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串カツ田中がリブランディング。ハイボール110円、新ロゴ・新店舗で狙う次の20年

  • 執筆者の写真: 三輪大輔
    三輪大輔
  • 16 時間前
  • 読了時間: 6分

更新日:2 時間前

                         三輪大輔|外食ビジネスアナリスト


串カツ田中が、ブランド誕生18年目にして初の大規模なリブランディングに乗り出した。


運営するユニシアホールディングスは2026年9月4日、新たなブランドロゴと店舗デザイン、新タグライン「今日も、田中で。」を発表した。さらに9月10日からは「無限ハイボール(トリスハイボール)」を100円(税込110円)で新設するなど、全国の店舗でドリンク価格も改定する。


「串カツ田中」の新ロゴを披露するユニシアホールディングス代表の貫啓二氏と、PR大使に就任したももいろクローバーZの佐々木彩夏さん。ブランド誕生18年目で初のリブランディングを実施した
「串カツ田中」の新ロゴを披露するユニシアホールディングス代表の貫啓二氏と、PR大使に就任したももいろクローバーZの佐々木彩夏さん。ブランド誕生18年目で初のリブランディングを実施した

今回のリブランディングで注目したいのは、単なるロゴや内装の変更にとどまらないことだ。店舗、商品、価格、利用シーンまで含めて、次の20年に向けてブランドそのものを再設計しようとしている。


世田谷の住宅街から始まった串カツ田中

串カツ田中の1号店は2008年12月、東京・世田谷に誕生した。当時はリーマン・ショックのさなか。運営会社は株式会社ノートで、串カツ田中は会社の起死回生をかけて生まれた業態だった。


今でこそ串カツは全国的に知られる存在だが、当時の東京では現在ほど認知度が高くなかった。そこで店づくりでは、「何の店なのか」がひと目で伝わる分かりやすさを重視。祭りの屋台を思わせる店構え、パイプ椅子、昔ながらの大衆酒場を感じさせる空間。こうした明快な世界観が支持され、大衆酒場ブームも追い風となり、店舗数を一気に伸ばしていった。


その後はフランチャイズを軸に出店を加速。2016年9月14日に東京証券取引所マザーズ市場(現在は東証スタンダード)へ上場も果たし、現在では350店舗を超えるブランドへと成長した。


串カツ田中は、鳥貴族や肉汁餃子のダンダダンなどとともに、焼鳥、串カツ、餃子といった看板商品に特化する「専門業態型」の居酒屋を広げた代表的な存在だ。いわば、総合居酒屋に代わって存在感を高めた「居酒屋第3世代」を牽引してきた企業の一つである。


今回のリブランディングは、その第3世代の成功モデルが、次の時代の消費者や利用シーンに合わせて進化しようとする動きとも捉えられる。


「何者かを知ってもらう」段階は終わった

ブランド誕生から18年がたち、串カツ田中を取り巻く環境も大きく変わった。すでに「串カツ田中が何の店なのか」は、多くの消費者に知られている。これから重要になるのは、新たに認知を広げること以上に、既存の商圏で何度も利用してもらうことだ。今回の新タグライン「今日も、田中で。」は、その方向性を象徴している。


ブランドステートメントにも、「今日は田中にしよう。」「そう言ってもらえることが、私たちの誇りです。」とある。一度来てもらう店ではなく、日常の選択肢として何度も使ってもらう店へ。


もともと串カツ田中は住宅街立地にも強い。小さな商圏の中でファンをつくり、リピーターを増やしていくことが、今後ますます重要になる。その意味で、今回のリブランディングは、いわば「認知を広げるブランド」から「来店頻度を高めるブランド」への転換だといってもいいだろう。


まずは看板から、約10年かけて店舗を刷新

今回のリブランディングは、短期間で全店舗を一気に作り替えるものではない。まずは看板やロゴといったブランドの“顔”から刷新する。新規オープンする店舗は新デザインで展開し、既存店についてはリニューアルのタイミングに合わせて順次ブラッシュアップしていく。そのスパンは、およそ10年だ。つまり今回のリブランディングは、一時的なイメージチェンジではなく、次の20年、30年を見据えた長期的なブランド再構築である。


フラッグシップとなる赤坂店では、従来の活気や親しみやすさを残しつつ、木目調のインテリアや照明を取り入れ、より洗練された空間へと進化させた。女性や一人客でも入りやすく、長時間滞在しても快適に過ごせる設計を意識している。かつての「祭りの屋台」らしさを捨てるのではない。串カツ田中らしさを残しながら、現在の利用者に合わせてアップデートしている。


ハイボール110円を期間限定ではなく通常価格に

今回のリブランディングでもう一つ注目したいのが、ドリンク価格の改定だ。9月10日から「無限ハイボール(トリスハイボール)」を100円(税込110円)で新設する。さらに、名物の「チンチロリンドリンク」対象商品は各290円(税込319円)に値下げ。「無限串専用サワー ツンデレ/寄り添い」の平日限定価格290円(税込319円)も通常価格化する。


9月10日から全国の店舗で新価格をスタート。「無限ハイボール」は100円(税込110円)、サワー・酎ハイは290円(税込319円)に。価格改定は期間限定ではなく、継続して実施される
9月10日から全国の店舗で新価格をスタート。「無限ハイボール」は100円(税込110円)、サワー・酎ハイは290円(税込319円)に。価格改定は期間限定ではなく、継続して実施される

重要なのは、これが期間限定キャンペーンではないことだ。串カツ田中は、今回の価格改定を永続的に実施する。もともと同社には、チンチロリンなど、ゲーム感覚で安く酒を楽しめる仕掛けがある。それでも今回、通常価格そのものをさらに引き下げた。


では、なぜここまで思い切った価格設定ができるのか。その背景の一つに、酒以外でも来店動機をつくれる強さがある。


酒を安くできる背景にある「商品提案力」

串カツ田中は近年、フードメニューの強化にも積極的だ。「無限串」をはじめ、やきとん系のメニューやレバニラ炒めなど、従来の「串カツ専門店」という枠を広げる商品を次々と投入している。串カツという明確な看板商品を持ちながら、新しい食べ方や新商品を継続的に提案できる。「無限串」は、その象徴の一つだろう。


アルコールの価格を大きく下げれば、当然ながら酒一杯あたりから得られる利益は小さくなる。だからこそ、料理の注文を促し、新たな来店理由を生み出せる商品力が重要になる。串カツ田中には、酒だけに頼らず客を呼べる商品提案力がある。さらに、チンチロリンなどの体験性や、ファミリー層を含めた幅広い客層、住宅立地で積み重ねてきたリピーターもいる。


つまり、酒を安くすることだけが戦略なのではない。酒の価格を下げても、別の価値で来店と消費を生み出せるからこそ、この価格設定に踏み込めるのである。


居酒屋は「酒で儲ける」モデルから変わるのか

これまで居酒屋は、粗利率の高いアルコールで利益を確保することが一つの定石だった。しかし近年、いわゆる「第四世代居酒屋」では、50円や100円台の酒を打ち出す価格設計が広がっている。


酒そのもので大きく儲けるのではなく、低価格の酒を来店のきっかけにし、料理や追加注文、体験価値、再来店によって収益を積み上げる。こうした考え方が、大手チェーンにも本格的に広がり始めたと見ることができる。


串カツ田中にも、酒以外に複数の集客装置がある。チンチロリンのような遊び、串カツを中心とした商品力、ファミリーでも利用しやすい間口の広さ、そして住宅立地で長年積み重ねてきた地域のファンだ。だからこそ、酒を安くできる。言い換えれば、「安いから勝てる」のではない。価格以外で勝負できるから、安くできるのである。


「今日も、田中で。」が示す次の成長戦略

今回のリブランディングでは、日常的に使われる店になるために、店舗空間を変え、商品を増やし、価格を下げ、来店理由そのものを増やそうとしている。これは、出店によって商圏を広げる成長から、既存の商圏でファンを増やし、来店頻度を高める成長への転換ともいえる。


「今日も、田中で。」


この短い言葉には、串カツ田中が次の20年で目指す姿がよく表れている。一度選ばれる店ではなく、何度も選ばれる店へ。串カツ田中のリブランディングは、ブランドの見せ方だけでなく、利用され方、価格設計、そして利益のつくり方まで含めた再設計なのである。


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