【飲食経営者の肖像】「雇用の革命」で国境を越える。世界80億人を舞台にする型無・矢野潤一郎氏の挑戦
- 三輪大輔

- 2025年8月20日
- 読了時間: 3分
更新日:2025年12月26日
川崎に卓越した経営者がいる——。
型無の矢野潤一郎さんの名前は、そうした噂とともに以前から耳に届いていた。アジアへも早くから進出しているらしいという話を添えて聞いたのは、もう10年近く前になるだろう。当時、日本の飲食企業が、ましては中小の飲食店が海外展開に積極的でなかったことを思えば、その挑戦のスケールは際立っていた。
飲食店経営9月号の取材でお話を伺ったとき、噂は確信に変わった。矢野さんの経営はスケールが大きく、国籍という境界線に頼らない。そうした考えは、幼少期からの経験に根づいている。

原点はカナダ時代 国境を越える発想の源泉
矢野さんが幼稚園の頃、父親が「カナダに住みたい」という夢を抱き、6年をかけて永住権を取得。そして中学1年が終わる頃、家族はカナダ・バンクーバーに移り住んだ。当時、二世、三世のアジア系こそいたが、日本人はほとんどいない環境である。その中で過ごした多感な時期は、世界にはさまざまな考え方や宗教観があることを肌で知る貴重な時間になった。
その経験が、現在の経営にも大きな影響を与えている。実際、矢野さんも「日本の1億2000万人の中だけで戦うよりも、80億人がいる世界を舞台にしたい。創業時からその思いがありました」と話す。
人財教育と高給与を両立させる「雇用改革」
型無の挑戦を支えているのは、「雇用の革命」と「おもてなしの輸出」という二つの理念だ。特に「雇用の革命」は、日本の外食企業が海外で存在意義を示す在り方として非常に興味深い。同社は開発途上国への出店を進めるだけでなく、現地の飲食店と比べて圧倒的に高い給与を支払うことを目指している。給与水準が上がれば、従業員は家族に仕送りをし、生活環境を大きく改善することができるだろう。
給与を高める仕組みを支えているのが、人財教育に他ならない。同社の店舗ではスタッフのオペレーション能力を徹底的に磨き、他店の半分の人員で店舗を回せる体制が整う。他店が10人で営業しているところを5人で運営できれば、単純計算で給与は倍にできる。売上が同じであっても、高い給与を実現できる構造が生まれ、結果として優秀な人材が集まるサイクルが確立しているのだ。
こうした取り組みの積み重ねが、会社に対する誇りや帰属意識を育て、人種を越えた理念の共有に結びつく。さらに現地の飲食業界に対してもポジティブな影響を与え、飲食業を「夢のある職業」へと押し上げる力になっているのは間違いない。
国籍も人種も越えて続く、型無の快進撃
海外展開や外国人財の活用というと、低賃金で人件費を抑え、利益を確保するという文脈で語られがちである。しかし、型無の考え方は違う。そのアプローチが成立するのは、日本人と外国人を分け隔てない環境を前提としているからだ。人はつい「〇〇人だから」と枠にはめて相手を捉えてしまう。しかし、それは思考停止に近い。矢野さん自身、肌の色や人種によって偏見を持つことがない。むしろ、多様性を前提にした上で「どうすれば理想を実現できるのか」を問い続けてきた。夢を夢のまま終わらせない姿勢が、型無を前人未踏の領域へと導いてきたといっていいだろう。
矢野イズムに共鳴する人材も育ちつつある。カンボジアでは、2015年の進出当初から働くメンバーが現在は支配人として3店舗を統括。矢野さんの精神を受け継ぎ、次の10年を支える存在になっている。もしかすると、型無のDNAはこれからさらに世界へと広がっていくのかもしれない。会話は言語だけでするものではない。料理やサービスといった非言語の領域でも人は深くつながれる。その感覚を理解しているからこそ、型無の挑戦は国境を越えていく。
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