マクドナルドの「青いマックの日」は10年、スターバックスの「ハミングバード」は15年。社会貢献を続ける理由とは?

三輪大輔|外食ビジネスアナリスト
マクドナルドは10年、スターバックスは15年——。
日本を代表する外食チェーンが、長年にわたって続けている社会貢献活動がある。
日本マクドナルドは10月18日、全国の店舗でチャリティ活動「青いマックの日」を開催した。病気と向き合う子どもとその家族のための滞在施設「ロナルド・マクドナルド・ハウス」を支援する取り組みで、今年は人気ガールズグループ「HANA」も参加した。一方、スターバックスも「ハミングバード プログラム」を通じて、子どもたちの学びや体験を支援してきた。
両社に共通するのは、日常的に多くの人が利用する店舗を、社会貢献の接点として生かしていることだ。なぜ外食企業は、こうした活動を長年続けるのか。その背景には、単なる寄付では語りきれない、企業と地域社会との関係がある。
病気の子どもと家族を支える「ロナルド・マクドナルド・ハウス」
「青いマックの日」は、病気と向き合う子どもと家族を支援するためのチャリティ活動だ。

支援先のロナルド・マクドナルド・ハウスは、自宅から遠く離れた病院で治療を受ける子どもに付き添う家族のための滞在施設である。病気の子どもにとって、家族の存在は大きな支えだ。しかし、付き添う家族には宿泊費や交通費などの経済的負担に加え、精神的、肉体的な苦労も重くのしかかる。長期間の治療となれば、家族の生活にも大きな影響が及ぶ。病院の近くに滞在できる場所があるかどうかは、家族にとって切実な問題だ。

こうした家族を支えるのが、ロナルド・マクドナルド・ハウスである。1974年に米国で誕生し、日本では2001年に第1号となる「せたがやハウス」が開設された。現在は国内12カ所で展開し、寄付や募金、ボランティアの協力によって運営されている。マクドナルドは、この施設の活動を長年支援してきた。
「青いマックの日」が広げる社会貢献の輪
マクドナルドの「マックハッピーデー」は、日本では2017年にスタートした。2022年に「青いマックの日」へと名称を変更し、今年で5年目。前身を含めると10年目を迎えた。
青はロナルド・マクドナルド・ハウス支援のシンボルカラーだ。普段は赤と黄色の印象が強いマクドナルドが、青いバルーンや装飾で彩られる。商品を持ち帰る紙袋やドリンクカップにも青色を取り入れ、普段とは違う雰囲気を演出する。こうした演出には、来店客に施設の存在を知ってもらい、活動への関心を高める狙いがある。
さらに注目したいのは、社会貢献を身近にする工夫だ。10月18日の「青いマックの日」では、ハッピーセット1セットの購入につき50円をマクドナルド側が寄付した。今年はHANAを特別サポーターに起用し、メンバーのお気に入りメニューを組み合わせた募金付きの「BLOOM SET」を販売。TikTokに指定のダンス動画を投稿すると、1投稿につき50円が寄付される企画も実施している。

また、公式アプリの「Myマクドナルド リワード」で貯めたポイントを活用する募金も新たに導入した。家族でハッピーセットを食べる。好きなアーティストのダンスを楽しむ。普段の買い物で貯めたポイントを寄付に使う。いずれも日常生活の延長であり、気負う必要がない。
社会貢献というと、自ら寄付先を探し、募金することを思い浮かべる人も多いだろう。しかし、マクドナルドでは、普段の食事や娯楽が支援のきっかけになる。全国に広がる店舗網と多くの顧客との接点を生かし、社会貢献に参加するハードルを下げている。これこそ、マクドナルドならではの強みではないだろうか。
スターバックスは15年。震災支援から「体験格差」の解消へ
外食業界で長年にわたり社会貢献活動を続けているのは、マクドナルドだけではない。スターバックスの「ハミングバード プログラム」も、その一つだ。

同プログラムは、東日本大震災で親を亡くした子どもたちの進学支援を目的として、2012年に始まった。当初は東北の子どもたちを支援していたが、その後、対象を全国へと拡大。2020年には、経済的な困難を抱える子どもや若者の学びや体験を支援する「チャンス・フォー・チルドレン」を寄付先に加え、2022年度からは同団体への支援に一本化した。
現在、特に力を入れているのが、子どもたちの「体験格差」の解消だ。スポーツ、芸術、音楽、キャンプなど、学校以外での体験は、子どもたちが興味や関心を広げるきっかけになる。しかし、家庭の経済状況や保護者の時間的な余裕などによって、体験できる機会には差が生じてしまう。スターバックスは、そうした子どもたちが学びや体験を通じて未来の選択肢を広げられるよう、支援を続けてきた。
2026年には15年目を迎え、同年度の寄付額は1,683万8,438円に達した。募金の仕組みも特徴的だ。専用のスターバックス カードを発行する際の寄付に加え、そのカードで商品を購入すると、支払金額の1%相当額をスターバックスが寄付する。また、スターバックス リワードで貯めたStarを活用した寄付にも対応している。
さらに、従業員が子どもたちに体験を提供する「ハミングバード 体験コミコネ」も実施。バリスタ体験やチョークアート、手話を使ったコミュニケーションなど、店舗や従業員の強みを生かした活動を展開している。

マクドナルドとは支援先も方法も異なるが、共通しているのは、普段の店舗利用を社会貢献につなげていることだ。そして、両社とも活動を継続するだけでなく、社会の変化に合わせて支援の方法や対象を進化させてきた。
なぜ外食企業は社会貢献を続けるのか
では、なぜ外食企業はこうした活動を続けるのだろうか。
一つは、地域への恩返しという考え方だ。2023年に公開されたwithnewsのインタビューで、当時の日本マクドナルド社長だった日色保氏は、全国チェーンであっても、ビジネスの本質は地域密着にあるという考えを示していた。
マクドナルドの店舗を利用するのも、そこで働くのも、地域で暮らす人々だ。フランチャイズ店の多くは、各地域のオーナーが経営している。地域社会に支えられているからこそ、その恩恵を地域に還元する。マクドナルドの社会貢献活動には、そうした考え方が根底にある。
スターバックスも、地域とのつながりを大切にする企業だ。同社では、店舗で働く従業員を「パートナー」と呼び、地域との交流を重視している。「ハミングバード 体験コミコネ」も、パートナーが得意なことや経験を生かして企画する取り組みだ。つまり、単に企業が寄付金を提供するだけではない。従業員自身が社会貢献の担い手となり、地域の人々と接する機会にもなっている。
これは企業経営の面でも意味がある。従業員にとって、自分の仕事が誰かの役に立っていると実感できることは、大きな喜びだろう。普段の店舗業務とは異なる交流や経験が、仕事への誇りやモチベーションにもつながっていく。
また、こうした活動を通じて、企業と顧客との関係も深まる。商品を買い、サービスを利用するだけの関係ではなく、同じ目的に向かって一緒に取り組む関係へ。チャリティ活動は、企業と顧客、従業員、地域社会の間に新たなつながりを生み出す機会にもなるのだ。
社会貢献を続けることが、企業の存在価値を高める
もちろん、社会貢献活動に取り組んでいるのは、大手外食チェーンだけではない。地域の飲食店でも、子ども食堂への協力や災害時の炊き出し、地域イベントへの参加など、さまざまな活動が行われている。
ただし、全国に店舗網を持つ企業には、幅広い顧客に情報を届け、多くの人が参加できる仕組みをつくれるという強みがある。マクドナルドとスターバックスは、その強みを生かしながら、それぞれ10年、15年にわたって活動を続けてきた。
特に重要なのは、単発のイベントに終わらせていないことだ。社会貢献には、支援先の課題や必要な支援を理解し、継続的に向き合う姿勢が求められる。両社は長年の活動を通じて、顧客や従業員も参加できる仕組みを築いてきた。チャリティ活動は地域への恩返しに加え、顧客や従業員との絆を深め、企業への信頼を育む。
飲食店は、日常的に多くの人が利用し、地域に根付き、お客様と向き合う仕事だ。だからこそ、人々を巻き込み、社会課題を身近なものにする力を持っている。マクドナルドとスターバックスの取り組みは、その可能性を示している。企業が社会的な責任を果たすことは、地域社会への貢献であると同時に、自らの存在価値を高めることにもつながる。外食企業がこうした活動を長年続ける意義は、決して小さくない。


