外食業界で「増収減益」が相次ぐ理由とは。スシローの海外利益が国内を超えた決算から見える次の競争
- 三輪大輔

- 1 日前
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更新日:7 時間前
三輪大輔|外食ビジネスアナリスト
外食企業の決算発表が相次いでいる。
足元の外食決算で目立つのが、売上は伸びているにもかかわらず、利益が減少する「増収減益」だ。モスフードサービス、ワタミ、力の源ホールディングス、トリドールホールディングスなどでは、売上を伸ばしながらも利益面では苦戦が見られた。
一方、すかいらーくホールディングス、物語コーポレーション、ゼンショーホールディングス、FOOD & LIFE COMPANIES(F&LC)など、増収増益を実現する企業もある。
同じように原材料費や人件費などのコスト上昇に直面しながら、なぜこれほど利益に差がつくのだろうか。足元の決算を読み解くと、国内市場で収益を確保する難しさと、その先の成長を左右する海外戦略の課題が見えてくる。
外食の決算で「増収減益」が相次ぐ理由
増収減益企業を見ると、コスト上昇の影響が鮮明だ。モスフードサービスは2027年3月期第1四半期に売上高が前年同期比3.6%増となった一方、営業利益は52.9%減となった。力の源ホールディングスも売上高5.9%増に対して、営業利益は48.6%減少している。
売上が伸びても、それ以上に人件費や原材料費などが増えれば、利益は残らない。これは現在の外食業界が直面している大きな問題だ。客数を増やす、値上げを行う、新しい店舗を出す。こうした施策によって売上高を伸ばしても、売上増がそのまま利益増につながるとは限らなくなっている。
一方、増収増益企業では事情が異なる。例えば物語コーポレーションは2026年6月期、売上高が前期比22.4%増、営業利益が31.4%増となった。既存店売上も直営店5.0%増、FC店3.3%増と堅調に推移している。ゼンショーホールディングスも2027年3月期第1四半期に大幅な増収増益となった。コメ価格の低下などによって原価率が改善したことも利益を押し上げている。
つまり、増収増益と増収減益を分けている要因は一つではない。既存店の成長、原価管理、価格戦略など、それぞれの企業が持つ収益構造の差が、コスト高の中でより鮮明になっている。
スシローは海外利益が国内を超えた
そして今後、外食企業の成長を考えるうえで、さらに重要になりそうなのが海外だ。
象徴的なのが「スシロー」を展開するF&LCである。2026年9月期第3四半期、海外スシローの利益は前年同期比83.2%増の203億円に達した。国内スシローの利益を上回り、海外がすでに大きな収益源へ成長している。
F&LCは台湾、香港、中国大陸、シンガポール、タイ、インドネシア、マレーシアなど、アジアを中心にスシローを展開してきた。海外店舗数も300店を超えている。さらに同社は2035年度に海外売上構成比55%を目指している。
かつて外食企業の海外事業といえば、国内で成長した企業が次の市場を探すための挑戦という意味合いが強かった。しかしF&LCでは、海外はもはや将来への投資先だけではない。国内と並ぶ収益の柱になり始めている。
ゼンショー、すかいらーくも海外で成長
海外事業が好調なのはF&LCだけではない。
ゼンショーホールディングスは「すき家」「はま寿司」などを世界各国で展開している。現在では事業区分そのものに「グローバルすき家」「グローバルはま寿司」を設けており、海外市場を成長戦略の重要な柱としている。
すかいらーくホールディングスも台湾やマレーシアを中心に海外事業を拡大している。台湾では「すかいらーく」「しゃぶ葉」などを展開。マレーシアでも「しゃぶ葉」を中心に店舗網を広げている。さらに今後3年間で海外約100店舗の出店を計画している。
こうして見ると、日本の大手外食企業が次の成長余地を海外に求める動きは鮮明だ。その中でも、現在成功例が目立つのがアジアである。
外食業界の決算で見える、増収減益にはないアジア展開の強さ
日本の外食企業にとって、アジアにはいくつもの追い風がある。
まず、日本食への親和性が高い。寿司、ラーメン、うどん、牛丼、しゃぶしゃぶなど、日本では日常的な外食である商品が、海外では「日本ブランド」という付加価値を持つ。さらに、国や地域によって差はあるものの、人口や所得の増加によって外食市場そのものが成長している地域もある。
人口が減少する日本で限られた需要を奪い合うのとは、成長の前提が違う。地理的な近さもある。食文化、物流、店舗管理などを考えても、日本企業にとってアジアは海外展開を進めやすい地域といえる。
F&LC、ゼンショー、すかいらーくなどの動きを見ると、「国内で磨いた外食モデルをアジアへ展開する」という成長戦略が、現在の外食業界で大きな潮流になっている。ただし、海外に出さえすれば勝てるわけではない。
海外進出で先行したトリドールと力の源
その先の課題をすでに経験しているのが、トリドールホールディングスと力の源ホールディングスだ。
両社は現在の海外進出の流れよりも早い段階から、丸亀製麺と一風堂を世界へ展開してきた。つまり、「日本の外食ブランドは海外で通用するのか」という最初の壁を、先に突破した企業でもある。だからこそ、現在の両社を見ると海外展開の「その先」が見えてくる。
トリドールの海外事業では、MARUGAME UDONが台湾などアジアで好調に推移する一方、英国で買収したFulham Shoreは厳しい経営環境などを背景に収益性の回復が遅れている。同じ海外でも、地域やブランドによって状況は大きく異なる。
力の源ホールディングスも一風堂をアジア、北米、欧州などへ展開してきたが、直近では海外事業でもコスト増が利益を圧迫している。特にコスト負担の大きい欧米では、店舗を増やすだけでは利益を確保しづらい。
海外進出に成功した企業だからこそ、次は「海外でどう利益を維持しながら成長するか」という新しい課題に直面する。
「海外に出る」から「海外で稼ぎ続ける」競争へ
ここに、日本の外食企業の海外戦略における次の競争がある。第一段階は、国内でブランドを成長させることだった。その次は、日本で成功したブランドを海外へ持っていくことだった。そして現在、F&LC、ゼンショー、すかいらーくなど多くの外食大手が、アジアを中心に海外事業を急速に拡大している。
しかし、海外展開で先行したトリドールや力の源を見ると、その先にも壁があることが分かる。進出国が増えれば、現地の人件費、原材料費、家賃、競争環境なども異なる。日本やアジアのある国で成功した店舗モデルが、別の国でもそのまま通用するとは限らない。どの地域に出るのか。どのブランドを展開するのか。直営なのか、フランチャイズなのか、現地企業と組むのか。海外店舗数だけでは、海外戦略の成否を判断できない段階へ入っている。
国内から海外へ。その先にあるもの
日本の外食市場がすぐに大きく縮小するわけではない。インバウンド需要もあり、国内にも成長余地は残されている。それでも長期的には人口減少が続く。一方、最低賃金は上昇し、人手不足も深刻になっている。国内だけで高い成長率を維持することは、次第に難しくなるだろう。
だから海外へ出る。そして日本食との親和性が高く、市場の成長余地も大きいアジアで成長する。だが、その先で収益を伸ばし続けられるか。F&LCでは海外スシローの利益が国内を超えた。ゼンショーやすかいらーくも海外展開を加速する。一方、その先を走ってきたトリドールや力の源は、海外での次の課題と向き合っている。
国内で勝つ。海外へ出る。アジアで成長する。そして、その先でも利益を伸ばし続ける。
足元の外食決算を見ると、日本の外食企業の競争は、すでにそこまで進み始めている。


