「背徳グルメ」が2026年に再ブーム。「背徳鍋」に見る人気の理由と2019年との違い

更新日:31 分前
三輪大輔|外食ビジネスアナリスト
2026年の外食シーンでは、「背徳」をテーマにした商品やフェアが相次ぎました。肉やチーズ、にんにく、背脂などを豪快に使い、「今日は思い切って食べたい」という気分を刺激する商品が目立っています。
そして今回、ぐるなびが発表した「トレンド鍋2026」にも「背徳鍋」が選ばれました。健康志向が定着し、物価高によって節約意識も高まる中、なぜ今、あえてカロリーや罪悪感を気にせず楽しむ「背徳」が支持されているのでしょうか。
実は「背徳」が注目されるのは、今回が初めてではありません。2019年から2020年にかけても、「悪魔メシ」「悪魔的」といった言葉が広がり、高カロリーで罪深い料理が大きな話題になりました。2026年は、いわば“第二次背徳ブーム”といえそうです。
2026年に広がった「背徳」
今年は外食やコンビニなどで、「背徳」を前面に押し出した商品が相次ぎました。
例えば、しゃぶ葉では「しゃぶ葉背徳研究所」を立ち上げ、「背徳 至高のグルメフェア」を期間限定で開催。濃厚な豚スープやにんにく、太麺などを組み合わせ、背徳ラーメンや背徳豚丼といった楽しみ方まで提案しました。ファミリーマートでも「背徳のチーズコンビニ飯」を展開するなど、「背徳」という言葉が一部の商品名にとどまらず、一つの消費テーマとして広がっています。
そして、その流れが鍋にも及びました。背徳鍋の特徴は、単に量が多い、高カロリーということではありません。肉やチーズ、にんにく、背脂などを大胆に組み合わせ、「食べてはいけないと思いながらも食べたい」という気持ちそのものを楽しむところにあります。
なぜ消費者は「背徳」に惹かれるのか
背景にあるのは、日常における「節制」の反動です。物価高や健康志向が続く中、普段の食事では価格やカロリーを意識する場面が増えています。だからこそ、「今日は我慢しない」「たまには好きなものを思い切って食べたい」という気持ちも生まれます。
背徳グルメは、そうした気分に応える、ご褒美感や非日常感のある食体験といえます。重要なのは、消費者が買っているのが料理だけではないということです。「今日はカロリーを忘れよう」「みんなでこれを食べてみよう」という体験まで含めて楽しんでいます。
普段は節約していても、外食するときには少し贅沢をする。健康を意識していても、たまには思い切って好きなものを食べる。こうしたメリハリのある消費とも、「背徳」は相性がいいのです。
飲食店にとっても「背徳」はメリットが大きい
背徳グルメが広がる理由は、消費者心理だけではありません。飲食店側から見ても、非常に使いやすいテーマです。
一つ目は、価格を上げられる価値をつくりやすいことです。原材料費や人件費が上昇する中、飲食店では値上げが相次いでいます。しかし、単純に価格を上げれば、お客様には「同じものが高くなった」と受け取られてしまいます。
一方、背徳感やご褒美感、非日常感を加えることができれば、「ちょっと高くても食べてみたい」と思ってもらいやすくなります。単純に価格を上げるのではなく、価格を上げられる価値をつくれるわけです。
二つ目は、原価をコントロールしやすいことです。すべてを高価な食材にする必要はありません。にんにくや背脂、チーズなどを組み合わせ、肉などの高原価な食材を目立つように使えば、原価を抑えながら豪華さやインパクトを演出できます。
そして三つ目が、集客です。背徳グルメは写真や動画との相性がよく、「一度食べてみたい」「誰かと一緒に食べたい」「写真を撮りたい」「SNSでシェアしたい」といった複数の来店動機をつくることができます。つまり背徳は、飲食店にとって「売価」「原価」「客数」の三つに働きかける可能性があるのです。
2019年は「悪魔メシ」がブームに
ただ、こうした「罪深い食」を楽しむ動きは、2026年に突然始まったものではありません。
2019年頃には、「悪魔メシ」「悪魔的」といった言葉が目立つようになりました。高カロリーで、やみつきになり、食べてはいけないと思いながらも食べたくなる。そうした“罪深いおいしさ”を楽しむエンタメ性の強いブームでした。SNSでの話題性や、見た目のインパクトも大きな特徴でした。そして2019年から2020年にかけて、その流れは鍋にも広がっています。
当時が「罪深いものを食べる楽しさ」を前面に出したブームだったとすれば、2026年は少し事情が違います。
2026年は「第二次背徳ブーム」か
今回の背徳ブームでは、ご褒美感や非日常感に加えて、飲食店側が「背徳」を商品価値として積極的に取り込んでいる点が特徴です。
値上げをしたい。しかし、お客様の納得も必要になる。原材料費は抑えたい。しかし、商品を貧弱には見せたくない。そして、新しい来店理由もつくりたい。現在の外食業界が抱えるこうした課題と、「背徳」というテーマは非常に相性がいいのです。
消費者にとっては、「今日は我慢せず楽しみたい」というご褒美消費。飲食店にとっては、価格、原価、集客に働きかける商品戦略。この二つが重なっていることが、今回のブームの面白さではないでしょうか。2019年の背徳ブームが「罪深いものを食べる楽しさ」だったとすれば、2026年の第二次ブームは、その楽しさを飲食店側が商品価値として取り込んでいる点に特徴があります。
「背徳」という言葉そのものの流行はいずれ落ち着くかもしれません。しかし、「たまには我慢せず楽しみたい」「せっかく外食するなら普段とは違うものを食べたい」というニーズはなくなりません。背徳鍋が今年のトレンド鍋に選ばれたことは、その象徴ともいえます。今回の背徳ブームは一過性で終わるというより、今後も商品や業態を変えながら、外食の定番的な楽しみ方の一つとして根付いていく可能性があります。


