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ロッテリア消滅。ハンバーガー業界は「強さの競争」から「役割の競争」へ――ゼンショーが仕掛ける“ゼッテリア”の正体

  • 執筆者の写真: 三輪大輔
    三輪大輔
  • 3 日前
  • 読了時間: 9分

更新日:4 時間前

ロッテリアが消える日。ハンバーガー業界は「役割の競争」に入った


当時の関心は、ロッテリアが再起を図るための新業態として、ゼッテリアがどこまで伸びるのかという点にあった。しかし2026年1月21日、状況は一変した。ゼンショーホールディングスが、国内のロッテリア全店を2026年3月をめどに閉店し、順次「ゼッテリア」へ転換する方針が報じられた。54年続いたロッテリアの店名は、日本の街から消えることになる。


これは単なるブランド変更ではない。ハンバーガー業界がすでに「強さの競争」ではなく、「役割の競争」に移ったことを、最も劇的な形で示す出来事である。


店舗数ランキングが示す勢力図

現状の勢力図をつかむには、店舗数が分かりやすい。2025年末時点の目安として、主要チェーンの国内店舗数は次の通りである。バーガーキングは2025年に85店舗を新規出店し、2025年末に337店舗となり、約250店舗のロッテリアを抜いて店舗数で3位に立ったと報じられている。


1位 マクドナルド 約3,000店舗

2位 モスバーガー 約1,300店舗

3位 バーガーキング 337店舗(2025年末)

4位 ロッテリア 約250店舗(推計として報道内で言及)


この並びが示すのは、2位以下が「マクドナルドを倒す競争」から距離を取らざるを得ない構造である。首位は店舗網とブランド想起の水準が異なる。2位以下は、規模で追うよりも、別の価値軸を取りにいくしかない。


絶対王者。マクドナルドは売上でも別次元にいる

店舗数だけではない。売上でも、マクドナルドは別次元である。


日本マクドナルドホールディングスの開示によれば、2024年12月期の全店売上高は8,291億円で過去最高となり、既存店売上高は37四半期連続でプラスを継続した。 2025年12月期の連結売上高は4,125億円の見通しとされている。


「全店売上高が8,000億円超」「連結売上高が4,000億円超」という規模感は、他社が単純に追いかけられる水準ではない。しかも成長は止まっていない。王者は、王者であり続ける仕組みを更新し続けている。


モスは回復した。値上げが通ったブランドの代表例である

次に、モスバーガーである。


数年前までの苦境を知る読者ほど、足元の回復は印象的に映るはずだ。モスフードサービスの2026年3月期第2四半期(中間期)決算では、売上高507億5,800万円(前年同期比6.7%増)、営業利益40億4,100万円(同49.1%増)、純利益28億3,400万円(同59.0%増)と、増収増益が明確に出た。


ここで重要なのは、回復の中身である。期間限定商品のヒットに加え、カフェ需要の取り込みが奏功したとされる。 一方、2023年3月期にかけては、原材料・エネルギー費の高騰、海外事業の不振、そして「手作り感」がコスト吸収の限界に突き当たるなど、逆風が重なった。


モスの復調は、「値上げしても選ばれるブランドは存在する」ことの証明でもある。価格競争を避け、価値で選ばれる方向に踏みとどまった結果として、現在の数字がある。


バーガーキングは伸びている。最大の論点は「伸び方」である

バーガーキングは、店舗数でロッテリアを抜いた。これは象徴的だ。2025年末337店舗、2028年末までに600店を目指すと報じられている。SNS施策も巧みで、出店してほしい場所をユーザーから募るなど、候補地探索の効率化にも長けている。勢いは疑いようがない。


ただし、ここから先の論点は「伸びるか」ではなく、「伸び方が品質を保てるか」である。


バーガーキングは、2025年11月、運営母体がアフィニティ・エクイティ・パートナーズから、ゴールドマン・サックスへと売却される契約が締結された。買収額は約700億円規模とみられている。この事実は、今後の成長を読み解くうえで極めて示唆的だ。プライベートエクイティから投資銀行系ファンドへのバトンタッチは、「守り」から「次の成長フェーズ」へ移行したことを意味する。


同時に、それは別の圧力も生む。投資ファンドは、いつか必ず「次の出口」を求める。そして、次に売るときは、より高い価格でなければならない。そのために必要とされるのは、分かりやすい成長ストーリーである。店舗数。売上規模。出店スピード。こうした指標は、短期間で“絵”を描きやすい。しかし、ハンバーガーチェーンにおいて、急成長は常に諸刃の剣である。出店をストレッチさせれば、人材、教育、オペレーション、メンテナンスのすべてが薄くなる。その延長線上にあるのが、無理な立地への出店だ。


成長を急ぐ局面では、本来であれば見送るべき立地にも、手を伸ばしてしまいがちである。だが、バーガーキングは過去、日本市場で店舗撤退を経験している。立地とオペレーションが噛み合わなかった結果、勢いを失った歴史がある。もし今回、「高値で掴んだ投資」を正当化するために、無理な成長、無理な出店、無理な拡大を選ぶことになれば、同じ轍を踏む可能性は否定できない。急拡大の局面は、強さを生むと同時に、脆さも生む。そして、投資ファンド傘下に入った今のバーガーキングは、その試練を最も厳しく突きつけられる立場にある。


ドムドムは真逆である。数を追わず、ファンを育てる

バーガーキングの対照として語りやすいのが、ドムドムである。MBOで資金を確保し、赤字から黒字へ回復したという文脈の上に、ドムドムは「数を追わない」戦略を乗せている。ドミナントで一気に取りにいくのではなく、ファンが支持する店づくりを地道に積み上げる。SNS上の熱量も高い。


このモデルはスケールしにくい一方、景気やトレンドの波に対して強い。ハンバーガー業界が「役割の競争」なら、ドムドムは小さくても固い役割をすでに持っている。


そして核心へ。ロッテリアは「残すブランド」ではなかった

ここで、ゼッテリアに話を戻す。


ゼッテリアは、公式サイト上で「メイン商品である絶品バーガー」と、「気軽に楽しめるお店という意味を込めたカフェテリア」を組み合わせて生まれたブランドだと説明されている。


この定義は重要である。ゼッテリアは、ハンバーガーの味だけでなく、「店の使われ方」まで含めて再設計した業態である。照明、内装、席の取り方、滞在のしやすさ。いわば「バーガーとカフェの中間」を狙う設計思想が前提にある。


そして2026年1月21日、ゼンショーホールディングスがロッテリア国内全店を閉店し、2026年3月をめどにゼッテリアへ順次転換する方針が報じられた。ブランドを統合し、原材料の仕入れや店舗運営の効率を高める狙いだという。


これは決定的である。ゼッテリアは「試験導入」ではなく、ゼンショーがハンバーガー市場で戦うために選んだ器になった。ロッテリアは、残すブランドではなかった。


ゼンショーは何を持ち込むのか。仕入力と商品開発である

ゼンショーの強みは、言うまでもなくスケールである。すき家は牛丼で首位を独走し、はま寿司はくら寿司を逆転し回転寿司業界で2位のポジションに食い込む。


ここでの武器は、調達と商品開発を含むオペレーションの総合力だ。この強みがゼッテリアに持ち込まれるとき、最も分かりやすいのは「原材料」と「メニュー開発」である。例えば、牛すき焼き系のメニューを想起させる企画は、すき家が積み上げてきた知見と親和性が高い。


ただし、ここで単純に「価格で勝つ」戦略を取れるかと言えば、難しい。価格と立地の王者は、すでにマクドナルドが押さえている。売上規模と店舗網が別次元である以上、同じ土俵での真っ向勝負は合理的ではない。


勝ち筋はフードコート。しかし、いまは最も厳しい戦場でもある

ここまでを踏まえると、ハンバーガー業界の主戦場がどこにあるかは見えてくる。それがフードコートである。


ただし、はっきりさせておきたい。フードコートは「勝ち筋」ではない。最も競争が激しい戦場である。フードコートは、もはや「安く早く食べる場所」ではない。ショッピングモールの集客力は依然として強く、家族連れ、学生、シニア、そして買い物の合間に短時間で食事を済ませたい層を束ねている。ハンバーガーは世代をまたぐ最大公約数の商品であり、フードコートとの相性が良いのは事実だ。


実際、マクドナルドは国内約3,000店舗という網を背景に、フードコートの代名詞的存在として君臨している。モスバーガーも一定の存在感を保ち、バーガーキングも大型商業施設への出店を加速させている。つまりフードコートは、「誰が勝つか」を競う場所ではない。「誰が、どの役割を担うか」が最も残酷に可視化される場所になった。


ゼッテリアの勝負所は「カフェ需要」ではない

では、ゼッテリアはどこに活路を見いだすのか。


答えは、単純な「カフェ需要」ではない。マクドナルドはすでに、ハンバーガーとカフェの融合を全国規模で実装している。電源、Wi-Fi、作業客の取り込み。「バーガー×カフェ」という発想自体は、もはや新しくない。


一方で、カフェ業界には別の変化が起きている。コーヒー豆価格の上昇を背景に値上げが続き、回転率を重視した設計が増えた。席は狭くなり、短時間利用を前提とした店づくりも珍しくない。その結果、仕事や作業、子連れの休憩といった用途において、「居場所としてのカフェ」は使いにくくなっている。


ここで問われるのは、「カフェになるかどうか」ではない。マクドナルドが合理化しきれない“使われ方”を、どこまで引き受けられるかである。その文脈で、ゼッテリアの定義が浮かび上がる。「絶品バーガー」と「カフェテリア」の組み合わせは、ファストフードでも、カフェでもない、軽食と休憩の中間に居場所をつくろうとする発想だ。


ゼッテリアが取りにいくべきなのは、安さでも、ボリュームでもない。時間価値である。短時間でもいい。次の予定までの隙間でもいい。PC作業でも、親子連れの休憩でもいい。バーガーとコーヒーを起点に、「長居を推奨しないが、排除もしない」その曖昧な時間を、どこまで許容できるかが問われている。


「カフェコンビ」は弱い。しかし、ここからが本当の勝負だ

現在、ゼッテリアは「カフェコンビ」というセットメニューを打ち出している。バーガーとドリンクを組み合わせ、食事と休憩の中間需要を取りにいく狙いは分かりやすい。ただし、率直に言えば、現時点ではまだ弱い。提案として理解はできるが、「それならマクドナルドでいい」と言われかねない水準にとどまっている。


だからこそ、ここからが本当の勝負になる。ゼッテリアに問われているのは、需要を奪えるかではなく、需要を創出できるかである。マクドナルドにできないメニュー提案はあるか

鍵を握るのは、ゼンショーホールディングスの存在だ。ゼンショーは、すき家、はま寿司、ビッグボーイ、ココスといった業態を束ねてきた。共通するのは、低価格で、一定以上の品質を成立させる戦略である。牛肉、米、ソース、サイドメニュー。調達、加工、物流、メニュー設計。これらをスケールで成立させる力は、国内でも突出している。


そして振り返れば、すき家は牛丼業界で首位を奪い、はま寿司は回転寿司で業界上位に食い込んだ。ゼンショーが得意としてきたのは、後発で参入し、業界トップの“隙”を突く戦略である。この戦い方は、ハンバーガー業界でも応用できる余地がある。マクドナルドにできないメニュー提案。しかし、日常使いはできる。しかも、価格に無理がない。ゼッテリアにとって、カフェコンビはゴールではない。入口にすぎない。


結論。ハンバーガー業界は「役割の競争」に完全に入った

いま、ハンバーガー業界は「強さの競争」ではない。どんな時間を提供するブランドなのかという、役割の競争に入っている。


マクドナルドは日常のインフラ。

モスは価値に納得して選ばれる存在。

バーガーキングは分かりやすい尖り。

ドムドムハンバーガーは物語と熱量。


では、ゼッテリアは何を担うのか。マクドナルドが合理化しきれない時間を、ゼッテリアは引き受けられるのか。ゼンショーは器を決めた。次に問われるのは、器の中身である。



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