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うどん市場はなぜ激変しているのか?資さんうどん・丸亀製麺・山下本気うどんから読み解く「場所の取り合い」の裏側

  • 執筆者の写真: 三輪大輔
    三輪大輔
  • 6月9日
  • 読了時間: 6分

更新日:3 日前

                         三輪大輔|外食ビジネスアナリスト


ここ最近、うどん市場の動きが激しい。長らく全国のうどんチェーンを牽引してきたのは、讃岐うどんだった。丸亀製麺とはなまるうどんが、コシのある麺、セルフ式、手頃な価格という価値を広げ、うどんを日常外食の代表的な選択肢に押し上げてきた。


しかし、ここに来て、新しい動きが目立っている。北九州発の「資さんうどん」が関東で存在感を高め、「焼肉きんぐ」などを展開する物語コーポレーションも「肉讃岐 もっちりうどん源次郎」でうどん業態に参入した。都心では「山下本気うどん」のような若者向けの創作うどんも支持を広げ、原宿には博多うどんの「因幡うどん」も登場している。今、起きているのは、単なるうどんブームではない。うどん市場の多軸化である。


うどんは「安い」だけでは語れない

うどんが注目される背景には、物価高と高齢化がある。多くの飲食店で値上げが行われる中で、うどんは今も「手頃で、軽く、食べやすい」日常食としての強さを持つ。ラーメンやハンバーガー、ファミリーレストランの客単価が上がる中で、うどんは比較的、価格への納得感を作りやすい。


さらに、高齢化との相性もある。うどんは高齢者や子どもにも受け入れられやすい。温かく、軽く、食べやすい。量の調整もしやすい。一方で、讃岐うどん特有の強いコシは、人によっては食べにくさにつながる場合もある。そこで、やわらかい麺とだしを特徴とするうどんにも、新たな余地が生まれている。


ただし、うどんは価格で大きな差をつけにくい商品でもある。一杯2000円、3000円のうどんが日常的に広がるとは考えにくい。消費者の中には、うどんは手頃に食べるものという感覚が強い。だからこそ、外食企業にとって重要になるのは、単なる商品開発だけではない。どこで売るのか。誰に売るのか。どんな食事体験として売るのか。ここに、いまのうどん市場を見る面白さがある。


ロードサイドでは「うどんファミレス化」が進む

まず注目したいのが、ロードサイドである。ロードサイド型のうどんは、昼食だけを取りに行く業態ではない。車で来る。家族で来る。高齢者も子どもも来る。昼だけでなく、夜にも使われる。そうなると、うどん単品だけでは弱い。


そこで重要になるのが、丼、肉、天ぷら、甘味、定食感である。資さんうどんは、まさにこの領域で強い。うどんだけでなく、丼物やおでん、ぼた餅まで含めて、ひとつの食事の場になっている。北九州の日常食文化をそのまま持ち込んでいる点に強みがある。


物語コーポレーションの「肉讃岐 もっちりうどん源次郎」も、ロードサイド型のうどん業態として見ると分かりやすい。これは高齢者向けのやさしいうどんというより、どちらかといえばガッツリ系の需要を狙う存在だろう。肉、満腹感、家族利用、郊外型の食事需要。そう考えると、山田うどん食堂に近い領域を、物語コーポレーション流に再編集しているようにも見える。


うどん市場

ロードサイドのうどんは、もはや「軽く食べるもの」だけではない。家族で食事をする場所であり、満腹になれる場所であり、日常の外食を支える場所になっている。


駅前では丸亀製麺とはなまるうどんが強い

一方で、駅前や生活動線では、丸亀製麺とはなまるうどんが依然として強い。ここで求められるのは、早さ、手頃さ、入りやすさである。昼食を短時間で済ませたい。移動の途中で食べたい。仕事帰りにさっと寄りたい。そうした需要に対して、セルフ式の讃岐うどんは非常に相性が良い。丸亀製麺は、店内製麺や調理のライブ感によって、単なる低価格チェーンではない価値を作ってきた。はなまるうどんは、より日常的で手頃な選択肢として支持を広げてきた。


うどん市場

この領域は、すでに成熟している。だから新規参入組が真正面から駅前型のセルフ讃岐に挑むのは簡単ではない。丸亀製麺とはなまるうどんが築いた市場は、それだけ強固である。ただし、成熟しているからこそ、別の場所にチャンスが生まれているともいえる。駅前で勝つのではなく、ロードサイドで勝つ。あるいは、都心や繁華街で違う使われ方を狙う。


うどん市場の多軸化は、丸亀製麺やはなまるうどんの強さを否定するものではない。むしろ、両社がうどんを全国的な日常外食に押し上げたからこそ、その外側に新しい競争軸が生まれているのである。


フードコートでは「最大公約数の外食」になる

ブログで考えるなら、フードコートも外せない。うどんはフードコートとの相性が非常に高い。子どもも食べられる。高齢者も選びやすい。親も安心して頼める。揚げ物やご飯物を組み合わせれば満腹感も出せる。ラーメンほど重くなく、ハンバーガーほどジャンキーに見えにくい。


商業施設において、うどんは「最大公約数の外食」になりやすい。フードコートでは、それぞれの家族が別々のものを食べられる。その中で、うどんは非常に選ばれやすい。子どもに食べさせやすく、親世代も抵抗が少ない。買い物の途中で食べる軽食にもなり、しっかりした昼食にもなる。


この領域でも丸亀製麺の存在感は大きい。フードコートでうどんを選ぶという行動は、多くの消費者にとってすでに自然なものになっている。ロードサイドが「家族で食事をする場」なら、フードコートは「家族の中で誰も反対しにくい選択肢」である。この違いは大きい。


繁華街・都心では、うどんがコンテンツになる

さらに、繁華街や都心では、うどんの意味がまた変わる。ここで重要になるのは、手頃さだけではない。話題性、地域性、見た目、若者への訴求、夜利用。うどんが単なる日常食ではなく、外食コンテンツとして再編集される。


代表的なのが、山下本気うどんである。白い明太チーズクリームうどんのようなメニューは、従来のうどんとは見え方が違う。若者に向けた創作うどんであり、SNS時代のうどんでもある。


うどん市場

原宿に出店した因幡うどんも、都心における地域うどんの展開として見ることができる。資さんうどんがロードサイドや生活圏で存在感を高める一方、因幡うどんは博多の食文化を都心の商業施設に持ち込む存在といえる。


繁華街や都心では、うどんは「さっと食べるもの」だけではない。誰かと行く理由になる。写真を撮る理由になる。地域性を味わう理由になる。夜の食事や締めの選択肢にもなる。

同じうどんでも、場所が変わると、求められる役割は大きく変わる。


うどんは、場所によって別の外食になる

こうして見ると、いまのうどん市場は「讃岐か、博多か」だけでは語れない。ロードサイドでは、うどんは家族で使える食事の場になる。駅前では、短時間で食べられる日常食になる。フードコートでは、家族の最大公約数になる。繁華街や都心では、若者や観光客に向けたコンテンツになる。同じうどんでも、場所によってまったく違う外食になるのである。だからこそ、今の競争は商品だけではなく、立地の競争でもある。価格で大きな差をつけにくいからこそ、どの場所で、誰に、どんな体験として売るのかが問われる。


讃岐うどんが築いた時代の次に来ているのは、うどん市場の多軸化だ。資さんうどんの好調は、その象徴の一つにすぎない。物語コーポレーションの参入、山下本気うどんの都市型展開、フードコートでの根強い強さ。これらは全て、うどんがまだ外食市場の中で開拓余地を持っていることを示している。


うどんは、安いから選ばれるだけではない。食べやすいから選ばれる。家族で使えるから選ばれる。短時間で済ませられるから選ばれる。場所によって、まったく違う価値を発揮できるから選ばれる。令和のうどん市場で始まっているのは、味の競争であると同時に、場所の取り合いである。


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