意識。どのような飲食テナントを迎え入れ、独自の世界観を築けるか。商業施設の生存戦略は、いま大きな転換点を迎えています。



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