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【外食企業の現在地】大戸屋はコロワイドの買収後、なぜ好調なのか。否定的だった私が評価を変えた理由

執筆者の写真: 三輪大輔
三輪大輔
1 日前
読了時間: 7分

                         三輪大輔|外食ビジネスアナリスト


コロワイドによる大戸屋の買収は、成功だったのか。

コロワイドによる大戸屋の買収当時、私はその動きを否定的に見ていた。店内調理や手作りを大切にしてきた大戸屋が、効率化によって魅力を失うのではないか。コロワイド傘下に入ることで、本当に成長できるのか。そんな懸念があった。


しかし、現在の業績を見ると、その評価を改める必要を感じている。大戸屋ホールディングスの2026年3月期の売上高は370億1600万円、営業利益は21億4000万円。買収前の2019年3月期と比較すると、売上高だけでなく、利益を生み出す力も大きく改善している。


アリオ亀有のフードコートに出店する大戸屋。買収後は新たな出店モデルにも挑戦している(筆者撮影)
アリオ亀有のフードコートに出店する大戸屋。買収後は新たな出店モデルにも挑戦している(筆者撮影)

もちろん、業績が伸びたからといって、買収後の取り組みの全部が正しかったことにはならない。それでも、当時抱いていた懸念と、その後に出た結果は照らし合わせるべきだろう。

大戸屋はコロワイド傘下で何を変え、何を残したのか。そして、再建の先にはどのような成長の可能性があるのか。


大戸屋の買収前後で、業績はどう変わったのか

2020年、コロワイドは大戸屋ホールディングスに対してTOBを実施した。当時の大戸屋経営陣が反対する中で買収を成立させ、子会社化した。創業家と経営陣の対立も絡んだ買収劇は、大きな注目を集めた。大戸屋に愛着を持つ利用客からも、味や店づくりが変わってしまうのではないかという懸念が寄せられた。


その後の変化を、まず数字から見てみたい。

指標

2019年3月期

2026年3月期

売上高

257億2900万円

370億1600万円

営業利益

4億1400万円

21億4000万円

営業利益率

約1.6%

約5.8%

両期を比べると、売上高は約1.4倍、営業利益は約5.2倍となった。売上規模の拡大以上に、利益の伸びが大きい。買収前の2019年3月期は、前期比で売上高が2.0%減、営業利益が34.7%減だった。ブランドに知名度や固定ファンがあっても、それを十分な利益につなげられていなかったことがうかがえる。


ただし、この比較には注意も必要だ。二つの決算の間には、コロナ禍とその後の需要回復、値上げ、店舗構成の変化などがある。利益が増えた分を、そのまま買収の効果とみなすことはできない。それでも、食材費や人件費などが上がる中で、営業利益率を改善してきた点には意味がある。少なくとも、買収によって大戸屋の経営が弱体化したとは、現在の数字からは言いにくい。


私がコロワイドの買収に否定的だった二つの理由

私が買収に懸念を抱いた理由は、大きく二つあった。


一つは、コロワイドによる過去のブランド買収を見ても、傘下入りがそのまま成長につながるとは考えられなかったことだ。例えば、かっぱ寿司である。コロワイド傘下に入った後も、回転寿司市場でかつての存在感を取り戻したとは言い難い。フレッシュネスバーガーについても、買収後に店舗網や市場での存在感を大きく伸ばしたという印象は持っていなかった。買収によってグループの規模が大きくなることと、買収されたブランドが成長することは、別の話である。大戸屋も、その魅力を十分に伸ばせないままになるのではないかと考えていた。


もう一つは、大戸屋の商品価値に関わる懸念だった。大戸屋は、店内で手間をかけて調理することを大切にしてきた。注文を受けてから仕上げる料理や、家庭の食卓を思わせる定食に魅力を感じていた人も多いだろう。そうした調理の手間は、コストでもある。しかし、利用客が大戸屋を選ぶ理由にもなっている。効率化を優先するあまり、その価値まで削ってしまえば、長期的には客離れを招くのではないか。それが当時の私の見立てだった。


好調の背景にある、合理化と現場の立て直し

では、大戸屋では何が行われたのか。


同社が「第3の創業」に際して発表した内容では、蔵人賢樹前社長による再建の柱として、二つの取り組みが説明されている。


「第3の創業」を掲げる大戸屋。再建した経営基盤を土台に、海外展開など次の成長を目指す(大戸屋ホールディングスのプレスリリースより)
「第3の創業」を掲げる大戸屋。再建した経営基盤を土台に、海外展開など次の成長を目指す(大戸屋ホールディングスのプレスリリースより)

一つは、大戸屋の手作り・店内調理と、コロワイドの合理化ノウハウを両立させること。もう一つは、現場の従業員と向き合い、対話を重ねる「人を大切にする経営」だ。


この説明で注目したいのは、再建を単なるコスト削減として捉えていない点である。外食企業がグループの調達や加工、物流などの基盤を活用できれば、店舗だけでは解決しにくい課題にも対応しやすくなる。ただし、厨房の仕事を減らすだけで、お客さんの満足度が上がるわけではない。どこを共通化し、どこに店内での手間を残すのか。利用客が価値を感じる部分を見極める必要がある。


加えて、その運営を担うのは現場の従業員だ。経営側が新しい仕組みを決めても、現場が理解し、日々の営業で実行できなければ成果にはつながらない。会社側が掲げる「人を大切にする経営」が、個々の店舗でどこまで実践され、業績にどう寄与したかは、さらに検証する余地がある。それでも、合理化と現場との対話を、再建の両輪として説明している点は押さえておきたい。


当時の私は、効率化によって失われるものを強く意識していた。しかし、効率化によって店舗の運営を支え、商品価値を維持する余地が生まれることもある。今の大戸屋を見ると、その可能性を十分に評価できていなかったと感じる。


「第3の創業」で、定食を世界の「Teishoku」へ

同社が「第3の創業」で成長の柱に据えるのが、海外展開だ。2026年6月に社長に就任した三森智仁氏は、日本の定食文化を「Teishoku」として世界へ発信していく方針を示している。


買収後に立て直した経営基盤を生かし、海外でどこまで成長できるのか。その可能性を考えるとき、私には思い出す光景がある。2019年、タイを旅行した際に、バンコクで目にした大戸屋のにぎわいだ。



2019年にバンコクで撮影した大戸屋。多くの客でにぎわい、海外でも定食が支持されていることを実感した(筆者撮影)
2019年にバンコクで撮影した大戸屋。多くの客でにぎわい、海外でも定食が支持されていることを実感した(筆者撮影)

海外での日本食人気といえば、私自身、一風堂などのラーメン店が印象に残っていた。シンガポールでも、その人気を感じていた。しかし、バンコクでは大戸屋のような定食店にも、多くのお客さんが入っていた。日本で日常の食事として親しまれている定食が、海外でも選ばれている。その光景は記憶に残っている。


タイには、現地で育った「Fuji Restaurant」などの日本食レストランがあり、大戸屋も2005年に進出している。コロワイドによる買収よりも前から、大戸屋は海外で店舗を広げ、日本食を食べる機会をつくってきた。


タイで展開する日本食チェーン「Fuji Restaurant」の看板。現地で日本食が広がる一翼を担ってきた(2019年、筆者撮影)
タイで展開する日本食チェーン「Fuji Restaurant」。現地で日本食が広がる一翼を担ってきた(2019年、筆者撮影)

現在のタイでは、スシローなどの回転寿司も人気を集めている。その背景には、日本食が一時的なブームにとどまらず、日常の食事の選択肢として根付いてきた蓄積があるだろう。現地の日本食レストランや、早くから進出した日本の外食チェーンが、その市場を育ててきた。大戸屋も、下地をつくった一社と捉えられるのではないか。


主菜に、ご飯、みそ汁、副菜を組み合わせる定食は、日本の食文化をまとめて体験できる商品でもある。寿司やラーメンとは異なる入口から日本食の魅力を伝えられることは、大戸屋の強みだ。ただし、日本食の認知度が高まれば、競争も激しくなる。これからの海外展開では、出店するだけでなく、現地で選ばれ続ける商品と、利益を確保できる運営の両方が必要になる。


そこで問われるのが、以前から持っていたブランドの力と、買収後に整えてきた経営基盤をどう結び付けるかだ。蔵人前社長のもとで進んだ再建を、三森新社長が海外での成長へつなげられるか。「第3の創業」の見どころは、そこにある。


コロワイドによる買収を否定的に見ていた私は、現在の業績を受けて、その評価を改めたい。大戸屋らしさが失われることを懸念する一方で、それを維持するために運営を変える必要性と、外部の経営基盤を活用する可能性を、十分に見ていなかった。2019年、バンコクで目にしたにぎわいは、大戸屋が買収前から持っていた可能性でもある。その強みを、今度はどこまで成長につなげられるのか。再建を経た大戸屋の次の挑戦に注目したい。


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