長雨で客足減、日照不足で野菜にも影響 飲食店は「一点激安主義」で巻き返せるか?

更新日:19 時間前
三輪大輔|外食ビジネスアナリスト
長雨で、外出や食事の予定を変更した人も多かったのではないだろうか。飲食店にとっては、来るはずだったお客が来ない日が重なる。私が取材する中でも、9月の売上は前年を下回りそうだという声が多く、実際に前年割れだったという話も聞こえてくる。
雨の影響は客足だけではない。日照不足は野菜の生育や出荷にも及び、仕入れの負担を増やす。売上を取り戻したい一方で、料理を作るコストも上がる。厳しい状況の中、飲食店はどう巻き返しを図るのか。
客単価の上昇だけでは客数減を補えない
ホットペッパーグルメ外食総研の2026年8月調査では、首都圏・関西圏・東海圏の外食市場規模は3161億円で、前年同月比99.0%だった。単価は前年より68円上がったものの、延べ外食回数は96.7%に減少。客単価の上昇だけでは、外食回数の減少を補いきれなかった。同調査は、首都圏・東海圏を中心に前年より雨の日が多かったことが、外食回数の不調に影響した可能性を指摘している。
これまで値上げによる客単価の上昇で、客数減を補ってきた飲食店は少なくない。そこに悪天候による客数減が重なれば、売上を支えてきた単価上昇だけでは補いきれない。家賃などの固定費は売上に応じて減るわけではなく、食材費や人件費の上昇も続く。客足の鈍化は利益を圧迫する。
晴れても、野菜はすぐには戻らない
10月に天候が回復すれば、外出を控えていた人が買い物や旅行に出かけ、飲食店の客足も戻ることが期待できる。ただし、来店客数が回復しても、仕入れ環境がすぐに改善するとは限らない。
農林水産省の10月の野菜出荷見通しでは、白菜やレタス、ほうれん草などの出荷量が平年を下回る。一方、じゃがいもや玉ねぎは価格が平年を下回る見通しだ。野菜全体が一様に不足するのではなく、品目によって状況は異なる。仕入れやすい食材をどう料理の魅力に変えるかも、飲食店の工夫が問われる。
目玉価格で来店のきっかけをつくる
客足を戻すには、来店する理由をつくる販促も欠かせない。特定の商品だけを破格で提供する「一点激安」は、店全体の値下げを避けながら、目を引く価格で集客する方法だ。
GYRO HOLDINGSは10月5日から7日まで、通常880円のさんま塩焼きを10円で提供する。各店・各日先着30人で、料理1品とドリンク1杯以上の注文が条件だ。提供数や注文条件を設け、話題性のある価格を来店の入口にする。スーパーの特売品のように、目玉商品をきっかけに店を知ってもらう狙いがある。
ケンタッキーフライドチキンも、カーネルクリスピーを10月13日まで半額の140円で販売している。公式には「食欲の秋」のキャンペーンだが、手頃な価格で商品を試してもらい、ブランドとの接点を増やすことにもつながる。クリスマス需要が大きい同社にとって、年末を前に商品を思い出してもらうきっかけとなり、今後の利用につながる可能性もある。これは公式発表された狙いではなく、時期を踏まえた見立てだ。
安い商品だけが注文されれば、利益は残りにくい。それでも、家計の負担が重くなり消費者が外食に慎重になる中、まず「この価格なら行ってみよう」と思わせることは、集客の入口になる。
10月の来店を、年末の予約につなげる
年末の宴会需要を取り込む動きも始まっている。ワタミは「和民のこだわり のれん街」で、10月1日から忘年会の早期予約を受け付けている。対象コースでは、早期予約の特典として鍋のメイン食材を2倍にする。値引きではなく、食材の増量でお得感を打ち出している。
10月に来店した人に料理や接客を知ってもらい、忘年会の候補として店を思い出してもらう。一点激安の目玉商品と宴会の早期予約は施策こそ異なるが、利用する理由をつくり、次の需要につなげる点で重なる。
9月に失った売上を、10月にそのまま取り戻せるとは限らない。野菜の仕入れや家計の負担など、飲食店を取り巻く厳しさも続く。それでも、目の前の来店を促し、年末の予約へつなげる余地はある。長雨で遠のいた客足をどう戻すのか。飲食店の巻き返しは、10月から始まっている。


