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フードデリバリー市場はなぜ撤退が相次ぐのか。menu撤退で見えたUber Eats(ウーバーイーツ)・出前館・ロケットナウ「3強時代」の死角

  • 執筆者の写真: 三輪大輔
    三輪大輔
  • 4 日前
  • 読了時間: 14分

更新日:3 日前

                            三輪大輔|外食ビジネスアナリスト


コロナ禍をきっかけに急拡大したフードデリバリー市場で、大きな再編が進んでいる。


KDDIは2026年8月、子会社のmenuが展開するフードデリバリーサービスを9月30日で終了し、その後menuを解散・清算すると発表した。KDDIは、フードデリバリー市場を取り巻く競争環境の変化や今後の事業見通しを総合的に検討した結果としている。


menuは2020年、サービスの認知拡大に向けてデリバリーバッグや自転車などを使ったプロモーションを展開。日本発のフードデリバリーとして存在感を高めてきた。
menuは2020年、サービスの認知拡大に向けてデリバリーバッグや自転車などを使ったプロモーションを展開。日本発のフードデリバリーとして存在感を高めてきた。

国内ではこれまで、foodpanda、DiDi Food、Chompyなどが撤退し、2026年3月にはWoltも日本市場から撤退した。そして今回のmenu撤退によって、国内のフードデリバリー市場はUber Eats、出前館、ロケットナウを中心とした「3強時代」が鮮明になってきた。


一方で、市場そのものが縮小を続けているわけではない。2025年のデリバリー市場規模は8240億円。2024年には一度減少したものの、2025年は再び増加に転じた。背景には、店頭と同じ価格で提供する「お店価格」や配送料無料など、利用ハードルを下げる施策の広がりがある。つまり、需要そのものがなくなっているわけではない。価格を下げれば利用は動く。しかし、その需要を持続的な利益につなげられるかは別の問題だ。


ただ、3社に集約されたからといって、フードデリバリー市場が安定したわけではない。むしろ、ロケットナウが送料・サービス料無料を打ち出し、出前館も「お店価格」を急速に拡大するなど、競争はさらに激しくなっている。


利用者にとっては歓迎すべき競争だ。しかし、料理を届けるためには当然コストがかかる。商品価格や送料を下げれば、その負担をプラットフォーマー、加盟店、配達員の誰かが引き受けなければならない。menuの撤退は、現在のフードデリバリー市場が抱える難しさを象徴する出来事ともいえる

menu撤退が示すフードデリバリー市場の厳しさ

menuは日本発のフードデリバリーサービスとして事業を拡大し、2020年にはKDDIと資本業務提携。その後KDDIの連結子会社となり、Pontaパスなど通信会社の経済圏との連携も進めてきた。


それでも今回、KDDIはサービス継続ではなく終了を選択した。興味深いのは、menuのサービスが他のフードデリバリー企業へ引き継がれるのではなく、サービス終了後に会社そのものが解散・清算されることだ。


もちろん、水面下でどのような検討や交渉が行われたのかは外部からは分からない。ただ、大手通信会社の傘下にありながら事業継続が難しくなったという事実は、それだけ現在のフードデリバリー市場の競争環境が厳しいことを物語っている。


フードデリバリーは、利用者が増えれば簡単に利益が積み上がるビジネスではない。システム開発、決済、販促、カスタマーサポート、配達員への報酬など、注文が発生するたびにさまざまなコストがかかる。しかも現在、その中で価格競争まで激しくなっている。各社の体力が問われる「我慢大会」のような状況になっているのだ。


ロケットナウはなぜ安い?価格競争が一変

その競争を大きく変えたのが、米Coupangグループの日本法人が運営するロケットナウだ。

2025年1月に日本でサービスを開始し、送料・サービス料無料を前面に打ち出して急速に利用者を増やした。公式サイトによると、アプリは2026年6月までに累計700万ダウンロードを突破。店頭と同じ価格で注文できる店舗も1万店を超えている。


これまでフードデリバリーには、大きな弱点があった。「便利だが高い」ことだ。飲食店がプラットフォームに支払う手数料などを考慮して、デリバリーの商品価格を店頭より高く設定するケースは珍しくない。さらに送料やサービス料が加われば、店頭で食べる場合との価格差はさらに広がる。この価格差によって、フードデリバリーは「雨の日だから頼む」「今日は疲れているから利用する」といった、日常より少し特別なサービスになっていた。


ロケットナウが狙ったのは、まさにそこだった。送料やサービス料を無料にし、さらに「お店と同価格」の店舗を増やすことで、「デリバリーは高い」という最大の心理的ハードルを取り除こうとしている。その戦略によって、フードデリバリー市場の競争軸は大きく価格へ傾いた。


出前館の「お店価格」で注文は2.9倍に

既存大手も動いている。出前館は2026年3月から、店頭と同じ商品価格で注文できる「お店価格で出前館」を全国展開した。


その効果は大きい。2026年3月の実績では、「お店価格で出前館」に参加した加盟店のオーダー数は、参加前と比較して平均2.9倍に増加。出前館全体のオーダー数も2月比で約1.3倍となった。さらに、新規ユーザーと1年以上利用していなかった復帰ユーザーも2月比で2.1倍超となっている。対象店舗も急速に増え、6月には約2万1000店まで拡大した。つまり、「フードデリバリーは価格が高いから利用頻度が伸びない」という仮説は、一定程度裏付けられたことになる。


店頭と同じ価格になれば、人は使う。それまで月に1回だった利用が、月に2回、3回となれば、市場そのものも大きくなる。以前の記事でも触れたが、現在のフードデリバリー各社が狙っているのは、1回の注文から大きな利益を得ることよりも、利用の「頻度」を高めることだ。


「高いから時々使うサービス」から「日常的に使うサービス」へ。フードデリバリーを生活インフラへ変えようとしているのである。


出前館はなぜ赤字なのか 「お店価格」の裏側

ただし、「お店価格」で需要が増えれば、すべて解決するわけではない。ここにフードデリバリー市場の難しさがある。商品を店頭と同じ価格にしても、料理を届けるためのコストまで安くなるわけではない。注文を受けるシステム、決済、カスタマーサポート、広告宣伝、そして配達員への報酬が必要になる。


出前館自身も2026年3月から料金体系を「商品代金+サービス料+送料」に変更する一方、出前館が届ける対象店舗では送料無料施策を実施している。利用者から取る料金を抑えれば、そのコストは消えるのではなく、どこかへ移る。プラットフォーム側が負担すれば、事業者の利益が薄くなる。店舗が負担すれば、デリバリー1件当たりの採算が悪化する。配達員への報酬を抑えれば、今度は人材を集めにくくなる。


「お店価格」によって注文が増えているのは事実だ。一方で、その注文増加をどのように利益へ変えるかという課題は残る。利用者には安く。店舗には売上を。配達員には十分な報酬を。そしてプラットフォーム自身も利益を確保する。このバランスを取ることが、フードデリバリー市場では極めて難しい。


Uber Eats・出前館・ロケットナウ「3強」の現在地

menu撤退後のフードデリバリー市場は、Uber Eats、出前館、ロケットナウを中心とした競争へ集約されていくとみられる。ただし、3社がまったく同じ戦い方をしているわけではない。


Uber Eatsの強みは、国内で築いてきた利用者基盤とブランド力だ。さらに現在は飲食店の料理だけでなく、スーパーやコンビニ、ドラッグストアなどへ配送対象を広げている。「食事を届けるアプリ」から、「さまざまな商品を短時間で届けるプラットフォーム」へと領域を拡張しているわけだ。


出前館は、LINEヤフーとの連携が大きな武器になる。LYPプレミアム会員向けの特典を提供しながら、「お店価格」と送料無料を組み合わせ、日常的な利用を増やそうとしている。


一方、ロケットナウは送料・サービス料無料という分かりやすい価格訴求で急成長している。


つまり、下記のようにそれぞれ異なる武器でフードデリバリー市場の主導権を争っているのだ。


Uber Eatsは利用者基盤と総合プラットフォーム化。

出前館はお店価格とLINEヤフー経済圏。

ロケットナウは価格競争。


フードデリバリー最大の壁は「配達員」

ただ、3社すべてに共通する問題がある。それが配達員だ。


フードデリバリーは、スマートフォンの画面だけを見れば非常にデジタルなサービスである。アプリで注文し、キャッシュレスで決済する。システムが店舗と配達員をマッチングし、GPSで商品がどこまで来ているかも分かる。


しかし最後の数キロは、必ず誰かが料理を運ばなければならない。どれだけDXやAIが進んでも、現在のフードデリバリーは極めて労働集約的なビジネスでもある。しかも日本では物流、外食など幅広い産業で人手不足が続いている。配達員も一つのサービスだけで働いているとは限らない。Uber Eats、出前館、ロケットナウなど複数のプラットフォームを使い分けながら、注文状況や報酬に応じて働く人もいる。


つまりプラットフォーマーは、「利用者に選ばれる」だけでなく、「飲食店に選ばれる」、さらに、「配達員にも選ばれる」必要がある。フードデリバリーは、利用者、店舗、配達員という三者がそろって初めて成立する。注文が爆発的に増えたとしても、料理を運ぶ人が足りなければ市場は拡大できない。生活インフラになろうとするほど、この問題は大きくなる。


安さだけでは解決できない「配送品質」

もう一つ、価格だけでは解決できない問題がある。配送品質だ。


フードデリバリーが日本で広がり始めた当初、Uber Eatsなどが提示したのは、会社員や学生などが空き時間を使って働く「ギグワーク」という新しい働き方だった。プラットフォーム側にとっても、大量の配達員を直接雇用することなく、需要に応じて配送能力を確保できる合理的な仕組みだった。


しかし、市場が拡大する中で、必ずしも想定通りに人材を確保できているとは言い切れない。とりわけ注文が集中する昼食時や夕食時、雨天時など、本当に人手が必要な時間帯に十分な配達員を確保することは簡単ではない。複数のプラットフォームを掛け持ちし、報酬や注文状況に応じて稼働先を変える配達員も少なくない。


その結果、プラットフォーマーはまず「必要な数の配達員を確保すること」に追われやすい。人数をそろえることが最優先になれば、接客や身だしなみ、商品の扱い方、安全面まで含めて、均一な品質を担保することは難しくなる。


飲食店がどれだけ丁寧に料理を作っても、店を出た後の商品状態や顧客体験は、配送を担う配達員によっても左右される。料理は温かいまま届くのか。商品は崩れていないか。配達員に清潔感はあるのか。そして、安心して自宅で受け取れるのか。実際、配送中の商品を配達員が無断で飲食したとされるケースがSNS上で問題視されるなど、配送品質への不安が表面化する場面もある。安さだけでは埋められない不安が、ここに残っている。


女性や家族まで広がらなければ限界がある

さらに重要なのが、利用者層の広がりだ。


フードデリバリーは、見知らぬ人が自宅まで商品を届けるサービスでもある。一人暮らしの女性であれば、「誰が自宅まで来るのか」という不安が利用をためらう理由になり得る。家族で利用する場合も同様だ。子どもがいる家庭ほど、価格だけでなく「安心して頼めるか」を重視する。つまり、送料やサービス料を下げれば注文数は増えても、それだけで女性や家族層まで利用が広がるわけではない。


価格面では日常利用に近づいていても、配送品質への不安が残れば、利用者は限定的になる。フードデリバリーが本当の意味で生活インフラになるには、単身者や若年層だけでなく、女性や家族層まで日常的に使えるサービスになる必要がある。


そのためには、配達員の数を確保するだけでは足りない。商品の扱い方、清潔感、接客、安全性まで含めて、一定の配送品質をどう担保するのか。現在のフードデリバリー市場では、「配達員を集められるか」だけではなく、「安心して任せられる配達員を十分に確保できるか」が、次の成長を左右する大きなボトルネックになっている。


マクドナルドやすかいらーくは「別のゲーム」をしている

ここで重要なのが、Uber Eats、出前館、ロケットナウ以外の存在だ。それが大手外食チェーンである。


例えばマクドナルドは、公式アプリから「マックデリバリー」を利用できる。すかいらーくも自社の宅配サイトを持ち、公式アプリと共通の会員基盤で注文を受け付けている。宅配ピザも、フードデリバリープラットフォームが広がる以前から自社配送網を構築してきた。


もちろん、大手チェーンもUber Eatsや出前館などを併用している。重要なのは、「自社配送か外部プラットフォームか」という二者択一ではないことだ。


大手チェーンは両方を使える。新しい利用者と接点を持つためにはUber Eatsや出前館などを活用する。一方、すでにブランドを知っている顧客には自社アプリから注文してもらう。これは、Yahooの記事で取り上げた「自社経済圏」の考え方にもつながる。


大手チェーンは自分で客を集められる

プラットフォーマーと大手外食チェーンの最大の違いは、集客力である。


例えばマクドナルドを食べたい人が、必ずUber Eatsを開いて「ハンバーガー」と検索する必要はない。最初からマクドナルドの公式アプリを開けばいい。すかいらーく、モスバーガー、CoCo壱番屋なども同様だ。ブランドそのものが集客装置になっている。


自社アプリで注文を受ければ、デリバリーだけを見る必要もない。昨日は店舗で食べた。今日はテイクアウト。週末はデリバリー。それらを一つの会員基盤でつなぎ、クーポンやポイントを使って次の利用につなげられる。顧客との接点を自社で持つことができるのだ。


実際、日本マクドナルドの2026年1~6月の全店売上高は前年同期比8.0%増となっている。もちろん、これは自社デリバリーが好調だからという意味ではない。ただし、「フードデリバリープラットフォームが苦戦している=デリバリー需要そのものが弱い」と考えるのも違う。


むしろ現在問われているのは、「第三者が飲食店と消費者の間に入り、配送まで担うプラットフォーム型フードデリバリーは、持続的に利益を生み出せるのか」というビジネスモデルそのものではないだろうか。


消費税減税でデリバリーは爆発的に伸びるのか

そして2027年には、フードデリバリー市場を大きく動かす可能性のある変化が控えている。政府は2026年8月、2027年4月1日から2年間、軽減税率の対象となっている飲食料品の消費税率を1%にする基本方針を決定した。現在、店内飲食には10%、テイクアウトやデリバリーの対象となる飲食料品には軽減税率8%が適用されている。予定通り飲食料品の消費税率が1%になれば、店内飲食との税率差は現在より大きくなる。これはテイクアウトやフードデリバリーにとって、かなり大きな追い風になる可能性がある。


では、消費税減税によってフードデリバリー市場は爆発的に伸びるのだろうか。私は、そこまで単純ではないと考えている。料理そのものの税率が下がっても、料理を届けるためのコストはなくならない。送料やサービス料、店舗側が負担する手数料、配達員への報酬、注文増加による厨房の負担。さらに、容器や包材などの資材価格も上昇している。コロナ禍では、多くの飲食店が売上を補うためにデリバリーへ参入した。しかし実際に取り組む中で、「売上は立っても利益が残りにくい」と感じた店舗も少なくない。店頭販売に比べて手数料や包材費などの負担が大きく、注文が増えれば厨房オペレーションへの負荷も高まる。フードデリバリーは、単に注文数を増やせば利益が積み上がるビジネスではないのだ。


さらに、前述した配送品質への信頼という問題も残る。価格が下がっても、安心して利用できなければ、女性や家族層まで利用者が広がるとは限らない。加えて、マクドナルドやすかいらーくなど、自社アプリや自社配送網を持ち、顧客との接点を自ら握る外食企業との競争もある。


消費税減税は、フードデリバリー市場の需要を押し上げる大きな材料にはなるだろう。しかし、それだけで店舗の採算性や配達員不足、配送品質といった構造的な課題まで解決するわけではない。


「3強時代」は安定ではなく、本当の競争の始まり

menu撤退によって、日本のフードデリバリー市場はUber Eats、出前館、ロケットナウを中心とした「3強時代」へ向かっている。しかし、3社に集約されれば競争が落ち着くとは限らない。むしろ逆だ。


ロケットナウが送料・サービス料無料で市場を攻め、出前館は「お店価格」と送料無料を拡大する。Uber Eatsも巨大な利用者基盤を武器に、フード以外までサービス領域を広げている。価格差が縮まれば、利用者にとってフードデリバリーはさらに利用しやすくなる。実際、「お店価格」で注文が大きく増えたことを見ても、潜在的な需要がまだ存在していることは間違いない。


一方、その裏側では、プラットフォームの収益性、店舗側の負担、配達員の確保、配送品質といった問題がより鮮明になっている。さらにマクドナルドやすかいらーくのような大手外食チェーンは、自社アプリや自社サイトを軸に顧客との関係を自ら築こうとしている。


つまり、これからのフードデリバリー市場は、「Uber Eats対出前館対ロケットナウ」だけを見ていても全体像は分からない。プラットフォーム同士の競争。プラットフォームと外食企業の主導権争い。安さと収益性。利便性と配送品質。そして利用者、店舗、配達員の三者をどのようにつなぐのか。


menuの撤退は、単にフードデリバリーサービスが一つ減ったニュースではない。「高いから時々使うサービス」から「日常的に使う生活インフラ」へ。フードデリバリー市場は、いままさにそこへ向かおうとしている。しかし、安くすれば生活インフラになれるわけではない。むしろ3強時代に入ったことで、その難しさがこれまで以上にはっきりと見え始めている。


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