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外食売上ランキングの地殻変動——「ビッグ4」へ向かう勢力図。ゼンショーの帝国、マックの国内1兆円、すかいらーくのDX、スシローの世界戦略

執筆者の写真: 三輪大輔
三輪大輔
3月4日
読了時間: 12分

更新日:4 日前

                三輪大輔|外食ビジネスアナリスト


日本の外食産業を牽引してきたのが、ゼンショーホールディングス、日本マクドナルドホールディングス、すかいらーくホールディングスだ。牛丼や回転寿司、ハンバーガー、ファミリーレストランなど、それぞれが日常の食を支える巨大な店舗網を築き、幾度もの経営環境の変化を乗り越えてきた。


その3社に迫っているのが、回転寿司チェーン「スシロー」を展開するFOOD & LIFE COMPANIESである。2025年9月期の売上収益は4295億円に拡大。さらに2026年9月期は5050億円を見込み、すかいらーくが2026年12月期に予想する5000億円と肩を並べる水準に達している。決算期は異なるものの、その追い上げの勢いは鮮明だ。 一方、日本マクドナルドも成長を続けている。2025年の全店売上高は8886億円と過去最高を更新し、国内で1兆円が視野に入る規模へと育った。


ゼンショーの規模と調達力、すかいらーくのDXと店舗運営力、スシローの海外展開、そしてマクドナルドの巨大な店舗網と収益力。同じ外食企業でも、成長を支える仕組みは異なる。4社の戦い方を比較しながら、外食産業の勢力図がどこへ向かうのかを考えたい。


ゼンショーの独走:1兆円の「帝国戦略」

現在、首位を走るのはゼンショーホールディングスだ。2011年にトップへ躍り出て以来、その勢いは独走状態にある。2025年3月期決算では、日本の外食企業として史上初となる連結売上高1兆円を突破。2位のすかいらーくに約2.5倍もの差をつける、文字通りの「一強」である。


ゼンショーの成長構造は、プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)の視点で見るとよく分かる。PPMとは、複数業態を「市場成長率」と「市場シェア」の2軸で位置づけ、経営資源を戦略的に配分する手法を指す。事業は一般に、「花形」「金のなる木」「問題児」「負け犬」の4類型に分類され、それぞれに応じて投資、維持、育成、撤退といった判断が下される。


同社の「金のなる木」が「すき家」だ。国内の牛丼市場は約5,000億円規模で成熟しており、すき家、吉野家、松屋の大手3社で約8割を占める寡占状態である。その中でも、店舗網で頭一つ抜けているのがすき家だ。2008年に吉野家を追い抜いて以降、快進撃が続く。実際あ、2025年3月期の店舗数は「すき家」が1996店。「吉野家」は約1259店、「松屋」は1169店と、その差は明確だ。


圧倒的な店舗網を武器に、同社は規模の経済を最大限に生かす。さらに、コスト高騰による値上げラッシュの中でも、戦略的な価格維持や一部値下げを断行。価格競争力を保ちながら支持を拡大した。この安定したキャッシュ創出力こそが、ゼンショー全体を支える基盤である。


その恩恵を受けて成長軌道に乗ったのが、「花形」に位置づけられる「はま寿司」だ。回転寿司市場はロードサイドを中心に競争が激化しているものの、なお拡大基調にある。2023年の市場規模は7829億円と前年比108%。2024年も約8300億円規模へと伸長する見通しだ。


そうした中、はま寿司は他社が100円寿司からの撤退を進める中でも、100円(税別)メニューを維持。価格訴求力を武器に存在感を高め、長年2位だったくら寿司を上回った。さらに、グループで蓄積した物件情報を活用し、出店戦略をロードサイド中心から都市型へと拡張。立地選択の自由度は他社に比べて高い。


インバウンド需要も追い風となる中、中国をはじめとする海外展開の成否が各社の明暗を分ける。くら寿司は中国市場で苦戦を強いられた。一方、スシローとはま寿司は中国での業績が好調だ。海外戦略は回転寿司各社の成長力を左右する重要な分岐点となる。今後、上位2社と3位との間で差が広がる可能性は否定できない。回転寿司市場は依然として拡大基調にあり、その中核を担うはま寿司は、ゼンショーの次なる成長エンジンとして存在感を高めていくだろう。


すき家やはま寿司が価格競争で疲弊しにくい背景には、食材の調達から製造、物流、販売までを自社で一貫して担う独自の「MMD(マス・マーチャンダイジング・システム)」がある。この垂直統合モデルが、他社の追随を許さないコスト競争力の源泉となっている。


その強みは、ゼッテリアでも生かされていく。ゼッテリアは、ゼンショーにとって「問題児」に位置づけられる存在だ。苦戦していたロッテリアを買収し、ブランドを刷新した。単一ブランドで勝負するモスバーガーやバーガーキングとは異なり、グループ全体の調達力や物流網というリソースを背景に戦える。バーガー市場の勢力図を書き換える可能性を秘めている。


このようにゼンショーは複数の魅力的なブランドを擁し、ポートフォリオ経営の強みを最大限に生かして拡大してきた。プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントの視点で見れば、「負け犬」に位置づけられるのがビッグボーイだろう。店舗の閉鎖が進む一方、その跡地に「オリーブの丘」を出店するケースもある。縮小業態から成長業態へ資源を再配分する。この循環こそ、ポートフォリオ経営が機能している証左である。同社が掲げる「世界から飢餓と貧困を撲滅する」という理念。その延長線上にあるのは、世界一の外食企業という通過点だ。


マクドナルドの底力:国内売上1兆円に迫る店舗網と収益力

日本マクドナルドの強さは、巨大な店舗網が生み出す売上と、高い収益力にある。2025年の直営店・フランチャイズ店を合わせた全店売上高は、前年比7.2%増の8886億円と過去最高を更新した。さらに2026年1~9月も前年同期比8.2%増と成長を続け、国内で1兆円が視野に入る規模に達している。


本部の業績も好調だ。2025年12月期の連結売上高は前期比2.7%増の4166億200万円、営業利益は同10.9%増の532億5700万円となった。営業利益率は約12.8%。この高い収益性を読み解くには、直営店の売上に加え、フランチャイズ店からのロイヤルティーなどを収入とする事業構造も押さえる必要がある。


その基盤にあるのが、朝・昼・カフェ・夜と幅広い時間帯の需要を取り込み、店内飲食・テイクアウト・デリバリーなど、さまざまな利用方法に対応してきたことだ。同じ店舗や設備を生かしながら、来店機会と販売機会を積み重ねている。


もっとも、その強さは販売方法だけでは語りきれない。効率的な店舗オペレーション、人材育成の中核を担う「ハンバーガー大学」、そして1971年の日本上陸以来蓄積してきた出店や店舗運営のノウハウ。こうした仕組みが、全国の店舗で商品とサービスを提供する力を支えている。


外食各社が新業態の開発やM&Aによって事業領域を広げる中、日本マクドナルドは、一つのブランドを磨くことで成長を続けてきた。ただし、同じ商品を売り続けているわけではない。ハンバーガーを中心としながら、朝食やカフェ、夕食へと利用場面を広げ、消費者との接点を増やしている。ブランドを増やすのではなく、一つのブランドが応えられる需要を広げてきたのである。


今後、その競争相手として注目されるのが、ゼンショーホールディングスの「ゼッテリア」だ。グループの調達力や物流網を背景に、どこまで店舗網と支持を広げられるか。一方のマクドナルドには、長年かけて築いたブランド力と店舗運営の仕組みがある。競争の行方を左右するのは、商品の価格だけでなく、利便性や品質、サービスを含めた総合力となるだろう。


すかいらーくの変革:DXと「人的資本」の融合

3位に位置するのは、すかいらーくホールディングスだ。同社の強みは、「人的資本経営」と「DXの推進」にある。実際、すかいらーくグループは2027年12月期を最終年度とする中期経営計画で、「人的資本の充実」「DXの推進」「ESGの推進」の3つを重要な経営課題として掲げている。


すかいらーくの経営思想を象徴するのが「店舗中心経営」だ。人をコストとして削減することで利益を生むデフレ型経営ではなく、店舗を主体とした運営へと舵を切った。店長やマネジャーが地域特性や顧客の声に応じて意思決定し、現場に裁量を持たせることで生産性を高め、付加価値を生み出す。そして各店舗の成功事例はグループ全体で共有され、組織全体の能力向上につなげていく。


この店舗中心経営を支えているのが人的資本経営だ。とりわけ人的資本経営は、人手不足が深刻化する外食業界全体でも関心が高まっている。誤解を恐れずに言えば、これまでの外食業界には、人材を無尽蔵にある資源のように消費してきた側面があった。しかし人手不足の時代には、そのモデルは通用しない。人材を資産と捉え、投資を行いながら企業価値を高める経営への転換が求められている。


すかいらーくでも「職場環境・働きがい」を重要な価値観の一つに掲げ、従業員一人一人への投資に力を注ぐ。働きがいを高めると従業員満足度が向上するため、サービスの品質は自ずと高まる。それが結果として、顧客満足を向上させ、企業収益の増加につながるという考え方だ。実際、直近決算では売上高4578億円(前年比14.1%増)、営業利益300億円(同23.9%増)と業績を大きく伸ばしている。


ただ、人的資本経営は理念を掲げるだけでは実現しない。そこで同社が重視しているのがDXの推進だ。すかいらーくではコロナ禍以降、店舗オペレーションのデジタル化を加速させてきた。配膳ロボットの導入をはじめ、セルフレジやテーブル決済、座席案内システム、新POSレジなどを整備。人手不足の中でも効率的な店舗運営を可能にする基盤を築いている。


こうした仕組みは、多様な人材が働きやすい環境づくりに結び付く。現に、従業員の女性比率が約35%であることをはじめ、40〜50代の子育て後のセカンドキャリア層や高齢者、外国籍人材など、幅広い人材が現場で活躍している。DXによって業務負担を軽減することで、多様な人材を戦力化できる体制が整ったといってもいいだろう。


現在、同社では既存業態の再構築と並行して、新たな成長エンジンの育成も進めている。その一つがM&A戦略だ。2024年に買収した「資さんうどん」は、2026年には年間30店舗の新規出店や台湾進出を控えるなど、凄まじい勢いで全国展開を進めている。新業態の「イタリアン リゾート ペルティカ」も好調で、既存のファミリーレストランの枠を超えた「非日常の体験」を武器に、ポートフォリオを強化している。


「人的資本経営」をベースにした「店舗中心経営」で、同社の勢いはまだまだ続いていきそうだ。


スシローの躍進:アジアを制する世界戦略

4位に浮上したのが、スシローを展開するFOOD & LIFE COMPANIESだ。同社の最大の特徴は、海外事業の成長にある。特に中国市場での躍進は目覚ましい。


2024年12月には中国・蘇州に初出店となる「スシロー蘇州中心店」をオープン。続いて2025年4月には杭州に初出店となる店舗を、大型商業施設「銀泰in77・D館」に出店した。さらに同年12月には、中国大陸で最大級の都市である上海に初進出。大型ショッピングモール「上海環球港」と「龍之夢購物中心」に同時出店した店舗には長蛇の列ができ、最大で14時間待ちとなるほどの人気を集めた。


中国大陸では過去最高の日次売上を更新する店舗が相次ぐなど、全拠点で業績は大きく伸長している。日本と同水準の品質を再現しながら、1皿10元(約210円)からという価格設定を実現。デフレ傾向が続き、コストパフォーマンスが重視される中国市場において、「高品質な寿司を手頃な価格で楽しめる」ブランドとして支持を広げている。


かつて私は、中国市場のカントリーリスクをどう見るかと質問したことがある。当時社長だった水留浩一氏はこう答えた。「リスクは折り込み済み。その上でどう最適解を打つかだ」。その言葉の重みを、いまになって痛感している。鳥貴族の大倉忠司氏も同様のことを語っていた。どの国にもリスクは存在する。重要なのは、それを避けることではなく、どう向き合い、どう手を打つかである、と。


成長は中国にとどまらない。インドネシアやマレーシアなど東南アジアでも出店と業績拡大が同時に進む。さらに北米では2026年度中の1号店出店に向けた準備が進んでおり、海外事業は「拡大フェーズ」から「持続成長フェーズ」へと移行しつつある。中東市場への布石も打たれている。ドバイ万博ではハラール対応店舗の展開にも成功した。もしこの市場を本格的に攻略できれば、中国市場以上の大きなインパクトを持つ。


こうした海外展開の成果は数字にも表れている。2025年9月期の連結決算で、海外スシロー事業の売上収益は1314億円と前期比42.6%増、営業利益は203億円と同105.1%増と、売上・利益ともに大幅な成長を遂げた。売上構成比も30%を超え、同社の成長ドライバーが国内から海外へと明確にシフトしていることが数字から読み取れる。


ただ、同社の勢いを支えているのは海外だけではない。国内事業に目を向けると、主力のスシローは既存店売上が通期で前年同期比110.1%と高水準を維持。創業40周年施策の反動があったにもかかわらず、商品力の強化やIPコラボなどの販促が奏功し、安定した集客力を示した。加えて、小型モデル店舗の導入により、都市部・駅前立地での出店余地を広げている点も今後の成長余地として注目される。


2025年9月期の連結業績は売上収益4295億円(前年比19.0%増)、営業利益361億円(同54.4%増)と、売上・利益ともに過去最高を更新した。さらに2026年2月発表の第1四半期決算でも最終利益は前年同期比39%増と好調な滑り出しを見せている。直近の2026年2月の国内スシロー既存店売上高も前年比12.4%増と、高い成長性を維持している。


FOOD & LIFE COMPANIESは中期経営計画で海外売上比率35%を掲げ、将来的には55%まで高める方針だ。さらに2035年には売上高1兆円という構想も打ち出している。スシローは、もはや単なる国内の回転寿司チェーンではない。アジア発のグローバルブランドへと進化しつつある。


外食「4強」が示す、成長戦略の違い

ゼンショー、日本マクドナルド、すかいらーくに、海外で急成長するFOOD & LIFE COMPANIESが迫る。外食産業が「4強」の時代へ向かう中で注目したいのは、順位だけでなく、各社の成長を支える仕組みの違いだ。


ゼンショーは、調達から製造、物流、販売までを担う基盤を生かし、複数のブランドを成長させる。すかいらーくは、DXと人材への投資によって店舗運営力を高め、既存店の強化と買収ブランドの育成を進める。スシローは、日本で磨いた商品力と店舗運営を海外へ広げ、売上と利益を伸ばす。そしてマクドナルドは、一つのブランドで幅広い利用場面を取り込み、国内で1兆円に迫る全店売上高を生み出している。


各社の戦略は重なり合う部分もあるが、強みの生かし方は異なる。共通するのは、店舗を増やすだけでなく、成長を支える仕組みそのものを磨いていることだ。さらに、丸亀製麺を展開するトリドールホールディングスや、国内外で独自の店舗運営を進めるサイゼリヤなども成長を続けている。今後の勢力図を左右するのは、消費者に選ばれる価値を生み出し、それを利益と次の投資につなげられるかどうかだ。売上ランキングの変化は、その競争の結果として表れてくるのである。



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