セブン、ローソン、ファミマのコンビニ3社がおにぎり値下げ コメ価格下落は外食の値付けをどう変える?

ローソンは9月29日から、全国の店舗で「手巻おにぎり」全品を一律10円値下げする。セブン‐イレブンでは9月8日から「手巻おにぎり 炭火焼銀しゃけ」「手巻おにぎり 具たっぷり辛子明太子」の2商品を値下げ。ファミリーマートも9月22日から「直巻おむすび」4種類を11円値下げした。

ファミリーマートは、その背景として「米の市場価格の低下」を挙げている。実際、スーパーの店頭でもコメ価格は下がり始めている。農林水産省によると、2026年7月のコメの小売価格は5kgあたり平均3370円で、前月から219円下がった。
では、コメが安くなり、コンビニ各社もおにぎりを値下げするなか、なぜ価格は以前の水準まで戻らないのだろうか。そこには、「コメ価格が下がった」という事実だけでは見えてこない、おにぎりのコスト構造がある。さらに今回の値下げを追っていくと、もう一つ興味深い動きが見えてくる。コンビニの「客数」をめぐる競争である。
コメは下がった。しかし、まだ高い
一つ目の理由は、コメ価格が下がっているといっても、高騰前の水準に戻ったわけではないことだ。農林水産省によると、2026年7月に米穀販売事業者が中食・外食事業者などへ販売した精米の価格は、前年同月比112.6%だった。つまり、足元では価格が下落していても、前年同月と比べればまだ12.6%高い。
ファミリーマートが「米の市場価格の低下」を理由の一つとして値下げに動いたこととも矛盾しない。価格がピークから下がったことで、販売価格を引き下げる余地は生まれた。しかし、コメそのものが以前の価格に戻ったわけではない。「値下げできるようになった」ことと、「値上げ前の価格まで戻せる」ことは別なのである。
おにぎりは「コメ」だけでできているわけではない
二つ目の理由は、コメ以外のコストだ。おにぎりにはコメだけではなく、海苔や鮭、明太子、昆布、ツナなどの具材が必要になる。さらに包材、人件費、物流費、光熱費などもかかる。
中でも、おにぎりと関係が深い海苔は大きく値上がりしている。海苔1枚あたりの全国平均単価は、2020年度の10.48円から2025年度には18.96円へ上昇した。5年間で約1.8倍である。コメ価格だけが下がっても、こうしたコストまで同じように下がるわけではない。
消費者から見れば「おにぎり=コメ」という印象が強い。しかし企業側から見れば、複数の原材料に加え、人件費や物流費などを積み上げてつくる商品だ。だからこそ、コメ価格が下がったからといって、おにぎりの価格をそのまま以前の水準へ戻すのは難しい。
それでも、なぜコンビニは値下げするのか
それでも各社がおにぎりの値下げに動くのは、来店客数を増やしたいという事情もあるだろう。
日本フランチャイズチェーン協会によると、2026年8月のコンビニ大手の既存店売上高は前年同月比0.3%増だった。しかし、その中身を見ると違った景色が見えてくる。既存店客数は前年同月比1.7%減となり、14カ月連続で前年を下回った。一方、客単価は2.0%増えている。つまり、一人あたりの購入金額が増えることで売上を維持している一方、店を訪れる客そのものは減り続けている。
物価上昇によって商品単価が上がれば、客単価は伸びやすい。しかし、客数の減少が続けば、いずれ売上の維持も難しくなる。そのため各社にとっては、客単価を上げるだけでなく、来店頻度をどう取り戻すかが重要になる。
今回のおにぎり値下げは、そのための施策の一つと見ることができる。コメ価格の下落によって生まれた値下げ余地を、客数回復に使おうとしているのである。
値下げする商品として、おにぎりが選ばれた意味
では、なぜ値下げする商品として、おにぎりが選ばれたのか。
コンビニには弁当、総菜、パン、麺類、飲料、菓子など多くの商品がある。その中でおにぎりは、幅広い世代が購入し、朝食、昼食、間食など時間帯を問わず需要がある。単品でも購入される一方、飲料や総菜、カップ麺などとの併買も期待できる。つまり、おにぎりには商品単体の売上だけでなく、来店そのものを生み出す役割がある。
全ての商品を値下げすれば収益を圧迫する。しかし、購入頻度が高く、来店のきっかけになりやすい商品を選んで価格を下げれば、店舗全体では別の効果が期待できる。おにぎりだけを見れば利益が減っても、それを目的に来店した客がほかの商品も購入すれば、客数や店舗全体の売上につながる。
今回の値下げは、「原価が下がったから、その分を価格に反映した」というだけではない。おにぎりを、客数を取り戻すための集客商品として使う。そこに今回の値下げのもう一つの意味がある。
次は牛丼、カレー、回転寿司なのか
そして、この動きはコンビニだけの問題ではない。外食産業にも、コメを大量に使用する業態は多い。牛丼、カレー、定食、丼、回転寿司などが代表的だ。コメ価格がさらに下がれば、こうした業態でも値下げが始まるのだろうか。
ここでも、おにぎりと同じように考える必要がある。牛丼には牛肉、カレーには肉や野菜、ルー、回転寿司には魚介類や海苔などが必要になる。さらに人件費、物流費、光熱費、家賃などもかかる。そのため、コメ価格が下がった分だけメニュー価格を引き下げるという単純な動きにはなりにくい。
ただし、コメの調達コストが下がれば、企業の値付けに新たな余地が生まれる。その余地を利益回復に使うのか。商品の量や品質を高めるのか。クーポンや期間限定キャンペーンに回すのか。それとも、来店頻度の高い商品を選んで値下げするのか。判断は企業によって分かれるだろう。
コメ価格下落で、外食も値下げに動くのか
今回の値下げは、原材料価格が下がったから商品価格も下がった、という単純な話ではない。原価が下がった余地を、利益ではなく「来店動機」に振り向けた価格戦略と見ることができる。
では、同じようにコメを大量に使う外食では、今後値下げが広がるのだろうか。牛丼、カレー、定食、丼、回転寿司などは、コメ価格の影響を受けやすい業態である。コメの調達価格が下がれば、原価面では一定の余地が生まれる。ただし、その余地をそのまま値下げに回すとは限らない。
外食企業は、人件費、物流費、光熱費、家賃、肉や魚、野菜など、コメ以外のコスト上昇にも直面している。価格を据え置いて利益を回復させる。商品の量や品質を高める。期間限定のキャンペーンに使う。あるいは、来店頻度を高めたい商品だけを戦略的に値下げする。コメ価格の下落は、外食企業に新たな選択肢を与える。しかし、それがそのまま「外食の値下げ」につながるわけではない。
外食は再び価格競争に戻るのか
さらに、現在の外食市場は、一社が値下げすれば競合各社も一斉に追随せざるを得ない状況でもない。むしろ、外食企業にとって避けたいのは、再び価格だけを競う市場になることだ。
その象徴が、かつての牛丼業界である。デフレ下では牛丼各社が値下げを繰り返し、低価格競争が激化した。価格の引き下げは客数を増やす一方、利益を圧迫し、現場の負担も大きくした。安さを競争軸にすると、競合がさらに下げたときに追随を迫られやすくなる。だからこそ、現在の外食企業に問われているのは、コメ価格が下がったから「いくら値下げできるか」ではない。その原価低下分を、どのように競争力へ変えるかである。重要なのは、全面的な価格競争に陥らず、値下げを必要な商品や場面に限定できるかどうかだろう。
コメ価格の下落は、外食各社に値下げの余地を与える。しかし、その余地を単純な安売りに使えば、再び消耗戦に向かう可能性がある。むしろこれから問われるのは、「安くできるか」ではなく、「どこなら安くしてもブランドや利益を壊さないか」である。
コンビニのおにぎり値下げは、外食にとっても一つのヒントになる。原価低下を全面値下げに使うのではなく、客数を増やしたい商品に集中して使う。価格競争を避けながら、値下げを集客の武器としてどう使うのか。その判断が、これからの外食企業にはより重要になりそうだ。


