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フードデリバリー「送料無料」は札束の叩き合いで終わるのか? Uber Eats・出前館・ロケットナウの勝算

執筆者の写真: 三輪大輔
三輪大輔
10 分前
読了時間: 8分

                         三輪大輔|外食ビジネスアナリスト


札束の叩き合いで自滅していくのだろうか。


フードデリバリーで「お店価格」や送料無料の競争が激しくなっている。店頭との価格差が縮まれば、「便利だが高い」と利用を控えていた人も注文しやすくなる。各社が目指すのは、たまに使うサービスから、日常の食事を支えるサービスへの転換だ。


一方、2026年9月にはKDDI子会社のmenuがサービスを終了した。象徴的なのは、他社への売却による存続ではなく、サービス終了と会社の清算に至ったことだ。KDDIは、競争環境や今後の事業見通しを検討し、経営資源の最適配分という観点から終了を判断したと説明している。資金力のあるKDDIでさえ、投資を続ける道を選ばなかった。需要があることと、投資に見合う利益を得られることは別なのである。


主要プレーヤーとなったUber Eats、出前館、ロケットナウの3社は、この壁を越えられるのか。送料無料という先行投資を回収する条件は、各社で異なる。この戦いは、資金力にものをいわせた「札束の叩き合い」で終わるのか。それとも、各社に利益へつなげる勝算があるのか。競争の変化と、3社の強み・課題から考えたい。


送料無料に至るまでのフードデリバリーの競争の変化

フードデリバリーの競争を振り返ると、その重心は移ってきた。


コロナ禍では、「お店のおいしい料理を自宅でも楽しめる」という価値が注目された。外出や外食が制約される中、料理を届けるサービスは、消費者と飲食店をつなぐ役割を担った。名店の料理や限定メニューなど、何が食べられるかも利用の動機になった。


色鮮やかなテーブルに、フィッシュ&チップスや揚げ物、ソース付きの料理、飲み物の缶が並ぶ俯瞰写真
店の料理を自宅で楽しむサービスから、日常の食事の選択肢へ。フードデリバリーの競争は、料理の魅力や利便性に加え、安さを競う段階に入っている

そこに重なったのが、利便性の競争だ。注文できる店が多い。配送エリアが広い。食べたいときに注文でき、待ち時間も短い。加盟店と配達員を増やし、注文とのマッチングを改善することで、使いやすさを高めてきた。


そして今、競争の前面に出ているのが安さである。おいしい料理を便利に頼めても、店頭より大幅に高ければ、日常的には使いにくい。「今日は疲れたから」「雨で外に出たくないから」という利用から、普段の食事の選択肢へ広げるには、価格が大きな壁になる。


雨の日や夜間でも、頼みたいときに料理が届く。その利便性を支える配達員の確保と配送コストが、送料無料競争の行方を左右する
雨の日や夜間でも、頼みたいときに料理が届く。その利便性を支える配達員の確保と配送コストが、送料無料競争の行方を左右する

料理の魅力や便利さが不要になったわけではない。それらを備えたうえで、今度は「いくらで頼めるのか」が厳しく問われている。ただし、各社の料金体系は同じではない。ロケットナウは送料・サービス料無料を掲げる一方、出前館の送料無料施策ではサービス料が別に発生する。「お店価格」も商品代金の話であり、注文時の支払総額とは区別する必要がある。


送料無料は「利用習慣」を獲得する先行投資

安売りには代償が伴う。フードデリバリーも例外ではない。


利用者の送料を無料にしても、配達員への報酬やシステムの運営費、問い合わせへの対応費用などは発生する。その負担を引き受けてでも注文を増やすのは、将来の収益につながると期待しているからだ。


回収への道筋として重要なのが、利用頻度と注文の密度である。初回の割引で利用した人が、その後も繰り返し注文するようになれば、獲得にかけた費用を長期の利用で回収する余地が生まれる。さらに、近い範囲に多くの注文が集まれば、配達員の移動や待機の無駄を減らせる可能性がある。広い地域に注文が点在する状態と、同じ地域で次々に注文が入る状態では、配送の効率が異なる。


つまり各社は、単に目先の注文を増やしているのではない。繰り返し利用してもらう習慣と、効率よく届けられる規模を取りにいっている、と考えられる。問題は、そこまで育つ前に費用が膨らむことだ。クーポンがあるときだけ利用され、特典がなくなれば他社へ移られるなら、負担した費用は回収しにくい。無料で集まった注文を、持続的な利益に変えられるのか。ここに、3社それぞれの強みと弱みが表れる。


Uber Eats――規模と、料理だけに依存しない収益基盤

競争で有利な立場にあるのは、Uber Eatsだろう。国内最大手であり、2025年の市場シェアを約65%とする報道もある。調査の定義や時点には注意が必要だが、大きな利用者基盤を築いていることは、競争を考えるうえで重要である。


大きな利用者基盤を持つUber Eats。配車や日用品配送も展開するUberの事業基盤が、無料競争を支える強みとなる
大きな利用者基盤を持つUber Eats。配車や日用品配送も展開するUberの事業基盤が、無料競争を支える強みとなる

注文が多いサービスは、加盟店にとって掲載する意味が大きい。配達員にとっても、次の仕事を得られる可能性がある。店と配達員が集まれば、利用者の選択肢や使いやすさも高まる。規模が次の規模を生む循環をつくりやすい。


しかも、Uberは利益を生む事業基盤を持つ。2026年4〜6月期の世界のDelivery部門利益は約10億5500万ドルだった。これは全社共通費などを配賦する前の部門指標だが、世界のデリバリー事業が収益を生んでいることを示している。


配車サービスや日用品配送を手がけていることも強みになる。料理で獲得した利用者に日用品の注文を促す。移動で使う人に食事の注文を提案する。顧客との接点を複数のサービスで生かせれば、利用機会を増やせる。料理の宅配だけで顧客獲得費用を回収する必要がなく、複数の利用場面を通じて収益につなげる余地があるわけだ。


一方、最大手だからといって安泰ではない。競合の無料施策に対抗する費用が増えれば、収益にも影響する。利用者が価格だけで選ぶようになれば、築いてきた規模を守るための投資も必要になる。それでも、すでに持つ規模と、複数事業を通じて顧客との関係を深められる基盤は、長期戦での優位性になるだろう。


出前館――LINEヤフーの顧客基盤を、継続利用につなげられるか

日本発の出前館は、難しい立場にある。2026年8月期の売上高は390億5700万円で、前期比1.7%減。営業損失は82億8800万円と、前期の49億2300万円から拡大した。収益を改善する必要がある一方、価格競争への対応を控えれば、利用者や注文が競合へ移る可能性がある。目先の負担を抑えることと、将来の事業基盤を守ることを両立させなければならない。


ただし、出前館にはLINEヤフーとの資本関係という武器がある。有料会員サービス「LYPプレミアム」の会員に出前館の特典を提供するなど、グループの顧客基盤に働きかける手段を持つ。すでに別のサービスを使っている人に、出前館も利用してもらうきっかけをつくれる。


これは、広告などで利用者を一から集める以外の選択肢があるということだ。もっとも、会員特典も費用を伴う。クーポンで注文が増えたことと、利益が改善したことは同じではない。問われるのは、その接点を一時的な割引利用で終わらせず、継続利用へ変えられるかである。「特典があるから試した」人に、「普段も出前館で頼もう」と思ってもらう必要がある。


国内で築いた知名度や加盟店・配送網に、LINEヤフーとの連携をどう組み合わせるか。出前館の勝算は、顧客との接点を積み重ね、注文と利益に結びつける力にある。


ロケットナウ――韓国の経験を、日本での配送効率につなげられるか

ロケットナウは、韓国発の米上場EC大手クーパンの傘下にある。日本では完全子会社のCP One Japanが運営し、送料・サービス料無料を掲げて市場を開拓している。その勝算を考える鍵は、韓国で培った技術や運営ノウハウを、日本でも生かせるかという点だ。


ここで注目したいのが、配達員1人の報酬の高低だけでなく、一定時間に何件届けられるかである。例えば、1件あたりの報酬が低くても、近距離で続けて配達できれば、配達員は件数をこなして収入を確保できる。運営側にとっても、配達員の収入と配送効率の両立を目指せる。反対に、店までの移動が長く、料理の受け取りを待ち、配達後も次の注文まで時間が空けば、同じ条件では成り立ちにくい。ロケットナウの無料施策は、利用者を集めるだけでなく、効率のよい配送を可能にする注文密度をつくる投資と読める。


ただし、韓国での経験が日本での採算を保証するわけではない。注文の頻度、店と住宅の位置関係、配達員の確保など、運営条件は地域によって異なる。配送網を広げることと、その地域で十分な注文を集めることも別だ。利用可能なエリアが広がっても、注文がまばらなら回収は難しくなる。


クーパンの支えと運営ノウハウは強みである。しかし、日本で採算を支える注文密度に到達するまで、どれだけの投資が必要になるのか。ここが挑戦者の課題である。


1社が市場を押さえるのか、3社が共存するのか

サカーナ・ジャパンは、2025年の国内デリバリー市場規模を8240億円と見込んだ。ただし、これは自社配送なども含む市場であり、そのすべてを3社が取り合うわけではない。


この市場を、今後誰がどこまで取り込むのか。競合が撤退すれば、その注文の一部は残る会社へ移るだろう。市場全体が大きくならなくても、競争相手が減れば、自社の取扱高を伸ばす余地はある。注文が集中すれば、配送効率を高める可能性も生まれる。ただし、撤退したサービスの利用者全員が他社へ移るとは限らない。そのままデリバリーを使わなくなる人もいる。


3社が共存するには、既存の注文を奪い合うだけでなく、新たな利用者や利用場面を生み出す必要がある。食料品減税に需要拡大の期待を寄せるとしても、それだけで各社の収益性が改善するわけではない。


そして、安さで利用を広げた後には、再びサービスの質が問われる。頼みたい時間に届けられるか。予定どおりに届くか。安心して受け取れるか。問題が起きたときに対応してもらえるか。無料で試した人をつなぎ留めるのは、こうした日々の体験である。


Uber Eatsの規模と収益基盤、出前館の顧客接点、ロケットナウの運営ノウハウ。3社には、それぞれ投資回収への道筋がある。送料無料によって市場そのものが広がれば、共存の余地は生まれる。しかし、限られた注文を費用をかけて奪い合うだけなら、次の撤退を待つ消耗戦になる。


Uber Eatsがさらに市場を押さえるのか。出前館とロケットナウが強みを生かし、3社が並び立つのか。各社とも簡単には引けない戦いだ。札束の叩き合いの先に、誰が持続的な利益を残せるのか。送料無料の本当の勝敗は、そこにある。


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