2026年9月期のスシロー決算を分析。売上5000億円を突破、1兆円へ向かう国内・海外戦略とは

三輪大輔|外食ビジネスアナリスト
スシローの2026年9月期決算では、運営会社のFOOD & LIFE COMPANIES(F&LC)の連結売上収益が前期比26.9%増の5153億円となり、初めて5000億円を超えた。営業利益は47.0%増の515億円。売上収益と営業利益は、いずれも3期連続で過去最高を更新した。
成長をけん引したのは中国大陸を中心とする海外事業で、営業利益は国内スシロー事業を上回った。一方、国内も既存店売上が7.9%伸び、客数と客単価がそろって増えた。F&LCは2031〜32年9月期ごろに売上収益1兆円超を目指す。
国内で既存店をどう伸ばし、海外で採算と品質を保ちながらどう店舗網を広げるのか。11月6日の決算説明会での質疑を交え、両事業の成長戦略を読み解く。
スシローの決算は売上5153億円、営業利益率10.0%
2026年9月期の連結売上収益は5153億円で前期比26.9%増、営業利益は515億円で47.0%増だった。売上収益と営業利益がそろって過去最高を更新するのは3期連続。今期の前期比は、譲渡した京樽事業を両期から除いた継続事業同士で比較している。
2026年9月期 | 売上収益 | 営業利益 |
F&LC連結 | 5153億円(26.9%増) | 515億円(47.0%増) |
国内スシロー事業 | 2937億円(10.5%増) | 202億円(12.3%増) |
海外スシロー事業 | 2129億円(62.0%増) | 275億円(68.4%増) |
連結の売上原価率は43.0%から43.3%に上がったが、営業利益率は8.6%から10.0%に改善した。会社の要因分析で最大の押し上げ要因は海外スシローの販管費で、連結の営業利益率に0.9ポイント寄与した。海外事業の売上は国内スシローを下回るが、営業利益では275億円と国内の202億円を上回った。
デジローで平日の客足が増え、一組の人数も増えた
スシローは2022年10月、郊外型店舗の黄皿を税込110円から120円に引き上げ、創業以来続けてきた税抜100円の通常皿に区切りをつけた。

国内の既存店売上は2023年9月期に8.4%減ったが、その後は3期連続で前期を上回った。直近は7.9%増で、会社計画の6.0%増を超えた。客数が2.5%増え、客単価は5.2%上がっている。
伸びを支えた施策の一つがデジローだ。大型のタッチ画面にすしが流れ、目に留まったネタをその場で注文できる。画面を眺めていると、最初は頼むつもりがなかった一皿にも手が伸びる。景品が当たるゲームやキャラクターの演出は、子どもが家族に「あのスシローに行きたい」と言うきっかけにもなり得る。
会見で私が導入効果を尋ねると、国内事業を管掌する新居耕平専務執行役員は、席の回転率が落ちる一方、平日の客足が底上げされ、1組あたりの来店人数も増えたと説明した。客単価については、注文する皿数と選ばれる皿の単価がともに上がったという。
デジローは国内671店のうち227店に導入された。会社は、改装した店舗の売上が導入前と比べて平均でおおむね1割伸びたと説明している。これは改装店舗の導入前後の比較で、国内既存店全体の7.9%増とは集計が異なる。
国内出店は都市型が中心、一店ごとの採算を重視
国内の新規出店は今期14店だった。千日前や天神の繁華街、笹塚や綾瀬の駅前にも店を出し、新店全体の業績は会社の計画を上回った。新中計では年25店程度を出し、2029年9月期末に国内740〜750店を目指す。
会見では、国内の出店方針をどう変えたのか、都市型とそれ以外の店舗をどう配分するのかという質問が出た。新居氏は、出店数へのこだわりをいったん手放し、一店ごとに業績を伸ばせるかを重視するようにしたと説明した。今後は出店余地が最も大きいとみる都市型が中心となり、物件の状況に応じて準都市型や郊外にも出す考えだ。

国内事業の計画についても、見込まれるコストを先に織り込み、目指す利益から売上を組み立てたという。デジローで今ある店の売上を伸ばしながら、新店は一店ずつ採算を見極める。年25店という出店計画の背景には、こうした判断がある。
スシローの新中計 2029年9月期に8310億円、その先に売上1兆円
今回の決算発表にあわせ、F&LCは2027年9月期からの3カ年を対象とする新中期経営計画も公表した。最終年度の2029年9月期に、連結売上収益8310億円、営業利益880億円、営業利益率10.6%を目指す。その先には、2031〜32年9月期ごろの売上収益1兆円超を掲げる。従来の想定から3〜4年前倒しした。
国内では既存店への投資を続けながら、年25店程度を出す。海外では中国大陸を中心に、年120店程度の出店を計画する。2026年9月期から2029年9月期までの増収分の約8割を海外スシロー事業が担い、2028年9月期には海外の売上収益が国内スシロー事業を上回る見通しだ。今回の決算ですでに営業利益は海外が国内を上回った。新中計では、売上でも逆転する姿を描いている。
中国で72店を出したスシローが、海外で年120店とする理由
2026年9月期は海外で108店を新規出店し、期末の海外店舗数は340店になった。新店のうち72店が中国大陸で、同地域の店舗数は63店から135店へと倍以上に増えた。タイや台湾などでも店舗網を広げ、ニューヨークのタイムズスクエア周辺では、スシローの米国1号店の開業も控える。
なぜ、海外の出店ペースを年120店程度としたのか。会見で海外事業を管掌する加藤広慎副社長執行役員は、年120店程度について、人を育てながら店舗の品質を保てる出店ペースだと説明した。店を任せられる人材を育てるには、現地で繰り返し訓練する時間がいる。すでに店舗網が広がった市場では、出店を急いで売上を増やしても、コストが先にかさみ、利益率は上がりにくい。市場によっては、現地の客に合った商品を開発し、今ある店を育てる余地もある。
中国大陸でどれだけ出店余地が残っているかは、今後も重要な論点になる。ただ、出店できる物件が見つかっても、それだけで店を増やせるわけではない。店を任せる人を育て、その店に出すすしのネタを安定して届けるところまで準備がいる。
新中計で重視するサプライチェーン 増える店舗に魚をどう届けるか
そこで新中計が成長を支える経営基盤の一つに位置づけたのが、生産者や取引先との共創によるサプライチェーンの強化だ。加藤氏は、店舗網が広がるほど、従来の仕入れ先だけでは必要な魚を確保しにくくなると説明した。店が増えれば仕入れ量も増えるが、同じ産地や取引先が、品質を保ちながら供給量を増やせるとは限らない。海外事業の利益率を押し下げるとしても、調達の仕組みを見直す必要があるという。
同社は調達ルートを増やし、進出先でも使える魚を探している。さらに国内では、水産会社の協立と合弁会社を設立し、地元の養殖事業者とブリ(はまち)の生産を進めている。山本雅啓社長は会見で、質の高い養殖事業者との関係を強めるとともに、養殖の効率を高める取り組みにも関わっていく考えを示した。仕入れ先を探すだけで確保できる量に限りがあるなら、生産者と一緒に供給力そのものを増やす必要がある。
海外スシロー事業の営業利益率は2026年9月期に12.9%だったが、中計最終年度は計画値から計算すると約12.1%になる。会社は会見で、利益率に負担がかかっても調達の仕組みを見直す必要があることを、その背景の一つに挙げた。海外で年120店を出し続けるには、次の店を任せる人を育てるのと同じように、その店に届ける魚も先に手当てしなければならない。サプライチェーンへの投資は、売上1兆円に向けて出店を続けるための先行投資でもある。


