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なぜスシローは成功し、他社は撤退したのか? ミスド再挑戦から考える外食企業の中国進出「成功と失敗の分かれ目」

執筆者の写真: 三輪大輔
三輪大輔
11 分前
読了時間: 5分


日本の外食企業の中国進出の明暗が分かれています。


スシローは2021年に中国本土へ進出し、2026年4月には100店舗へ到達しました。一方、丸亀製麺、はなまるうどん、くら寿司など、中国から撤退した企業も少なくありません。同じ日本食への需要を前に、なぜ伸びる企業と撤退する企業に分かれるのでしょうか。鍵を握るのは、ブランドの知名度だけではありません。


そもそも中国の外食市場は2025年、5兆7,982億元、日本円に換算すると約130兆円に達しました。飲食店数は約1,600万店ともいわれています。日本の外食市場は約25兆円であり、中国はその約5倍です。店舗網を築くことができれば、大きな成長を期待できる魅力的な市場です。


そのため、一度撤退した企業が再び中国へ進出する動きもあります。ミスタードーナツは2019年の撤退から7年を経て、上海へ戻ります。では、中国で成功と撤退を分けるものは何でしょうか。重要になるのが、中国の出店競争と価格競争に耐えられる供給網、店舗運営、現地パートナーを含めた経営体制です。


時代とともに変わる3つの壁

日本の外食企業が中国から撤退した理由は、時期によって異なります。


中国では、スシローやサイゼリヤなどが店舗網を広げる一方、くら寿司、丸亀製麺、ミスタードーナツなどは撤退を経験した。ただし、撤退が中国事業の終わりとは限らない。現地企業との提携や別ブランドへの変更など、運営方法を見直して再挑戦する企業も増えている。
中国では、スシローやサイゼリヤなどが店舗網を広げる一方、くら寿司、丸亀製麺、ミスタードーナツなどは撤退を経験した。ただし、撤退が中国事業の終わりとは限らない。現地企業との提携や別ブランドへの変更など、運営方法を見直して再挑戦する企業も増えている。

コロナ禍以前の中国では、経済成長を背景に外食市場が急拡大しました。現地企業は、短期間に大量出店することで店舗密度を高め、製造や物流の効率を上げていきます。現在ではラッキンコーヒーが中国と香港だけで約3万店舗を展開するなど、日本とは店舗網の規模がまったく違います。


一方、日本企業は一店舗ずつ品質を確かめながら出店する傾向が強く、中国企業の意思決定と出店の速さについていけないことがありました。出店が進まなければ、物流網や加工拠点への投資も回収できません。賃料や人件費が上昇する中、店舗密度を高められず、採算が悪化する企業が出てきました。


コロナ禍には、中国の厳しい営業規制が加わりました。丸亀製麺は一時37店舗まで広げ、はなまるうどんも出店していましたが、両社は2022年に中国から撤退しています。


そして現在は、不動産不況や消費低迷を背景に、低価格競争が激しくなっています。かつては経済成長に対応する拡大力が求められましたが、現在は価格を下げても利益を残せる原価管理力が問われています。


中国で拡大した企業は「店舗の手前」を握っている

その中で店舗網を広げているのが、スシロー、サイゼリヤ、吉野家、すき家、はま寿司などです。


スシローは2018年に台湾へ進出し、2021年に中国本土へ上陸しました。2026年4月には中国本土100店舗に到達しています。サイゼリヤはさらに多く、2026年2月時点で上海214店舗、広州227店舗、北京87店舗の計528店舗を展開しています。中国・広州には自社工場を設け、ピザやソースなどを中国国内の店舗へ供給しています。


スシローを運営するFOOD & LIFE COMPANIESも、食材の調達や物流といった川上領域への投資を進めています。すき家とはま寿司を展開するゼンショーホールディングスは、原材料の調達から製造、物流、店舗販売までを一貫して管理する「MMD」を経営の根幹に据えています。


共通するのは、単に日本の店舗を中国へ持っていったのではなく、店舗を支える仕入れ、製造、物流、人材育成、データ管理まで持ち込んでいることです。川上を握れば、品質を保ちながら原価を調整できます。消費者の節約志向が強まっても、価格を下げる余地をつくりやすくなります。


台湾は中国本土進出の「橋」になる

もう一つ注目したいのが、台湾を経由して中国本土へ進出する動きです。


日本の外食企業が中国本土へ進出する経路は一つではない。自社の仕入れや物流、店舗運営の仕組みを持ち込む企業がある一方、台湾で海外運営を経験してから本土へ進む企業や、台湾・中国の現地企業が持つ人材、物流、店舗開発力を活用する企業もある。自社に足りない経営資源を、どの地域で、どの企業と補うかが重要になる。
日本の外食企業が中国本土へ進出する経路は一つではない。自社の仕入れや物流、店舗運営の仕組みを持ち込む企業がある一方、台湾で海外運営を経験してから本土へ進む企業や、台湾・中国の現地企業が持つ人材、物流、店舗開発力を活用する企業もある。自社に足りない経営資源を、どの地域で、どの企業と補うかが重要になる。

モスバーガーは台湾で200店舗を超える店舗網を築いた現地企業と組み、2012年に上海へ再進出しました。大戸屋も台湾ファミリーマートなどとの関係を生かし、上海事業に再挑戦しています。くら寿司は2014年から台湾で店舗網を築き、その台湾子会社の傘下で2023年に上海へ進出しました。


スシローも2018年に台湾、2021年に中国本土へ進んでいます。鳥貴族も2024年9月に台湾1号店、2025年2月に上海1号店を開きました。


ただし、「台湾で成功すれば中国本土でも成功する」とは限りません。くら寿司は上海で3店舗を展開しましたが、2025年に撤退を決定しました。鳥貴族も上海で急速に出店したものの、2026年9月には7店舗のうち4店舗を閉め、郊外の商業施設から都心部へ出店戦略を修正すると報じられています。


台湾は、日本に近い商品やサービスを受け入れやすく、中国語圏での人材育成や海外運営を試せる市場です。しかし、中国本土とは価格競争、商業施設との関係、規制、消費者の変化の速さが異なります。台湾は橋渡しにはなっても、成功を保証する市場ではありません。


ミスタードーナツは規模で競わない

ミスタードーナツも、中国との関わりを何度も見直してきました。


最初に上海へ進出したのは2000年です。その後、台湾で組んだ統一超商を上海事業にも迎え、店舗開発や物流の力を借りて拡大を目指しました。しかし、最終的には2019年に中国本土から撤退しました。


今回はダスキンが自ら店舗網を築くのではなく、上海美天甜品牌管理とマスターフランチャイズ契約を結びます。対象地域も上海、浙江省、江蘇省、山東省の華東地区に絞り、2029年末までに30店舗を目指します。


スシローやサイゼリヤのように、自社で大規模な供給網を構築する戦略ではありません。中国の商習慣や規制、物件開発に詳しい企業へ運営を任せ、ダスキンはブランドと商品開発を支える戦略です。中国全土で店舗数を競うのではなく、華東地区で店舗密度を高める考えだとみられます。


中国で勝つ方法は、一つではありません。自社で調達、製造、物流、店舗運営まで管理するか、それらの経営資源を持つ現地企業と組むかです。重要なのは、中国へ店を出すことではなく、中国の速さと価格競争に耐えられる仕組みをつくることです。ミスタードーナツの勝算も、30店舗を出せるかではなく、その30店舗を支える商品、価格、供給網を現地パートナーと構築できるかにかかっています。

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