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消費減税を機に考える外食支援の政策提言――なぜ「需要喚起」と「稼ぐ力を高める支援」の両立が必要なのか

執筆者の写真: 三輪大輔
三輪大輔
16 時間前
読了時間: 15分

更新日:44 分前

                         三輪大輔|外食ビジネスアナリスト


消費減税をめぐり、外食支援への動きが大きな転換点を迎えている。


政府は当初、省力化やテイクアウト、資金繰りなどへの支援を打ち出していた。しかし、10月16日の参議院予算委員会で、高市早苗首相は、プレミアム付き商品券や「Go To Eat」についても検討する考えを示した。さらに10月20日、武部農林水産大臣は、外食産業にはさまざまな業態があり、受ける影響も異なるとした上で、事業者の実情を確認しながら支援策を検討する方針を説明した。


私は、今回の動きを一つの前進として受け止めている。なぜなら、食料品の消費税減税によって懸念されるのは、飲食店の生産性が低いことだけではなく、外食需要そのものが減少する可能性だからだ。省力化やDXによって経営を効率化しても、お客様が来店しなければ売上は増えない。一方、需要喚起によってお客様が増えても、原材料費や人件費の高騰によって利益が残らなければ、持続的な経営にはつながらない。必要なのは、外食需要を喚起する政策と、飲食店が稼ぐ力を高める政策を両立させることである。


では、なぜ外食産業への支援が必要なのか。これまでの支援策やGo To Eatの課題を振り返りながら、今後の外食政策のあり方を考えたい。


消費減税で、なぜ外食業界への支援が必要なのか

そもそも、外食産業に公的な支援を行う必要があるのだろうか。


食料品の消費税減税に伴う外食支援が報じられると、「税金の無駄ではないか」「飲食店は自助努力すべきだ」といった意見も聞かれた。もちろん、外食産業だけを特別扱いすることには慎重であるべきだ。経営環境が厳しいからといって、すべての飲食店を公費で守ることが適切だとは思わない。競争力を高め、消費者に選ばれる店づくりを進めることは、企業や経営者自身の責任である。


しかし、今回の問題は、単なる経営不振への救済とは性質が異なる。政府の税制変更によって、外食と内食・中食の競争条件が変化する可能性があるからだ。現在、食料品に適用される消費税率は8%、店内飲食は10%である。政府は2027年4月から2年間、飲食料品の税率を1%に引き下げる方針を示し、関連法案を国会に提出した。法案が成立して予定どおり実施されれば、店内飲食との税率差は現在の2ポイントから9ポイントへと広がる。


もちろん、食料品の消費税が引き下げられたからといって、すべての消費者が外食を控えるわけではない。家計の負担が軽くなり、その分を外食に使う人もいるだろう。しかし、減税によって「自炊や持ち帰りの方がお得」という情報が広がれば、外食が相対的に割高だという印象が強まる可能性がある。


外食は、単に空腹を満たすための選択肢ではない。家族や友人との時間、接客、店内の空間、出来たての料理など、さまざまな価値を提供している。それでも、消費者が価格に敏感になっている現在、税率差の拡大が外食を選ぶ機会に影響を及ぼす可能性は否定できない。だからこそ、政府が自らの政策によって生じる競争条件の変化を検証し、必要に応じて対策を講じることには意味がある。


飲食店を支えることは、他の産業を支えることでもある

もう一つ、外食支援を考える上で見落としてはならないのが、外食産業の裾野の広さである。


飲食店は、さまざまな産業と密接につながっている。例えば、飲食店で提供される料理には、農家が生産した野菜や米、畜産業者が育てた牛や豚、漁業者が水揚げした魚介類などが使われている。それらを食品メーカーが加工し、食品卸や物流事業者が店舗へ届ける。飲食店の厨房では調理機器や冷蔵設備が使われ、店舗には食器、家具、空調設備、POSレジ、決済システムなどが導入される。さらに、飲食店が営業することで従業員の雇用が生まれ、商店街や商業施設への人の流れも生み出される。


つまり、飲食店の売上は、飲食店だけで完結しているわけではない。仮に外食需要が減少し、飲食店が仕入れを減らせば、その影響は生産者や食品卸、物流事業者にも及ぶ。設備投資を控えれば、厨房機器メーカーやITサービス事業者などにも影響する。


コロナ禍では、飲食店の営業自粛や営業時間短縮によって、飲食店に食材を供給する事業者も大きな影響を受けた。もちろん、外食から内食や中食に需要が移れば、スーパーや食品メーカーなどで新たな売上が生まれる可能性もある。外食需要の減少分が、そのまま日本経済全体の損失になるわけではない。それでも、外食産業を中心に築かれてきた取引関係や雇用、地域経済への影響まで考える必要がある。


外食産業を支えることは、飲食店の経営者だけを助けることではない。その先にあるサプライチェーンや地域経済を支える意味も持っている。だからこそ、外食支援の必要性を判断する際には、飲食店だけでなく、関連産業への波及効果も含めて検討すべきだと考えている。


大手チェーンと街の飲食店では、受ける影響が異なる

現在の外食産業は、原材料費、人件費、物流費、光熱費など、さまざまなコスト上昇に直面している。その中で、大手外食チェーンと中小規模の飲食店の経営環境には、大きな違いが生まれている。


大手チェーンは、商品の値上げやメニュー構成の見直し、原材料の調達改革、店舗運営の効率化などによって収益力を高めてきた。タッチパネル注文やモバイルオーダー、セルフレジ、配膳ロボット、自動調理機器などの導入も進んでいる。また、複数の業態を展開する企業では、成長が期待できる業態への転換や、M&Aによる事業拡大なども進めている。こうした企業努力によって、過去最高益を更新する外食企業もある。


一方、中小規模の飲食店では、事情が異なる。人件費が上昇しても、十分な賃上げを行う余力がない。設備投資を進めたくても、その資金を確保できない。原材料費が上昇しても、常連客への影響を考えると値上げに踏み切れない。こうした状況に置かれている店舗も少なくない。


つまり、資本力の差が競争力の差につながり、外食産業の二極化が進んでいるのである。今回の食料品減税によって外食需要が減少した場合、大手企業と中小規模の飲食店では、受ける影響や対応できる余力も異なるだろう。


もっとも、大手だから影響が小さいとは限らない。低価格業態と高価格業態、日常利用と特別な日の利用では、消費者の価格に対する反応も違う。大切なのは、企業規模だけで判断するのではなく、業態や地域、経営環境の違いを踏まえて、必要なところに必要な支援を届けることである。


なぜ「省力化」だけでは外食支援として不十分なのか

政府が当初示した外食支援策の一つが、省力化や生産性向上への支援だった。私は、省力化そのものを否定するつもりはない。むしろ、深刻な人手不足に直面している外食産業にとって、省力化やDXは不可欠だと考えている。ただし、今回の食料品減税に伴う支援策として位置づけるのであれば、疑問が残る。


そもそも省力化は、今回の減税を受けて初めて打ち出された政策ではない。農林水産省と厚生労働省は、2025年6月に「省力化投資促進プラン(飲食業)」を策定した。2024年を基準として、2029年度までに飲食業の労働生産性を35%向上させる目標を掲げている。


外食企業も、すでに長年にわたって生産性向上に取り組んできた。例えば、注文をデジタル化すれば、従業員が注文を取りに行く時間を削減できる。配膳ロボットを導入すれば、料理を運ぶ負担を軽減できる。こうした取り組みによって、限られた人員でも店舗を運営しやすくなる。


しかし、ここで考えなければならないことがある。省力化によって人件費を抑制できても、来店客数が減少すれば、売上は伸びないということだ。仮に、従来より少ない人数で店舗を運営できるようになっても、客数が減少し、売上が落ち込めば、収益の改善には限界がある。


しかも、飲食店は業態によって省力化できる範囲が異なる。ファストフードと高級レストランでは、接客に求められる役割が違う。居酒屋やレストランでは、従業員との会話や料理の説明そのものが価値になることもある。あらゆる飲食店に、同じような省力化を求めることは難しい。


省力化は、外食産業の構造的な課題に対応するための政策である。一方、今回懸念されるのは、食料品減税によって消費者の外食需要が変化することだ。需要の問題を、供給側の効率化だけで解決しようとする。ここに、政策目的と支援手段のズレがある。


テイクアウト支援は、本当に飲食店の利益につながるのか

もう一つ、政府が示してきたのがテイクアウトなどへの支援である。店内飲食の消費税率が10%に据え置かれる一方、持ち帰りの飲食料品が1%になれば、テイクアウト需要が増える可能性はある。そこで、飲食店にもテイクアウトを強化してもらうという考え方には、一定の合理性がある。


しかし、飲食店の経営を考えると、そう簡単な話ではない。多くの飲食店は、すでにコロナ禍でテイクアウトやデリバリーに取り組んだ経験がある。店内飲食が制限される中で、新たな売上を確保するために弁当の販売を始めた飲食店も多かった。


しかし、テイクアウトには独自のコストがかかる。食材費だけでなく、容器や袋、割り箸、おしぼりなどの包装資材が必要になる。さらに、商品の仕込み、調理、盛り付け、梱包、受け渡しといった作業も発生する。デリバリーサービスを利用する場合には、手数料も考えなければならない。仮にテイクアウトで売上が増えても、それに伴って人件費や資材費が増加すれば、利益が残るとは限らない。


また、そもそもテイクアウトに適していない業態もある。焼肉店や居酒屋、レストランなどでは、店内で料理を食べること自体に価値がある。料理だけでなく、店内の空間や接客、出来たての状態で提供されることが商品価値を構成している。すべての飲食店にテイクアウトへの転換を求めることは、外食産業が提供してきた価値を十分に踏まえたものとはいえないだろう。


もちろん、テイクアウトによって新たな顧客を獲得し、収益源を増やせる店舗もある。そうした企業の取り組みを支援することには意味がある。しかし、重要なのは、今回の政策目的との関係である。外食需要の減少が懸念されるからといって、飲食店に中食市場への進出を促すだけでよいのだろうか。テイクアウト支援は販路拡大策であって、店内飲食の需要減少を直接食い止める政策ではない。その違いを明確にする必要がある。


Go To Eatは失敗だったのか

では、外食需要を喚起するためには、どのような政策が考えられるのだろうか。その参考になるのが、コロナ禍で実施された「Go To Eat」である。


Go To Eatには、大きく分けて二つの仕組みがあった。一つは、プレミアム付き食事券の発行。もう一つは、オンライン飲食予約によるポイント還元である。当時は、新型コロナウイルスの感染拡大によって外食需要が急減し、多くの飲食店が経営危機に直面していた。感染状況の変化もあり、先行きを見通すことが難しかった。そのため、需要を早急に回復させる政策が必要とされていた。


そうした中で、食事券やポイント還元によって、消費者が飲食店を利用するきっかけをつくろうとしたことには意味があったと考えている。既存のグルメサイトや予約システムを活用することで、短期間で制度を動かそうとした判断にも合理性があった。


しかし、制度設計には課題が残った。それを踏まえず、同じ仕組みを繰り返すことには慎重であるべきだ。


第一の課題:オンライン予約を前提としたことで生じた格差

オンライン予約ポイントは、対象のグルメサイトを通じて予約することが条件だった。しかし、飲食店の中には、そもそも予約を受け付けていない店舗もある。例えば、地域の常連客に支えられている小規模な飲食店や、来店順にお客様を案内する業態では、オンライン予約を利用する必要性が低い。こうした店舗は、オンライン予約ポイント事業の恩恵を受けにくかった。


一方、グルメサイトを積極的に活用している店舗では、制度によって新たな来店機会をつくりやすかった。支援を必要とする店舗と、制度を利用しやすい店舗が、必ずしも一致していなかったのである。


第二の課題:送客手数料によって利益が圧迫される可能性

オンライン予約では、利用するサービスや契約条件によって、飲食店に送客手数料が発生する場合がある。例えば、客単価1,000円の飲食店で、1人当たり200円の手数料が発生すると仮定すれば、売上の20%を支払うことになる。


当然、飲食店には原材料費や人件費、家賃などもかかっている。新規のお客様が増えれば、手数料を支払う価値はあるだろう。しかし、もともと来店していた常連客が、ポイントを獲得するために予約サイトを利用した場合はどうだろうか。店舗にとって新たな売上が生まれたわけではないのに、手数料だけが増えることになる。売上を増やすための支援策が、店舗の利益を圧迫する可能性もあったのである。


第三の課題:ポイント獲得が目的となった制度の抜け穴

代表的なのが、いわゆる「トリキの錬金術」だ。オンライン予約によって夕食時に1人1,000円相当のポイントが付与される仕組みを利用し、ポイント相当額より少ない飲食代金で来店するケースが問題になった。また、獲得したポイントを次の予約で使い、再びポイントを獲得する利用方法も話題になった。


本来は外食需要を喚起するための制度である。しかし、制度の仕組みによっては、外食を楽しむことよりも、ポイントを獲得すること自体が目的になりかねない。こうした問題を防ぐためにも、実際の飲食代金に応じた支援を行うなど、制度設計の工夫が必要になる。


本当に新しい需要を生み出せたのか

さらに、もう一つ考えるべき課題がある。それは、支援策によってどれだけ新しい需要が生まれたのかということだ。例えば、食事券を利用して1万円分の飲食が行われたとしても、そのすべてが制度によって新たに生まれた需要とは限らない。もともと外食する予定だった人が、食事券を利用しただけかもしれない。


もちろん、消費者の負担を軽減すること自体にも意味はある。しかし、外食需要の喚起を政策目的とするのであれば、支援がなかった場合と比べて、どれだけ来店や消費が増えたのかを検証する必要がある。


また、制度を運営するための事務費や、事業者が負担する手数料も無視できない。投入した公費に対して、どれだけの新たな需要や経済効果が生まれたのか。こうした視点で、政策の費用対効果を評価することが重要だと考えている。


これからの外食支援は、地域を起点に考えたい

では、Go To Eatの反省を踏まえ、どのような支援策が考えられるのだろうか。私は、全国一律の仕組みだけに頼るのではなく、自治体が地域の実情に合わせて実施できる、プレミアム付き食事券などの需要喚起策を検討してほしいと考えている。


なぜなら、飲食店が置かれている環境は地域によって異なるからだ。オフィス街では、平日の昼食需要が大きい。住宅街では、家族連れや地域の常連客が店舗を支えている。観光地では、観光客やインバウンド需要への依存度が高い店舗もある。同じ外食産業でも、必要な支援は一律ではない。


例えば、地域の飲食店で利用できるプレミアム付き食事券を発行すれば、住民が身近な飲食店を利用するきっかけをつくれる。その際、重要なのは、グルメサイトへの登録を必須としないことだ。予約システムを導入していない小規模な飲食店でも、無理なく参加できる制度にする必要がある。


また、スマートフォンを利用する人だけでなく、高齢者なども利用しやすいよう、紙の食事券とデジタル食事券を組み合わせる方法も考えられる。さらに、一部の人気店に利用が集中しないよう、参加店舗の情報発信や利用条件にも工夫が求められる。


こうした支援を実現するためには、国と自治体の役割分担も重要になる。国が財源や基本的な制度を整備し、自治体が地域の実情に合わせて運用する。自治体ごとの財政力や事務処理能力の差にも配慮しながら、必要なところに必要な支援を届ける仕組みを目指したい。


そして、私が望むのは、街の飲食店を、その街の人たちが支えられる仕組みである。家族との思い出がある店。仕事帰りに立ち寄る店。長年、地域の人たちに親しまれてきた店。そうした飲食店を、地域の住民が日々の外食を通じて応援できる。いわば、街の飲食店に対する「推し活」のような支援だといってもいいだろう。


「需要を喚起する支援」と「稼ぐ力を高める支援」を両立する

ここまで、外食需要を喚起する支援策の必要性を論じてきた。しかし、私は需要喚起策だけを実施すればよいと考えているわけではない。むしろ、外食産業が持続的に成長するためには、需要喚起と生産性向上を一体的に進めることが重要だと考えている。


例えば、食事券によって来店客数が増えても、従業員が不足していれば、店舗の負担が増えるだけになりかねない。一方、省力化によって少ない人数でも店舗を運営できるようになれば、増加した需要に対応しやすくなる。また、DXによって注文や会計を効率化すれば、従業員は料理の品質や接客など、お客様に価値を提供する業務へ時間を振り向けられる。


需要喚起によって売上を増やし、省力化や経営改善によって利益を残す。そして、その利益を賃上げや人材育成、店舗改装、設備投資などに回していく。そうした好循環を生み出すことが、外食産業の持続的な成長につながる。


さらに、支援の対象は単なる設備投資に限定する必要もない。中小規模の飲食店では、経営者自身が調理や接客を担いながら、採用や人材育成、資金管理まで行っていることも多い。

設備を導入するだけでなく、経営改善に向けた専門家の支援や、採用・教育体制の整備、デジタル技術を使いこなすための人材育成なども必要になるだろう。


外食産業の生産性向上とは、単に従業員の数を減らすことではない。限られた人員で、これまで以上の価値をお客様に提供し、適正な利益を確保できる経営へと転換していくことである。それを実現するためにも、需要喚起策と稼ぐ力を高める支援策を、別々に考えるべきではない。


外食産業の持続的成長に向けて

今回、外食需要を喚起する支援策が検討されるようになり、ようやくスタートラインに立ったと考えている。


大手外食チェーンは、企業努力によって収益力を高めてきた。一方、中小規模の飲食店では、資本力や投資余力に限りがあり、減税による外食需要の変化が経営に与える影響も異なる。だからこそ、必要なところに必要な支援を届けることが重要だ。


もちろん、すべての飲食店を公的な支援によって守るべきだとは考えていない。飲食店自身が魅力を高め、お客様に選ばれるための努力を続けることが前提となる。その上で、政府の施策によって外食需要が変化する可能性がある以上、需要減少への対策と経営改善への支援は、分けて考える必要があるだろう。


これまで進められてきた「稼ぐ力を高める支援」に、新たな「需要を喚起する支援」を組み合わせる。需要を生み出し、利益を残し、その利益を人材や設備への投資につなげていく。こうした好循環を後押しすることが、外食産業の持続的な成長に向けた政策の役割ではないだろうか。

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