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【飲食経営者の肖像】効率やハックを超えた「誠実さ」の力。ロイヤルホールディングス・阿部社長が語る、100年企業を目指す矜持

  • 執筆者の写真: 三輪大輔
    三輪大輔
  • 3月13日
  • 読了時間: 3分

更新日:5 時間前

                         三輪大輔|外食ビジネスアナリスト


応接室で紅茶を飲むような、やわらかな時間

招かれた家の応接室で、紅茶を飲みながら話をしている。そんな錯覚を覚えた。心がホッとするような、やわらかな時間が流れていく。どこか、仲睦まじい家庭の話を聞いているような温かな雰囲気だった。例えるのなら親戚のおじさんの話を聞いているような感覚に近い。構える必要がなく、言葉がすっと入ってくる。


ロイヤルホールディングスの阿部さんは、そうした空気を自然にまとった人物だ。その温かさは、単なる人柄ではない。「ロイヤルホスト」というブランドが持つ価値観を、そのまま体現しているように映る。実際、阿部社長は現場の店長を経験し、そこから経営の道を歩んできた。店舗で積み重ねた日々が、今の経営判断の礎になるのと同時に、言葉の重みと、にじみ出る安心感へとつながっているのだろう。


ロイヤルホールディングス阿部社長

真面目、誠実、正直。いずれも使い古された言葉である。コストパフォーマンスやタイムパフォーマンスが重視される現代では、どこか時代遅れで、効率の悪いものとして扱われがちだ。それよりも、いかに損をせず、賢く立ち回るか。そうしたコツやノウハウは「ハック」として、SNSに蔓延る。それを活用しない者は、愚直で非効率な存在と見なされかねない。


実直さを貫くことで成し遂げた、業績のV字回復

それでも、である。手垢のついた言葉だからこそ、そこには本質がある。そして、その価値はいまなお失われていない。実際、ロイヤルホールディングスは、それを実直に追い求めることで、業績をV字回復へと導いている。その陣頭に立つのが、他ならぬ阿部さんだ。


阿部さんには、月刊『飲食店経営』4月号の表紙を飾っていただいた。しかし、あまりにも示唆に富む内容だったため、5月号にもインタビューを掲載している。その中で、特に印象に残った言葉がある。 「皆さんがいるから、この事業が成り立っているんだということを、正しく伝えていきたいと思っています」 ここでいう「皆さん」とは、現場で働く従業員一人一人のことである。その考えを体現する取り組みが「Rセッション」だ。現在は全国約30カ所で、各回1,000人規模のスタッフを集め、事業会社の社長や経営幹部とともに対話を重ねている。


サステナビリティの取り組みについて、ロイヤルグループとしての方針を伝えるだけではない。現場の声を直接聞きながら、具体的なアクションをともに考えていく場となっている。多くの企業が、対面でのワンオンワンの重要性を掲げている。しかし、多店舗・大規模組織において、それを全員に対して実施することは現実的ではない。物理的な制約が存在するからだ。ロイヤルホールディングスは、その限界を前提にしながら、対話の思想を組織全体に行き渡らせる仕組みを構築している。Rセッションは、その象徴といえるだろう。こうした積み重ねが、結果として業績の回復にもつながっている。


100年企業を見据えて。積み重なる「記憶」という価値

「ロイヤルホスト」は、ファミリーレストラン御三家として、日本の外食産業を切り開いてきた歴史を持つ。しかし、御三家の一角である「すかいらーく」はブランドとしての看板を下ろし、「デニーズ」も経営母体を変えながら歩みを続けている。その中で、ロイヤルホストは、今もその名を掲げ続けており、そこには外食文化をつくってきたという矜持が、確かに息づく。


その矜持の先に見据えているのが、100年企業である。個人的にも、「ロイヤルホスト 〜息子と僕と、この頃、はま寿司〜というタイトルのエッセイでも書いたように、ロイヤルホストにまつわる思い出は多い。そうした温かな時間の積み重ねこそが、店の価値を形づくっていくのだと思う。100年企業となったとき、自分がその場に立ち会えるかはわからない。それでも、この先も誰かにとっての「特別な場所」であり続ける。そうした記憶は、これからも静かに、そして確かに積み重なっていくのだろう。


 
 
 

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