top of page

“誰でも採用”が飲食店を壊す。人材難の外食業界で進む“ファンが働く店”という戦略

  • 執筆者の写真: 三輪大輔
    三輪大輔
  • 5 日前
  • 読了時間: 6分

更新日:10 分前

                         三輪大輔|外食ビジネスアナリスト


2026年、外食業界の採用環境はこれまでにない臨界点を迎えています。慢性的な人手不足に加え、上昇し続ける時給による採用コストの高騰。さらに、特定技能1号の新規受け入れ停止の影響なども重なり、採用に苦しむ飲食店はは少なくありません。実際、「人が足りずに営業時間を短縮せざるを得ない」「新規出店を断念した」といった、経営の根幹を揺るがすケースも珍しくなくなりました。


しかし、その一方で、求人に困らず、優秀な人材が集まり続けている企業も確実に存在します。両者の違いは、単純な「時給の高さ」ではありません。 今、勝ち組企業が実践しているのは、「誰を採るか」と同じくらい、「誰を採らないか」を徹底する基準です。人手不足だからといって「誰でもいいから採用する」姿勢が、実は最も店を壊す原因になります。本記事では、人材難時代を生き抜くための「3つの生存戦略」を具体的に解説します。


ステップ1:「足りない」を可視化し、スポットワークを戦略的・採用導線に組み込む

最初のステップは、現場の「人手不足」の構造を正しく分解することです。 いきなり正社員や長期アルバイトを公募するのは、ミスマッチのリスクが非常に高く、コストも無駄になりがちです。


ここで強い企業が実践しているのが、「タイミー(Timee)」などのスポットワークの「戦略的活用」です。多くの店は、タイミーを単なる「急な欠員の穴埋め」として使っています。しかし、これではいつまで経ってもその場しのぎのままで、現場は疲弊します。


成功する店は、以下のような「試用期間付き採用導線」としてスポットワークを設計しています。

【戦略的スポットワーク活用の流れ】
1. 自店の必要人員とスキルを正確に可視化
2. 不足部分(ピークタイムや定型業務)をスポットワークで埋める
3. 実際に働いてもらい、自店の環境や既存スタッフとの相性を見る
4. マッチした人材に「うちでレギュラーとして働かない?」と直接採用へ繋げる

「履歴書と面接」だけでは見抜けない、実際の動きや人柄を現場で確認してから採用に繋げる。このステップを踏むだけで、初期のミスマッチは激減します。


ステップ2:理念ベースの「リファラル採用」で、強いチームの核を作る

ミスマッチを防ぐ次のステップが、「リファラル(縁故・紹介)採用」です。 ただし、これは「紹介してくれたら1万円支給」といった、紹介料をばら撒く話ではありません。リファラル採用の本質は、「この店で働いていることを、スタッフが自分の大切な誰かに勧めたくなるか」という、エンゲージメントの指標そのものです。


外食は完全なチームワーク産業です。たった一人の「理念に共感しない、愚痴ばかりの人」が入ってくるだけで、これまでお店を支えてくれていた優秀なスタッフから順番に辞めていきます。だからこそ、理念をベースにした以下のリアルな仕組み化が必要です。


  • 理念を理解した「採用リーダー」の選定:店の魅力を語れるスタッフを軸にする

  • 店長や社員がハブになる:スタッフとの日常的なコミュニケーションから信頼関係を作る

  • 顧客やスタッフの友人を拾い上げる:もともとお店の「ファン」である層へアプローチする

  • 本部へのスムーズな接続:現場任せにせず、会社全体で歓迎する体制を作る


「この店が好きだから、友達を呼びたい」 この好循環を作ることこそが、最強の採用フィルターになります。


ステップ3:時給アップに頼らない、離職を防ぐ「辞めない組織」の構築

どれだけ採用導線を作っても、入った先から辞めていく「バケツに穴が空いた状態」では意味がありません。実は、採用以上に重要なのが「定着率(辞めない組織作り)」です。「定着=時給を上げること」と考えがちですが、それだけでは資本力のある大手に負けます。まず取り組むべきは、時給を上げることではなく「職場の『不』を徹底的に減らすこと」です。

現場のスタッフが辞める理由は、以下のような日常の小さな「不」の積み重ねです。


  • ギスギスした人間関係

  • 業務連絡やシフト共有の不足

  • 特定の人へのシフト負荷、店長への過度な依存


「LINE強制文化」がバイトを心理的に追い詰める?

特に現代のアルバイト雇用の盲点になっているのが、「LINEによる属人的なコミュニケーション」です。今の若い世代にとって、LINEは完全なプライベート空間です。休日に店長やシフト担当からLINEで業務連絡が来る、グループLINEで常に誰かが叱責されている……こうした環境は、彼らにとって大きなストレスであり、「つながらない権利」の侵害にあたります。また、全員集合を前提とした昔ながらの「朝礼」も、今のタイパ重視の時代には成立しません。


そこで今、多くの企業で導入が進んでいるのが、dip の 「バイトルトーク」をはじめとした専用の社内報アプリといった、プライベートと完全に切り離されたコミュニケーション専用ツールです。「LINE WORKS」というLINEの業務版コミュニケーションツールを導入する企業も増えています


注目される「社内報」の再評価と、デジタル化の波

定着率向上の施策として、実は「社内報」を始める外食企業が増えています。


しかし、昔ながらの「紙の社内報」には大きな壁がありました。現場での配布の手間、編集やデザインなどの専門的なノウハウ、外部発注によるコスト、そして昨今の「印刷・紙代の高騰」です。ただでさえリソースのない現場や本部に、紙の社内報を定期刊行する余裕はありません。


そこで今、外食業界で急速に広がっているのが、手軽に導入・運用できる「社内報アプリ」の活用です。アプリ化によってコストと手間の問題をクリアした上で、以下のような現代的なメリットが生まれています。


  • 働く人の可視化・現場の空気感の共有: テキストだけでなく、写真や動画を使って、他店舗のスタッフの頑張りや、本部のトップが今何を考えているのか(理念)をリアルタイムにアプリ上で可視化できます。

  • 親世代への安心感: 「うちの子、どんな飲食店で働いているんだろう?」と心配する学生アルバイトの親御さんに対し、「どんな会社で、どんな仲間と働いているのか」がクリアに伝わります。親世代の信頼と安心感を得られることは、結果として新卒などの採用率の向上につながります。


業務連絡をスマートにシステム化しつつ、社内報アプリで情緒的な繋がりと安心感を作る。この両輪が、これからの「辞めない組織」の核心です。


結論:これから生き残るのは「ファンが働いている店」

外食業界における採用の成否は、これまでの“負の連鎖”を断ち切れるかどうかにかかっています。

【人手不足の負の連鎖】 採れない ➔ 辞める ➔ 現場が崩れる ➔ サービス・ QSCが落ちる ➔ さらに採れなくなる

この連鎖を止め、持続可能な経営へと舵を切るための3ステップが、「戦略的スポットワーク」「理念リファラル」「不の解消(デジタル化)」です。


かつて、コロナ禍という未曾有の危機の中で生き残ったのは、地域やお客様に愛される「ファンの多い店」でした。そして今、深刻な人材難という新たな危機の中で生き残るのは、「ファンが働いている店」です。


時給の高さだけでは、人の心は引き留められません。「この店で働けてよかった」「この仲間とお店を盛り上げたい」と、どれだけスタッフに応援される会社になれるか。それこそが、これからの外食企業に問われる、最大の競争力になっていくでしょう。



コメント


bottom of page