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【飲食経営者の肖像】「風雲児」の仮面を脱いだ戦略家――株式会社Human Qreate・米田拓史氏の正体

  • 執筆者の写真: 三輪大輔
    三輪大輔
  • 1月15日
  • 読了時間: 4分

更新日:2 日前

「風雲児」という先入観、その先にあったもの

ひねりがないと言われてしまいそうだが、時代を切り開いていくその様子を見ていると、やはり武将に例えたくなる。例えば、織田信長のような存在だと言えばよいのだろうか。メディアを通して見る米田氏は、いかにも「風雲児」という言葉が似合う人物である。実際、将軍の装いでメディアに登場したこともあり、その演出も含めて強烈な印象を残してきた。


「風雲児」という言葉には、どこか荒々しく、型破りな人物像がつきまとう。私自身も取材前までは、勢いだけで突き進む若き経営者という先入観を抱いていた。しかし、実際に対峙して見えてきた姿は、そのイメージとはまったく異なるものだった。その人物こそ、「一石三鳥」グループを展開する株式会社Human Qreate代表、米田拓史氏である。




緻密な戦略と、ITベンチャーさながらのスピード感

米田氏は、そのスマートなビジュアルを武器に、自らが広告塔となり、SNSを駆使して強い影響力を持つ。また、クラウドファンディングでは5,000万円を超える支援を集めるなど、外から見れば“チャラい企業”と捉えられる向きもある。


しかし、実態はまったく異なる。緻密な戦略のもとでブランディングとマーケティングを設計し、着実に企業を成長へと導いてきた。その成果を社員へ還元する仕組みづくりにまで踏み込んでいる点は、見過ごされがちだが重要な要素である。


東洋経済オンラインや『月刊飲食店経営2026年2月号』など、これまでに3回取材を重ねてきたが、その「戦略家」としての印象は、回を追うごとに強まっている。米田氏は自社のノウハウを惜しみなく開示するが、それは自らの戦略に対する絶対的な自信の表れだろう。話を聞いていると、まるで最先端のITベンチャー経営者と対話しているかのような感覚に陥る。


コロナ禍が終わらせた、従来型の外食経営

コロナ禍以降、飲食業界には大きな地殻変動が起きた。単に店舗数を追い、規模拡大を是とする従来の経営スタイルは、すでに終わりを告げている。今、求められているのは、「一つ一つの店舗に、いかに独自の価値を持たせるか」という視点である。


その中で、「一石三鳥」が放つ存在価値は大きい。これは偶然の産物ではなく、米田氏の鋭いマーケティング感覚によって導き出された、一つの明確な答えだといえる。


「一石三鳥」という、同時成立の設計思想

「一石三鳥」には、三つの価値がある。一つ目は、お客様に、これまでにない体験価値を提供すること。二つ目は、スタッフがプロとして誇りを持ち、正当な対価を得られる環境をつくること。そして三つ目は、企業として利益を生み、その利益を次の投資へと回していくことである。


重要なのは、これら三つの価値が順番に生まれるのではなく、同時に成立する状態をつくることにある。その同時成立を、感覚や勢いではなく、設計によって実現している点こそが、「一石三鳥」の根底にある思想だ。


その起点となるのが、マーケティングである。集客や価格設定を感覚論に委ねるのではなく、狙いどおりの結果を生むよう逆算し、まず利益がきちんと残る構造をつくる。その営業利益こそが、すべての原資となる。次に、その利益を人に還元する。同社では、新卒の初任給を30万円、アルバイトの時給を1,500円に設定している。外食業界の中でも比較的高い水準で人材を迎え入れることで、志のある人が集まり、プロとして現場に立てる環境が整っていく。ただし、待遇だけを引き上げても、現場は安定しない。勝てる設計があるからこそ、人は力を発揮でき、現場の再現性と質が高まっていく。そうした考え方が、制度設計の根底にある。


その環境で働くスタッフの姿勢や熱量は、自然とお客様の体験へと反映される。料理やサービスにとどまらず、店全体の一体感や空気感が評価され、それが顧客満足につながっていく。そして、その体験がSNSなどを通じて広がり、次の集客と利益を生み、さらに次の投資へと循環していく。利益、人、顧客。この三つが、設計された形で回り続けていること。それこそが、Human Qreateの成長モデルの特徴である。


よそ者、若者、変わり者が時代を変える

よそ者、若者、そして変わり者が時代を変える。組織論において語られてきたこの条件に、米田氏は極めてよく当てはまる存在だといっていいだろう。


米田氏はまだ33歳である。すでに経営者として一つの到達点に立っているようにも見えるが、彼が視線を向けているのは、その先に広がる世界だ。これから、どのような地平を切り拓いていくのか。期待せずにはいられない。


楽しく、学びがあり、そして新しい時代の息吹を感じられる。取材する側にとっても、米田氏の話を聞く時間は、まさに「一石三鳥」の価値を持つものであった。




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