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外食DXに激震!LINEヤフーが放つ「LINEレストランプラス」とトレタ買収の衝撃

  • 執筆者の写真: 三輪大輔
    三輪大輔
  • 1 日前
  • 読了時間: 6分

                三輪大輔|外食ビジネスアナリスト


LINE参入で勢力図はどう変わるのか

外食業界のDXをめぐる勢力図が、一気に塗り替わるかもしれない。2026年1月、LINEヤフーが飲食店予約管理のパイオニア「トレタ」の買収を発表した。そして2月12日、満を持して飲食業界に特化したパッケージサービス「LINEレストランプラス」(2026年6月開始予定)のリリースが発表された。


LINEレストランプラス

「LINEレストランプラス」は、LINE公式アカウント、モバイルオーダー、POSレジを一体で提供する飲食店向けサービスだ。近い将来、そこに「トレタ」の予約管理サービスも加わる予定である。


加速する外食DXとLINEの強み

コロナ禍以降、飲食店でもDXを推進させる動きが加速している。コロナ禍以降、飲食店のDXは加速している。その中で存在感を発揮してきたのが、リクルートの「Airビジネスツールズ」やUSEN、楽天ぐるなびといったサービスだ。こうした企業はレジやキャッシュレス決済、モバイルオーダー、予約管理といった各種サービスを一括で提供し、店舗運営の効率化を支えてきた。


そもそもサービスが別々の会社に分かれていると、使いこなすまでに時間がかかる。IDやパスワードの管理も煩雑になり、部分最適に陥りやすいという課題もあった。DXの本質がデータ活用にある以上、サービス同士を連携し、予約・決済・来店履歴を一元化できる仕組みのほうが、その効果を最大化しやすい。実際、多くの飲食店でこうした統合型サービスの導入が進んできた。その領域に、ついに「LINE」が本気で参入してきたのである。


LINEの最大の強みは、生活者視点にある。その起点がコミュニケーションアプリ「LINE」だ。国内月間利用者数が1億ユーザーを突破。もはや生活のインフラの一部になっている。これまでの外食DXは、どちらかといえば店舗起点で設計されてきた。業務効率を高め、売上を最大化するための仕組みづくりが中心だった。しかし「LINE」は、日常のコミュニケーション基盤そのものだ。生活者のスマートフォンの中に常駐し、生活動線のど真ん中に位置している。


つまり、「LINE」を活用すれば、生活動線上から消費者へ直接リーチすることが可能になる。友だち登録、メッセージ配信、クーポン、リマインド通知などを通じて、来店前から関係性を構築できるだけでなく、リピート促進もスムーズになる。「LINE」が参入することで、業界に地殻変動が起きても不思議ではない可能性を秘めている。


その動きを牽引する存在として、2025年7月にはLINEヤフービジネスパートナーズ株式会社が誕生している。同社は旧LINE株式会社時代に設立された事業部門を母体とし、法人向けソリューションの強化を担う組織だ。今回の「LINEレストランプラス」構想も、その延長線上に位置づけられる。


「LINE」の本格参入がもたらすインパクトを、「LINEレストランプラス」の概要と「トレタ」買収の意義を踏まえながら見ていきたい。


LINEレストランプラスとは何か

LINEヤフーが掲げるコンセプトは、人々の日常を支える「ライフプラットフォーム」である。今回の動きは、まさにその構想の「外食版」だ。「LINE」がインフラ化していることのビジネス上の強みは、「LINE公式アカウント」そのものにある。「LINE公式アカウント」は国内で約130万のアカウントが存在し、うち認証済みアカウントは約49万。さらに、飲食・レストラン領域が約15%を占める。この圧倒的な顧客接点を土台に、予約から注文、決済、来店後の販促までを「一本の線」でつなぐ。これが「LINEレストランプラス」の狙いだ。


一方で、「LINE公式アカウント」が普及しているからといって、店舗と顧客の関係性が自動的に深まるわけではない。LINEヤフービジネスパートナーズ代表取締役社長、富永翔氏は、現状の課題を次のように整理している。


LINEレストランプラス
LINEヤフービジネスパートナーズ代表取締役社長、富永翔氏

「LINE公式アカウントは本当に多くの飲食店さんに使っていただいています。ただ一方で、友だち追加のハードルがまだ高いという声もあります。それから、来店前と来店後の体験がどうしても分断されてしまう。さらに、業界に合った使い方が分かりづらい、というご意見もいただいてきました」


「LINE公式アカウント」の持つこうした課題を解決し、よりスムーズな顧客体験を実現するために、LINE側もさまざまな取り組みを進めてきた。その一つが「LINEタッチ」だ。卓上の専用デバイスやステッカーにスマホをかざすだけで、友だち追加やモバイルオーダーがそのまま立ち上がる。会員証の提示や特典の利用も、この動作ひとつで完了する。QRコードを読み取る手間をなくし、店頭での接点をそのままLINEにつなぐ仕組みである。


そして、その延長線上にあるのが、今回発表された「LINEレストランプラス」だ。来店前、来店中、会計、そして再来店まで。お店とお客さまの体験を一つにつなぐ飲食店向けサービスである。「LINE公式アカウント」に、モバイルオーダーやPOSレジを組み合わせ、店舗運営と顧客接点をまとめて支える構成となっている。


LINEレストランプラス

ユーザーは、普段使っている「LINE」から予約や注文、支払いまでをスムーズに行える。店側は「誰が、いつ、何を注文したか」をデータとして蓄積できる。そして、そのデータをもとに、来店履歴や好みに合わせたメッセージをLINEで届けることができる。こうした顧客情報を活用し、継続的な関係づくりにつなげていく考え方をCRM(顧客関係管理)という。LINEレストランプラスは、そのCRMを日常使いのLINE上で実現しようとする仕組みである。


「トレタ」がLINEグループに加わる意義

ここで重要になるのが、予約管理サービス「トレタ」の買収だ。なぜトレタはLINEとの協業を選んだのか。トレタ代表取締役社長の中村仁氏は、自身の原体験を踏まえてこう語る。


LINEレストランプラス
トレタ代表取締役社長の中村仁氏

「お店の中ではお客様との接点はありますが、店内だけの関係に終わってしまうことが多いです。店主として、お客様とのつながりが続かないことに、ずっともどかしさを感じてきました。しかし、LINEと一緒になることで、お客様とのつながりが来店後も続いていく世界が実現できるでしょう。現場のトレタと、つながりのLINE。この2社が一緒になることで、お店と人のつながりをより良いものに変えられるはずです。現場に寄り添いながら、LINEのつながりの力を最大限発揮して、より良い業界を作っていきたいと思っています」


トレタが培ってきた現場の知見と、LINEが持つ顧客接点。この二つが組み合わさることで、予約した瞬間から来店、会計、退店後までが一つの流れになる。それは単なる機能統合ではない。飲食店の生産性を高めながら、顧客との関係を長く続けていく仕組みづくりでもある。


例えば、予約のキャンセルが入った場合、これまでは店の外に出て呼び込みをするなど、現場の努力で空席を埋めるしかなかった。しかし、予約台帳と顧客データがつながれば話は変わる。来店履歴や利用頻度をもとに、近くにいる常連客へ即座にメッセージを届けることもできる。必要に応じて特典を案内することで、無理なく空席を埋める選択肢が生まれる。現場の負担を増やすことなく、データを使って売上を最大化できるメリットはかなり大きい。

トレタとLINEが協業することで、「LINEレストランプラス」のインパクトは何倍にも広がる可能性がある。


既存SaaSプレイヤーを揺さぶるLINEの衝撃

「いつも使っているLINEで、すべてが完結する」。この体験が広がれば、既存の飲食SaaSプレイヤーにとって脅威となるのは間違いない。基本機能や初期導入費用を0円で提供するという方針は、価格競争の前提そのものを揺さぶる可能性がある。2026年6月のサービス開始に向け、外食業界のDXをめぐる戦いは、さらに激しさを増していきそうだ。

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