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外食は、改めて夢のある産業になっている。スターバックス日本事業の売却観測から考えたこと

  • 執筆者の写真: 三輪大輔
    三輪大輔
  • 6月16日
  • 読了時間: 5分

更新日:2 日前

                          三輪大輔|外食ビジネスアナリスト


スターバックス日本事業に売却観測

2026年6月10日、米スターバックスが日本事業の株式売却を含む選択肢を検討していると報じられました。取引額は4000億〜5000億円規模に達する可能性があるとされます。


スターバックスにとって日本は最大級の海外市場の一つです。国内店舗数は約2100店に上り、その約9割が日本の完全子会社による直営店舗だと報じられています。日本の都市生活の中に深く浸透した巨大ブランドに、なぜこれほどの評価がつくのでしょうか。


さらに問われるのは、その規模の事業を誰が買えるのかです。これは単なる売却検討ではありません。外食ブランドの価値を誰が、どのような形で保有し、次の成長につなげていくのかを示す動きでもあります。


日本のスターバックスは、都市生活に定着したブランド

日本のスターバックスは、単なるカフェチェーンではありません。仕事の合間に立ち寄る場所であり、待ち合わせの場所であり、勉強や作業をする場所であり、移動中に一息つく場所でもあります。


駅前、商業施設、オフィス街、住宅地、観光地など、さまざまな立地に入り込み、それぞれの生活シーンに対応してきました。外食チェーンでありながら、都市のインフラに近い存在になっている。これが、日本におけるスターバックスの強さだと感じています。


なぜ売却観測が出ているのか

では、なぜ日本事業の売却観測が出ているのでしょうか。背景には、グローバル企業としての資本戦略があります。世界各国で事業を展開する企業にとって、どの市場に経営資源を集中し、どの市場ではパートナーや投資家の力を借りるのかは、常に重要なテーマです。


スターバックスは中国事業についても、持ち分売却を含む選択肢を検討していると報じられてきました。世界的な競争環境が変化する中で、各地域の事業をどのような形で保有し、成長させるのかを見直す動きが出ていると考えられます。


ここで大事なのは、日本事業が弱いから売却される、という単純な話ではないことです。むしろ、日本事業に価値があるからこそ、投資対象として注目されている側面があります。

ブランドが強い。店舗網がある。利用者に深く浸透している。直営比率が高く、事業としてのコントロールもしやすい。こうした条件を備えた外食ブランドは、投資家や事業会社にとって魅力的に映ります。


誰が買えるのかという問い

そして、その規模を考えると、買い手も限られます。4000億〜5000億円規模の案件となれば、一般的な外食企業が簡単に手を出せるものではありません。候補となるのは、大規模な資金力を持つ投資ファンド、総合商社、あるいは消費財や小売、外食領域に強みを持つ大企業などでしょう。


つまり、このニュースは「スターバックスが日本事業を売るかもしれない」という話にとどまりません。外食ブランドの価値を、誰が、どのような資本で保有する時代になっているのかを考えるきっかけでもあります。


外食ブランドは投資対象になっている

近年、外食企業や外食ブランドが投資家から注目される機会は増えています。外食産業は、人手不足、原材料費の高騰、光熱費の上昇、賃上げへの対応など、厳しい課題を抱えています。日々の店舗運営は決して簡単ではありません。むしろ、外から見える以上に難しい産業です。


一方で、見方を変えれば、外食は非常に大きな可能性を持つ産業でもあります。強いブランドがある。人が集まる立地がある。日常的に利用される顧客接点がある。顧客体験を磨く余地がある。海外展開の可能性がある。DXやAIによって、生産性を高める余地もある。これらが組み合わさると、外食企業は単なる飲食店の集合体ではなく、大きな企業価値を持つ事業体になります。スターバックスの日本事業をめぐる売却観測は、そのことを改めて示しているように思います。


一杯のコーヒーが企業価値になる

外食は、これまで「大変な商売」として語られることが多かった産業です。確かに、現場は大変です。人を採用し、教育し、料理や飲み物を提供し、接客を行い、店舗を清潔に保ち、日々の売上をつくっていく。そこには、多くの手間と努力があります。しかし、その手間や努力が、顧客体験として積み重なり、ブランドになり、やがて企業価値につながっていく。ここに外食産業の面白さがあります。


一杯のコーヒー、一皿の料理、一つの店舗体験が、生活者の日常に入り込む。その積み重ねが、ブランドをつくります。そして、そのブランドが社会に必要とされる存在になれば、投資家や企業からも評価される対象になります。


外食は、改めて夢のある産業になっている

その意味では、外食は改めて夢のある産業になっているのだと思います。もちろん、外食企業にとって重要なのは、投資家から注目されることそのものではありません。目の前のお客様に価値を届け続けることです。店舗で働く人が誇りを持てる環境をつくり、商品やサービスの質を高め、また来たいと思ってもらえる体験を提供することです。ただ、その積み重ねが企業価値として評価される時代になっていることも、外食産業にとって大きな意味を持ちます。


スターバックス日本事業をめぐる動きは、一つの企業のニュースにとどまりません。外食ブランドがどのように価値を持ち、誰から評価され、次の成長につながっていくのかを考えるうえで、とても示唆的な出来事だと感じています。


外食は、日常に最も近いビジネスの一つです。だからこそ、社会の変化、消費者の変化、都市の変化、投資の変化が、店舗の姿に表れます。スターバックスの日本事業をめぐる動きから見えてくるのは、外食産業がまだまだ大きな可能性を持っているということです。


このテーマについては、ビジネス映像メディア「PIVOT」でもコメントしました。ご覧いただけましたら幸いです。



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