【飲食経営者の肖像】「ビジョンがない」ことが最大の強み。MUGEN・内山正宏社長が引き寄せる「縁」と「可能性」の20年
- 三輪大輔

- 4月16日
- 読了時間: 4分
MUGENの内山さんとお会いすると、なぜかいいことが起こる。
これまで幾度となく取材をさせていただいたが、そのたびに、新たな出会いをつくっていただいたり、妻や子どもと特別な時間を過ごさせていただいたりしてきた。最初は偶然ではないかと思っていた。しかし、それが何度も続くと、さすがに偶然だけでは説明がつかない。その理由を考えてみると、おそらくそれは、内山さんが生粋のギバーだからだ、という結論にたどり着く。
人に機会を渡し、人と人をつなぎ、惜しみなく場を開いていく。その姿勢が、結果として周囲に新しい流れを生んでいるのだと思う。現に、内山さんの周りには常に人が集まっている。インタビュー中も、次々と飲食関係者の名前が飛び交う。その一人一人との関係性の深さからも、業界の中でどれだけ信頼を集めてきた人物なのかが伝わってくる。
また、内山さんの魅力は、「完成された経営者」に見せようとしないところにもある。自分の弱さや未熟さ、失敗も隠さない。むしろ、それを出発点として受け止め、原因を分析し、自分の置かれたポジションを明確にしながら、さらに高みへ向けて歩き出していく。
その強さは、明確なビジョンや壮大な経営戦略があるからこそ生まれるものなのだと思っていた。しかし、内山さんは「自分にはビジョンがない」と語る。最初は意外だった。だが、話を聞けば聞くほど、むしろその“ビジョンのなさ”こそが、内山さんの強さなのではないかと思うようになった。
実業家の 斎藤一人 も、「夢は、その人が描ける最高地点にすぎない。だから夢なんかなくてもいい」という趣旨のことを語っているそうだ。確かに、ビジョンがあるからこそ道を踏み外すこともある。夢がその人を縛り、目の前にある可能性を見落とさせてしまうこともある。
一方で、内山さんは、目の前の人、目の前の縁、目の前の可能性に向き合い続けてきた。 その積み重ねが、「鮨つきうだ」の店主である 月生田光彦 や、「天婦羅みやしろ」の 宮代直亮 との出会いにつながり、さらに、その人自身も気づいていなかった可能性を引き出していく。 そして、その縁が、新たなブランドの誕生やミシュランの獲得へと発展し、さらには、多くの人材を輩出する企業としてのMUGENの現在へと結びついている。 その意味で、MUGENとは、「一人一人の可能性を最大化する会社」なのかもしれない。
『飲食店経営』2026年5月号で、内山さんに表紙を飾っていただくのは3回目となる。どの回も、非常に印象深いものだった。
1回目は、『飲食店経営』2019年2月号。「天婦羅みやしろ」がミシュランを獲得する前であり、寿司業態も、今のように寿司職人のキャリアとリンクしながら展開されていたわけではなかった。まさにMUGENが次のステージへ向けて脱皮しようとしていた時期だったのだと思う。しかし、その段階ですでに、内山さんの周りには人が集まり、新しいカルチャーや人材が次々と生まれていた。
そして2回目は、『飲食店経営』2020年12月号。コロナ禍の真っただ中だった。このときは、内山さんに加え、保志さん、赤塚元気さん、武長太郎さんの4人で表紙を飾っていただいた。外食業界全体が先の見えない不安に包まれていた時期である。それでも、ただ悲観するのではなく、「この状況の中で何ができるのか」を真剣に考え、前を向こうとしていた経営者たちの空気感が強く印象に残っている。
そして今回、『飲食店経営』2026年5月号で創業20年という節目で、再び内山さんにお話を伺うことができた。振り返ってみると、その歩みを追うこと自体が、外食業界の歴史や変化を見つめることでもあったのだと思う。創業20年という節目に、あらためてお話を伺えたことは本当にありがたかった。取材を通じて感じたのは、MUGENの歩みをたどることが、そのまま外食業界の一つの歴史を振り返ることにもなるということだ。それだけ内山さんは時代の最前線を切り開いてきた人であり、MUGENは外食業界の中でも特別な存在なのだと思う。

同時に、表紙のような大きな枠でなければ、お話を伺うのが申し訳なくなるような感覚もある。だからこそ、自分自身ももっと成長しなければならない。雑誌を成長させ、発信の場を広げ、内山さんのような方の歩みを、よりふさわしい形で伝えられるようになりたい。もしかすると、MUGENのメンバーの方々も、内山さんに対して同じような気持ちを抱いているのかもしれない。「この人の期待に応えたい」。「この人にふさわしい自分でありたい」。そう思わせる力があるからこそ、人が育ち、店が育ち、会社が育っていくのではないか。
そして気がつくと、自分自身もまた、「もっと成長したい」と思わされていた。その気持ちが実を結んだのか、ありがたいことに、最近はテレビなどでお声がけいただく機会も増えてきた。特に、自分の中で一つの勲章だったのが、経済番組『 ワールドビジネスサテライト 』への出演だった。ただ、振り返ると、不思議な縁は以前から続いている。自分にとって大きな転機となった『 ガイアの夜明け 』への出演は2020年10月。その頃、ちょうど『飲食店経営』2020年12月号の取材調整で、内山さんとやり取りをしていた時期でもあった。
偶然と言えば偶然なのかもしれない。しかし、不思議なことは二度続くと、さすがに気になってくる。やはり内山さんとお会いすると、なぜかいいことが起こる



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