コメダの業績はなぜ好調? 小型店で探る国内出店とフランチャイズの可能性

三輪大輔|外食ビジネスアナリスト
ゆったりとしたソファに座り、コーヒーを飲みながら過ごす。
コメダ珈琲店は、そんな「くつろぎ」を強みに店舗網を広げてきた。そのコメダが、小型店で新しい運営方法の検証を始めた。2026年10月19日に東京都板橋区にオープンした「板橋仲宿店」だ。約40坪・48席の店舗で、メニューを絞り、厨房や食材の保管スペースを抑えている。注文と会計は先にレジカウンターで済ませ、商品はスタッフが席まで届ける。「コメダ式DX」として、電子コーヒーチケットなども試す。
業績は好調だ。それでも、なぜ店舗のつくり方や運営方法を変える必要があるのか。背景にあるのは、人気があっても、従来と同じ条件では店を増やしにくくなった出店環境だ。小型店の取り組みは、コメダのフランチャイズ戦略と、国内での成長余地を考えるうえでも興味深い。
コメダの業績は好調。国内と海外では異なる状況
コメダホールディングスの2027年2月期中間決算は、売上収益が前年同期比7.8%増の約307億6500万円、営業利益が11.9%増の約52億5600万円だった。

業績を支えているのは国内事業だ。売上収益は6.6%増の約274億2200万円、セグメント利益は14.2%増の約63億5100万円となった。一方、海外事業は売上収益が18.7%増の約33億5200万円だったものの、コーヒー豆などの原材料価格上昇が響き、セグメント利益は21.6%減の約1億8900万円。店舗数も前期末の83店から81店に減っている。
海外は売上が伸びている一方、利益と店舗網の拡大には課題が残る。もちろん、海外の状況が今回の小型店開発の直接の理由とは限らない。ただ、海外展開と並んで、収益を支える国内事業を成長させ続けることも重要になる。そこで問われるのが、国内には、まだコメダを増やせる余地があるのかという点だ。
国内の出店余地は、物件と採算によって変わる
コメダはすでに都市部にも出店している。そのため、今回の小型店を「郊外型チェーンが都市部に進出する動き」と説明するだけでは、十分ではない。
重要なのは、これまでの店舗モデルでは出店条件が合わなかった物件でも、検討できるようになるかだ。コメダ自身、中期経営計画で資材価格や家賃相場の高騰、開発競争の激化に伴う建築コストの上昇、人材獲得難を課題に挙げている。その対応として、立地特性に合った店舗形態と、収益性を重視した出店を掲げている。
つまり、出店余地は「まだ店舗がない地域があるか」だけで決まるものではない。需要のある商圏でも、広い物件が見つからなかったり、工事費を含めた投資額が膨らんだりすれば、出店は難しくなる。小さな物件でも採算が合うモデルをつくれれば、それまで候補に入らなかった区画も検討できるようになる。
板橋仲宿店でも、メニューを厳選して厨房や保管スペースを抑え、これまで難しかった小規模な立地への出店可能性を探るとしている。ただし、小さくすれば物件取得競争から抜け出せるわけではない。コンパクトな物件にも、他のカフェや飲食店から需要がある。小型店でも、立地と投資額、開業後の収益を慎重に見極める必要がある。
97%以上がFC。加盟店が投資できる条件をつくる
ここで欠かせないのが、コメダのフランチャイズという事業構造だ。
公式の加盟募集サイトによると、コメダ珈琲店の97%以上はFCオーナーが運営している。本部の出店意欲だけで、店舗網を広げられるわけではない。加盟店にとって、コメダのブランド力は魅力だろう。しかし、集客を期待できることと、投資を決断できることには違いがある。物件取得や建築、内装、設備に必要な費用が上がれば、投資回収のハードルも高まる。人気ブランドであっても、利益を確保できる見通しが立たなければ、新たな店舗は開けない。
その中で、小型店という選択肢が加わる意味は大きい。従来型の広い店舗では難しくても、小さな区画なら投資を検討できる。既存の加盟店にとっても、商圏や物件に応じて、次の店を選びやすくなる可能性がある。
また、人員確保も重要だ。開店時にスタッフを集められても、その後の欠員やシフトのやりくりに苦労すれば、安定した営業は難しくなる。先注文・先会計やメニューの絞り込みで仕事の量を抑えられれば、加盟店の運営負担を軽くできる。今回の取り組みは、店を開くまでと、開いてからの両方を見直すものと捉えられる。
加盟店の成長は、本部の卸売拡大にもつながる
加盟店が増え、安定して営業を続けることは、本部にもメリットがある。コーヒーや食材などの卸売先が増え、継続的な取引につながるためだ。
中間決算では、FC加盟店向け卸売は既存店ベースで前年同期比1.9%増、全店ベースで4.8%増だった。会社は販促施策に加え、包材や一部消耗品について実施した卸価格改定の効果も挙げている。
ここで注意したいのは、本部の増収増益が、そのまま加盟店の利益増を意味するわけではないことだ。加盟店は、仕入れ価格や人件費、賃料などを負担している。
だからこそ、加盟店が無理なく出店し、利益を出しながら営業を続けられるモデルを整える必要がある。
加盟店の負担を減らす取り組みは、本部の成長を支える取り組みでもある。 小型店の検証には、そうしたFCビジネスならではの意味がある。
コナズ珈琲・椿屋に見る「くつろぎ」と採算の関係
一方で、小型化には難しさもある。コメダが支持されてきた、ゆっくり過ごせる空間と採算を、限られた面積でどう両立させるかだ。
同じく滞在する時間に価値があるカフェでも、その収益のつくり方は異なる。例えばコナズ珈琲は、「いちばん近いハワイの食卓」を掲げる。ハワイで休日を過ごすような空間に、パンケーキや食事、ドリンクを組み合わせている。非日常の体験と食事を楽しむ場として利用してもらうことで、コーヒー一杯にとどまらない注文につなげやすい。
椿屋も、コーヒーや接客、落ち着いた空間を組み合わせて価値を伝えている。大型店に加え、商業施設の区画に合わせた店舗も展開しており、北千住マルイ店は開業時の公式資料で58席だった。
コメダでも、日常的に利用してもらう魅力を保ちながら、店舗規模に合った売上と利益を確保する必要がある。席数を減らせば、受け入れられるお客さんの数も限られる。長時間滞在が多ければ、混雑時には次のお客さんを案内しづらくなる。一方、回転率ばかりを求めれば、コメダらしいくつろぎに影響しかねない。削減できる費用と、減少する売上。その両方を見なければ、小型化の効果は判断できない。
過去の小型業態が示す、ブランドを移し替える難しさ
大手外食チェーンが、小型店や新しい提供方式を試す動きは以前からある。サイゼリヤは、ファストカジュアル型の「サイゼリヤEXPRESS」を展開したほか、パスタに特化した「伊麺処」や、ドリアを主力とする「ミラノ食堂」なども試してきた。後者の2業態は定着に至らなかったと報じられている。すかいらーくの小型業態「Sガスト」も、約20年にわたって営業したが、2020年に全店の営業を終了している。
それぞれの撤退理由を小型化だけに求めることはできない。ただ、大きなブランドの知名度や人気商品があっても、新しい店舗モデルがそのまま成長するとは限らないことは分かる。店を小さくし、メニューや接客を変えれば、お客さんが利用する理由も変わる。競合する業態も変わりうる。コメダの場合も、広い店を縮めるだけではなく、小さな店に合った仕事の流れと採算をつくりながら、選ばれてきた理由を残せるかが問われる。
番号札も生かし、次の出店モデルを探る
その意味で、今回の番号札は興味深い。お客さんが注文・会計を済ませ、番号札をテーブルに置くと、スタッフが商品を届ける。スマートフォンを操作しなくても利用できる仕組みだ。コメダは、高齢者や子ども連れ、一人客など幅広い客層に支持されている。デジタルを導入しながら、分かりやすいアナログの仕組みを組み合わせることには合理性がある。
もっとも、追加注文のたびにレジへ行く手間や、混雑時の待ち時間など、利用して初めて見える課題もあるだろう。私自身、コメダのモバイルオーダーを何度か試してきた。新しい仕組みは、普段のお客さんが自然に使えるか、スタッフの負担が実際に減るかまで確かめる必要がある。
国内に出店余地があるとしても、それを実際の店舗に変えるには、加盟店が投資でき、営業を続けられる条件が必要になる。板橋仲宿店での検証は、コメダの人気を次の成長につなげるための試みだ。使いやすさとくつろぎ、そして加盟店の採算を、40坪・48席でどこまで両立できるか。その結果が、今後の出店の選択肢を左右することになるだろう。


